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夢幻の灯火  作者: 辻 信二朗
第七章 荒れ狂う幻想の大地

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第七十話 爆散

「もうお前の動きは見切った。エイタから聞いた攻略法通りだぜ!」


 颱虎は煌凰と同様に、強力な攻撃の後に大きな隙をさらす習性がある。敵方が放つ大技の間隙かんげきを狙い撃ち、フウカは疾風怒濤しっぷうどとうの攻撃を繰り返した。


 素早さが互角でも、身体が小さいフウカは小回りが利く。真正面から敵の攻撃を受ければ命はないが、当たらなければどうということはない。


 ライハと最速を争うフウカ。最高速度では多少の遅れを取りつつも、点の動きでは他の追随を許さない。その敏捷性は大型ボスとの戦闘で猖獗しょうけつを極め、攻撃の空振りを正確に差し返す。予測ではなく完全に後の先を取るその立ち回りは、類稀たぐいまれなる動体視力と身体能力を併せ持つフウカにしか為し得ない境地である。


「グルルルル!!」


 颱虎は咆哮と共に腕を大きく振り上げた。この動作は、先ほど地震を起こした拳撃の前兆だ。恐ろしい技だが、既に何度も見せられているため脅威ではない。


 フウカは焦ることなく颱虎の懐に入り込み、カウンターの一撃を叩き込んだ。颱虎の持つ鋼の肉体を破るために、フウカはこの大技を待っていたのだ。


「うらぁ!」


 烈風を纏ったフウカの拳が唸りを上げ、遂には颱虎の腹を貫いた。

 颱虎は初めて感じる激痛に呼吸ができず、身体を震わせて固まっている。


 しかしフウカの攻勢はまだ終わらない。巨体から溢れ出る返り血を全身に浴びながらも、やっとの思いで掴んだ勝機をフウカは逃さない。

 息をく間を与えず、フウカは颱虎の腹の風穴に弩級どきゅうの竜巻を発生させた。全ての魔力を解き放ち、どんどん威力を増幅させていく。特級魔術《風縛殺ふうばくさつ》――暴れ狂う風の刃が颱虎の身体に渦を巻き、息絶えるまで離さない。


 機動力に主軸を置く戦型のため、普段は封印している特級魔術。術による体力の消耗も硬直時間も、とどめの一撃であればデメリットにはならない。


「グオオオオ!!」


 どれだけ苦しみあえごうとも、風の刃は慈悲もなく体内を駆け巡る。そうして内側から切り刻まれ続けた颱虎の肉体は、断末魔の悲鳴と共に爆散した。


「はぁ……はぁ……」


 フウカは膝を突いて胸を押さえた。呼吸がなかなか整わない。最高速度で移動し続けていたため、膝ががくがくと痙攣けいれんして立ち上がれない。一つでも判断を誤れば殺されていた。その戦いの緊張は、精神を大きくり減らしていた。 


「ぜぇ……ぜぇ……皆は無事か……? 助太刀に行かないと……」

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