肉のモブスクリーンを搔き分け
なんつう終末世界!いきなり降ってわいた明らかに胡散臭い謎の金を
改めもせずいきなり全リリースかよ!!あの村越棚丸とかいうやつそうとう
ぶっ飛んでんな」
「まあ、あれはおそらくただのNPCだろう。運営が危機的状況に陥ったことで
各モブキャラの管理がおろそかになり、設定を超えた動きや思考をするキャラも
出てきてしまっているようだ。」
「いや…運営の危機がなぜNPCの暴走につながるわけ?
どういう管理システムなの。。この世界って」
どんだけ世界がやばくなっても廃墟同然の銀行で
「ようこそいらっしゃいました、今日はどのようなご用件で?」
とかいうセリフを延々と繰り返してろよ
「そういう前時代的なNPCを生み出してはならないというのが
運営のポリシーだったのだろうな」
「ああ…そう。変なところに財力と技術力をまわして
肝心なところがうまくいかず失敗する感じね。
他に資源回せばいいのにNPCとかに無駄に質の高いAIとかを取り入れた感じか。
んで、こういう状況になると普通に暴走するわけですな」
「まあ、暴走とまではいかないのではないか?
持ち逃げせずに市民にばらまこうってんだから幾分
ましな思考はしていると思うのだが」
「俺の金なんですけどね…」
「まあそういうな、これが貴様の銀行通帳とカードだ
これを見せれば権利を主張できる」
そういうとマサールイマイは俺に通帳とカードを手渡してきた。
手渡してきた彼の目は渡してやりなさいと言わんばかりの目だったけれど…
(999億って…明らかに最大所持数だよな…もしかしたら
それ以上の単位はこの世界にはない、当然NPCは知らない…)
って考えるべきか?)
んで、100万倍になっているという俺の課金額…
999億なら俺が課金したのは999万ってことになるが、
その程度のわけないだろうから…
「もしかしたら、あれ全部取られてもまだ残ってたりするんじゃ」
「ほう…なぜそう思う?」
「999億という数字が不自然だ。設定された最大所持数以上の金額は
認識できないとか、数えることができないとかではじかれているんじゃないのか」
「なるほど、それならまだ残りがあると」
「ああ、そういうことだ。おそらく999億をばらまかれたとしても
引かれた上でまだそれ以上の額が残っている気がするんだよ」
「だって課金した額の100万倍だろ?
1億課金したら100兆になるんだぞ」
「ひゃくちょう?ひゃくちょうとは?」
(兆の時点で知らない。やっぱり億が最高単位ってことだよな)
まあいい、とにかくあの店長を止めることから始めなければ。
「おい村越」
俺は村越のもとへ突っ込んでいった。
「うわっお客さん、焦らないでください!
村越はびっくりし、すこしよろめきかけたが、
体幹は死んでいなかった。多少エビぞり気味になっていたがすぐにもちなおし、
背骨を伸ばしニョキニョキと体勢を戻した。
「これがなんだかわかるか!」
スローモーションにてエビぞりと直立不動を繰り返している村越に向け
叩きつけんばかりの勢いでカードと通帳を見せた。
「ああっ、こっ、これは!!」
「当銀行の、カードと通帳でございますね!!
持ち主が持つことでブルーに光る認証も作動しています故、
あなた様のものだと思いますが…まさか
この輝きは、、」
「?」
「どうした村越」
「ええ、それがですねぇ、」
「あなた様の持つカードと通帳の輝き、これはまさに
当銀行唯一の特別製カードでございます」
ほう、やはりそういう基本は抑えてあるか。
特別な人間には特別製が相応しい
ククッ…おそらくはプラチナカード的な、
プレミアムカード的な…
「”あなた様のお金は皆さんのお金”という紳士の中の紳士だけが持つにふさわしい、
偽善者お金バラマキカードでございます!!!!」
「そうだろう…そうだろ…」
「え?今なんて言った…?」
「人々の救済をしている俺、かっけーという偽善の心をくすぐり、
自慰行為のような気持ちよさを与え…あ、
これ内部職員側の情報でした」
「ええと、常にかよわい民のためにあなた様のお金を
寄付していただけるという、博愛の精神に満ちた方だけが
「もうわかったから!」
おい、なんだそのカード。
そんなわけわからんもん作る暇があるなら…
いや、この世界の運営にいっても無駄か…
「勇者様だ!!」
「勇者様が降臨なさった!!」
「魔王を倒すでなく、現金を与えてくれるという
ぶっちゃけそっちのほうが嬉しいとわかっている真の勇者様が…!!」
「いくらくれるの?ねーねーいくらくれるの?ねーってば」
「さっきからちょいちょい鼻につく奴いるよな…」
「勇者様…ありがとうございます!!」
「ちょっとまった、俺はこの世界に今日来たばかりなのだぞ…」
まだ右も左もわからない状態でだな、いきなり俺があらかじめ用意していた金を
全額寄付するとか言われてもな
「えー、勇者様、マジ優柔不断じゃね」
「そんな態度じゃ誰もついてこなくねー」
「おいおい、見損なわせんなよ?」
モブキャラたちはここぞとばかりにいい顔になった。
「なんだこいつら…」
「普段、決められた行動の範疇を出ることを許されていない
モブキャラたちはこういう時に好き放題言えるのが楽しくて
頑張って生きてるらしい」
「もっと志を高く持てよ…」
「ていうかこいつらどっかで見たことあるな…」
「あ、あれだ。いつもは従順なくせに
不具合が発見されたときなどにやたら
運営に対して強気になる奴らみてえだな…」
俺は皿にみたてた左手を右手でポンっと叩きながら
モブどもをあおってみたが、モブたちは皮肉を
理解できないようだった。
「ねぇ意味わからないこと言っていないで
いくらくれるの?ねーいくら?」
こいつだ!さっきからガキのようにくれるのくれるのを
連呼している鼻につく奴!!
俺はそいつがどんなむかつく顔をしているのか確認するために
分厚いモブ肉の壁をかきわけた。
肉と肉を反射しながらせまってくる音波をキャッチし、
そいつの正確な位置をあぶりだす。
だって、顔は確認しておくべきだろう?ヒヒ…
肉に隠れて好き放題言いやがって、
ククッ…そのきたねぇ顔面を拝んでやるとするか。
「おらっ!さっきからくれるのくれるの言っている奴出てこい!」
「もらうばかりじゃ人生やっていけねぇんだよ!」
言ってて生前の俺に対するブーメランじゃねと思ったが
それは胸にしまっておいた。
「え?わたしのことー?」
「そう、その声だ!声しか認識されてない
モブの申し子みたいなやつ!」
モブの申し子はしゃあないなぁといわんばかりに
モブモブと足音を立てながらのディフェンダー課と見まごうばかりの
肉のモブスクリーンの隙間から顔をだした。
「ぬふっ」
「な…!!」
「ん」
「だと…!!」
俺ともあろう人間が、一瞬目を疑い、停止してしまった。