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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

裁判で有罪判決が決まったのに傍聴席の一人の言葉で事態は別の方向に行く

作者: 黒澤 白

あらすじの注意書きにも書いた通り。

この物語はフィクションであり実際の裁判とは異なります。

「判決を言い渡す、被告人は有罪」


 裁判長の有罪判決が下された。

 今回の裁判はある一つの家族の殺人だった。

 その家庭は夫婦と息子の三人家族だったがこの家族には本当ならもう二人女の子の子供がいたのだ。

 しかし、母親がその二人の子を赤ん坊の時に殺してしまったのだ。

 到底許される事ではない。

 母親も罪を認めていて証拠品も十分だったため、誰が見ても有罪判決は当然だった。

 判決が決まり後は裁判長が閉廷をすればこの裁判は終わりを迎える。

 誰もがそう思っていたがここで傍聴席で聞いていた一人が言うのだった。


「これって奥さんだけが悪いのか?」


 その言葉に周りがその男を見るのだった。


「いや、そりゃ赤ちゃんを二人も殺してしまった奥さんが悪いのは確かだけどさ、そもそもこれって旦那にも非があるんじゃないのか? だって元はと言えば旦那が女を好きじゃないってのが原因だったんだろ?」


 男の言う通り今回の事件で母親が何故赤ん坊だった娘を殺す事になったのか。

 それは父親が娘を、いや女そのものを愛せないからだった。

 母親が言うには父親は女が嫌いであり、子供も男じゃなければ愛せない人間だった。

 男が生まれれば喜ぶが女が生まれれば罵倒して愛さない人間だったのだ。

 現に父親は息子が泣けばあやすのに娘が泣けば怒り出す、それほど女が嫌いだったのだ。

 その度に母親は自分が責められる事に耐え切れずにまだ赤ん坊であった娘をその手で殺してしまった。

 それを二度もしてしまったのだ。

 それが母親が娘を殺した動機であった。


「そもそも旦那が娘を愛する事ができる人間だったらこんな酷い事件が起きる事もなかったのに、ていうか旦那は何で女が嫌いなのに奥さんと結婚したの? 男しか愛せないなら男と結婚すれば良いじゃん、何で?」


 男は旦那の方に問う。


「確かにそうよね」


「ああ、男しか愛せないなら何で男と結婚しなかったんだ?」


「この国は別に同性同士の結婚だってできるのに、何でわざわざ嫌いな女性と結婚したの?」


「息子が欲しいなら男と結婚して養子でももらえば解決できたのに、どうして?」


 男に同意するように傍聴席にいた他の人達も次々に旦那に問う。


「おい、旦那さっきから黙ってないで答えろよ、何で女が嫌いなのに彼女と結婚したんだよ?」


「親同士が決めたわけでもないし、奥さんの家がお金持ちってわけでもないのに、どうしてよ?」


「悪いけど私、奥さんの判決よりもアンタが何で女が嫌いなのに奥さんと結婚したのか気になって帰るに帰れないんだけど」


「俺もだ、そっちの方が気になって仕方ないんだけど」


「私も同じ母親として彼女の事は許せないけど、半分は同情してるのよ、あなたみたいな人と結婚してしまったんだから」


「私も同じ夫として君に聞きたいんだが、どうして息子を愛せて娘を愛せないんだ? 男でも女でも同じ君の血が流れている子供じゃないか? 私ならどちらでもかわいくて仕方ないぞ? 同じ男として君の価値観は理解できないし、したくもない」


「俺も同じ男としてお前みたいな奴は好きになれねえし、むしろ嫌いだわ」


「同じ男として恥ずかしいわい」


 傍聴席の人達が次々と旦那に問うが旦那は何も答えずに黙っている。


「おい、まさか自分の血が流れた子供じゃないと嫌だとか言うんじゃないだろうな? だから嫌いな女と仕方なく結婚したって言うんじゃないだろうな?」


 その言葉を聞いた瞬間、傍聴席に座っていた女性達が怒り交じりに旦那に言う。


「はあ!? もしそうだとしたら、マジふざけんなよ!!」


「男か女かなんて決められるわけないじゃない!! どっちでも愛しなさいよ!!」


「最低!! クズ野郎!! 女の敵!!」


「アンタ、女が嫌いって言ってたわね? 安心しなさい、アンタみたいなクソ野郎こっちから願い下げよ!!」


「あなたみたいな人が子育てをしたら息子さんも最低な人間に育つわ!!」


「静粛に!! 静粛に!!」


 裁判長が木槌を鳴らして法廷内の人達を黙らせる。


「本法廷はもう判決を下しています、本件に関係のない話はしないようにお願いします」


 裁判長が言うと傍聴席の人達も冷静になったのか静かに自分の席に座る。


「ですが」


 裁判長は旦那の方を鋭い目で睨む。


「私も気になります」


 裁判長の言葉に旦那が目を見開いて裁判長を見る。


「私にも娘がいます、そしてもうすぐ結婚します、相手は他人を思いやれる優しい心の持ち主だから良かったのですが、あなたのような人間だったと思うと私も自らの立場を忘れて何をするかわかりませんね」


 さらに目を鋭くして旦那を睨む裁判長。

 旦那も裁判長の睨む顔にさらに圧力を感じて冷や汗をかく。


「ですから答えなさい、何故女性が嫌いなのに彼女と結婚したのですか?」


 裁判長の圧力、さらに傍聴席の人達からの視線に旦那は耐え切れずにその場で泡を吹いて倒れてしまい、結局何故なのかわからずに閉廷するのだった。

 

 後日、この事はニュースにもなった。


 結局旦那が何故女が嫌いなのに彼女と結婚したかはわからずじまいだがニュースとしても放送されてしまったためたくさんの人達が色々な憶測を立てるのだった。


 その中で旦那の知人が語る。

 話によると旦那の母親は気弱な人であり父親は威張ってばかりでおまけに短気な性格だったらしく、いつも母親に怒鳴り散らしたり、手を出した事も多くあり、気弱な母親は謝ってばかりでそれを見ていつもムカついていると語っていたと答える。

 

 この事から旦那は気弱な母親をずっと見て来たから女が嫌いだと思ったんじゃないかと答える人も多くいた。

 さらに言うと旦那は別に同性愛者ではなく女の方が極端に嫌いなだけである。

 しかし、裁判での出来事が放送されて映像まで出てるので本当でも嘘でも関係なく旦那が同性愛者だと噂する者も多く出てしまった。


 現在旦那はこの出来事がニュースになった事により近所から白い目で見られるようになりその視線に耐え切れなくなり家に引きこもる事になってしまった。

 旦那は父親と同じで自分より弱い相手にしか威張れない人間だったという事だ。


 意外な事に有罪判決を受けた母親に対しては罵倒よりも同情の意見が多かった。

 特に子供を持つ母親からの同情が多かった。


 ちなみにこの二人の息子についてだが旦那が引きこもって育児放棄をしてしまい代わりに旦那の母親が引き取って育てる事になった。

 すでに旦那の父親とは離婚して数年前に旦那の父親は亡くなっていてもう関係はないが今回のニュースを見て自分が原因かもしれないと責任を感じて引き取る事にしたのだった。


 今回の件で公平な立場にある裁判長が何故こんな事をしたのかにも注目したが、その時は娘の結婚も決まった時にこのような事件の裁判をする事になり、その動機を知って本来なら特に気にしないでそのまま判決をするのだが傍聴席の人達の言葉を聞いてどうしても他人事とは思えなくなったから聞いてしまったと裁判長は語った。


 当時の弁護士と検事も何故止めようとしなかったのかについては、当時どちらも女性が担当していてどちらも娘がいるので今回の事で何も罪に問えないが痛い思いをすれば良いと思ってしまい傍聴席の人達の話を黙って聞いていたと二人は語っていた。


 今回の裁判は罪を犯した母親よりも罪を犯してない旦那の方が叩かれるという何とも珍しい裁判だなと多くの人が語るのだった。



 



 


 

 

読んでいただきありがとうございます。


随分昔にこの事件の再現ドラマを放送したバラエティ番組だったかを思い出して考えたら旦那も悪いんじゃないのかと思い書きました。

完全にノリと勢いです。



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― 新着の感想 ―
娘を養子に出すでもなく、血縁者に引き取ってもらうでもなく、孤児院や修道院に送るでもなく、2人も殺したら情状酌量の余地はそもそもない。まだ旦那殺した方が、娘2人を守るために〜とか言って減刑狙えたのに。 …
[気になる点] 罪を認めてたなら裁判の必要なくね
[良い点] 有罪判決出す前に情状酌量の余地とかで、弁護側が突かないとダメだった案件……なのかも? 面白かった。
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