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999億



「ああ、ああ、ああああ」


「まじすいません、両親さま

私はとんでもないことをしでかしたようです」



ひひっ


破滅を煮込んで一気飲みしたような笑いがこみあげてくる。

が、しかし…

なにかがおかしい。


なんだこの、すべを抑えて湧き上がってくる衝動…


そう…

何物にも代えがたい高揚感…



「おい、お前、おか〇納豆みたいな顔で絶叫しているわりに目が笑っていないか?」


「ぐふふ」


ついつい卑しい笑いがこみあげてきた。



「いやいや、俺ほど聡明な男が何も考え無しに大金をはたき、

あまつさえ死亡するとわかっている案件に首を突っ込むとは思えない」


「聡明…」


マサールイマイはおそらくなんだこいつ

という顔をしているだろうが見ないようにする。


「おそらく相当大きなリターンがあったはず・・

そうだな、クク、実質世界を掌握できるなどだろうか…」


「いやしかし作り物の世界を牛耳ったところで所詮妄想の中で

あへっあへっ言っている輩と何も変わらないのでは…」



「やはりすべてを思い出したわけではないのだな」

いいだろう、その疑問を晴らしてやろう」


「簡単に言うとお前は自分の命を担保にレート100万倍の

RMTを行おうとしているんだよ」


「RMT…リアルマネートレードだよな…」


「はっ…おいお前…まさか」


「もう気づいたか?そうだよ」


この世界で稼いだ金は

お前が元居た世界に持ち帰ることができるんだ」


「そうか…そういうことか」


「何千万か何億かは知らんが、それを何百万倍にして

日本に戻ろうってわけか…

ははっ…確かに俺なら飛びつきそうな案件だ…」


「だが、先ほどすごく気になる発言があったのだが…」

金以外のすべてを捨ててと言っていたな」


(なんだこいつ、先ほど死亡し、こちらで目が覚めてから約30分足らずだぞ…

まだ体が死んでる感覚をぬぐうのに精一杯のはずだ…

なのに、すでに目に生気はやどり、

もはやいっぱしの勝負師みたいな雰囲気すらまとってやがる…何者だ!!)


「お前が今考えていることも大体わかったぜ」


「…!?」


「俺は繁村植…繁村財閥の一人息子だ!!」


「な、なんだってー」


あいてがびっくりした顔をというのは

いつ見てもきもちがいいなぁ


という気分になった。





===========




運営、つまりこの世界を稼働させている組織。

俺はそこを牛耳った挙句この世界の歯車を良好な状態に戻せば

日本に戻ることができるということか。


もちろん、クリア報酬付きでというわけだ。


「さて、じゃあマサールイマイさんよ、さっそくこの世界の運営のところへ案内してもらおうかな」


「ふむ…」


マサールイマイはいささか乗り気でないような表情でこちらを見た。


「どうかしたのか?」


「いやな、実のところ…運営にはすぐには案内できんのだよ」


「え?なぜだ?」



「それがなあ、運営は今正社員を募集していないからな」


「は?」


「だから、この世界を運営している会社”いせさきゲームス”は

正社員の登用を一時停止しているんだ。経営がうまくいっていないのに

社員を雇うわけないだろう」


「はああ?え?ちょっとまって。なにそれ、普通に入社して一から

登り詰めていく感じなの?何年かかると思っているの?」


ばかなの…?


「それどころか、さっきも少し触れたが、運営が傾いている影響か

町の人々は荒んでいるわけだ、もちろんいきなり襲い掛かってくる奴もいるし

PVPを挑んでくる奴だってわんさかいる」


「まじか」


「自衛手段を教えておく。襲われると思ったらとりあえず、

肉や魚を思いっきり投げろ、奴ら馬鹿だからそれに一目散にダッシュしていくから」


「なめすぎでは?」


「なめているのはお前だ!極限状態に追い込まれた際食い物がどれだけ

まばゆい光を放つのか知らんのか!ああ、そういえば貴様おぼっちゃんだったけか」


「ムカッ」


「あとな、一人でうろついているといいカモだから。とりあえず

手を出したらまずそうなやばそうな雰囲気を醸し出している人材を

仲間に入れておくといいかもしれない」


「そうか」


「とりあえず思慮の足りない設定が謎なNPCたちを生み出して

しまったというところだろうな」


「やべぇ奴らを振り払いつつ、全部直していく感じか。

矯正、矯正、矯正という感じか」


「ゲームバランスやら難易度やら比率設定やら

そういうのはよくわからんが、とりあえずこの世界にいる奴らが

楽しく過ごせるようになればいいんだろう?」


「まあ、そういう感じだ。」


なんてちょっと好青年風のセリフを言ってみたわけだが…

ぐふふ…そんな甘っちょろいやり方じゃあダメなんだよなぁ。

全部ぶっ壊すくらいじゃないとね。キヒィ


「おい、目がイッてるぞ」


「おっとこれは失礼」


「とりあえずまずは俺が日本から預けたお金を取りに行きたいのだが」


「そうだな、それを渡すまでが私の役目だ。行こうじゃないか」


と、俺はマサールイマイに案内され歩き始めたのだが

改めて街並みを見回してみると、とてもじゃないが

住めそうにない荒れ果てたものだった。


少しの風でさえ風化しそうなレンガ…

水分の感じられない地面や植物、

体は動きそうにないほど衰弱しているのに意識だけはものすごい圧で

こちらにせまってくる勢いのおっさん。

落ちている食べ物を口にしてそのままひっくり返ったような格好の小動物。

それを食べようか迷っているおっさん。

建物の中から感じる弱弱しい視線。


こんな世界を思うように出来たってきっとつまらないだろうな。

倒すのも説得するのも近づくのさえも難しいようなそんなやべぇモンスターや人間が

ゴロゴロしている世界を牛耳って初めて楽しくなるってものだ。


100体ドラゴン斬りを達成して、もうこの世に思い残すことはない

なんて思っていたら次の瞬間1000体魔王斬りした奴が大量発生するのが世界ってものだよな。


ククッ


いいだろう、やってやろうじゃないか。


インフレ地獄を作って天文学的数字のステータスが見れる

半端ないゲームの世界にしてやろう。


「あそこが銀行だ、ん?なにか人が集まっているな」


「みなさん、今日はなんと素晴らしい日でしょう!

神はいたのです!この泥沼銀行に、なぜか突如今日、

ものすごい額のお金が発生いたしました!!」


「なに!それは本当ですか!どういうこと!?

この町の復興資金にでもなるということ!?」

くれるの?くれるの?」


「わたし、泥沼銀行いせはら支店、店長村越棚丸が

皆さんにこの資金を解放することをお約束します!!」


「いくら!?いくらあるの!?」


「聞いて驚くでないですよ」


「999億ムワーオです!!」


「な、なんだってー!」


「おい…あれってまさか…」


「そのようだな、お前の金がこれから勝手に使われるところのようだ」

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