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冒頭


「この世界で最低限、人間らしい尊厳ある生活を送るために必要なことは何だと思う?」


黒塗りの高級入れ歯を装着した男は得意げな顔をしながら訪ねる。


「えと…なんでしょうかね。睡眠食事運動…ですかね」


俺の答えを受け、「はあん、普通やねー」と言わんばかりに首を斜めにかしげた

その男はテンションをワンランクアップし、腹から声を出した。


「それはね。上様への献上金だよ!!」

「え?上様への、献上金…?それはどういう意味ですか?」

「どうもこうも、キミ、最低限人間らしく生きたかったら、それ相応の

対価をお支払いしなくてはならないのさ、当たり前だろう」


黒い入れ歯と濃い黄色の肌とのコントラストが芸術の域に達さんばかりのその男は

初対面でもわかるくらい極上の笑顔になった。


「上様は運営様、つまりこの世界を統べるお方達なのだよ。ニコッ」


なんだろう、ずっともやがかかっている頭の中で、聞きなれたというかなじみのある

フレーズに頭がクリアになっていくような気がした。


「こういうノリ…運営とかいうワード…

右も左もわからない人間の前に不自然に存在しいろんなことを

一方的に教えてくれるキャラ…」


なにか触れ慣れたというか見慣れたというか、

本来、自分にとって身近なはずの感覚…


脳内でイメージがどんどん湧き上がっていく。


この世界って、サービス終了間際のソシャゲかなんかかな…

だいたい運営やばくなってくると課金圧がすごくなっていくんだよな。

というか、やってきたばかりの人間にいきなり課金をすすめてくるだなんて、もはや末期だろうか


倒産して闇に葬られるくらいなら、チュートリアルの最後に


「さあ、あとワンステップでビギナー卒業だよ!

さあ、大人の階段をのぼるために、さいごに、、一番大事なことがまっているよ

さあ……あれだ。。あの…


「「「「課金しよう!!!っへああ!!」」」(案内キャラのよだれがはじける)これで本編にすすめるよ」


なんて流れでもおかしくないよな。


ああ、この俗っぽい思考…

何度も脳内で再生し言葉にしたなじみのありすぎるワードの数々


思い出してきたぞ・・


そうだ、俺は日本の・・


そこから芋づる式に記憶の断片たちが結合し、

自身の過去の可視化が加速していく。


そうそう、日本でも有数の財閥の息子で、学生時代は1と0と0という点数しかとったことがなく、

ありとあらゆる女の子たちが寄ってきては勝手にちぎれて投げられて

俺のオーラにあてられた人たちは初めて陽の光を見た土中生物みたいになってて…


そうそう、そんなだった。たしか。

「えと、ということは、あなたはこの世界の案内人ですか?」

俺の思索中、左手で右手をつかみつつプルプル震えていた男は状態を立て直し、

特に特徴のないこれがこの人間の真顔なのだろうという顔に変わった。


「そうだ、私は案内人のマサールイマイ。お前には素質がある…」

「え?なんの素質でしょうか?」


「前世で、死ぬほど購入しただろう…?課金アイテム」

「え?」

「ちょっとまって…前世って、まあわかるんだけど…うすうす察しは付いたんだけど…

死んだってことだよね。。神童とまで呼ばれた俺が…神童が死んどぅ?」


「小学生のようなダジャレはやめておけ。死ぬぞ。」


「なぜです?」


もうこの世界の人間に心の余裕なんてないんだよ。

ちょっとでもつまらないクソサムイギャグなんか言おうものなら本気で殺しに

かかってくるんだ。


「私の右腕もカタカタ震えている。

おぬしに殴りかかろうとしているのを押さえつけているのだぞ」


うわぁ、さっきの謎のポーズ、利き腕が暴発しないように

抑えてたってこと?

どれだけ暴力が身近なんだこの世界。


なんというか、

殺したくてうずうずしているんだけど、いきなり襲い掛かるのも違うだろう?

だから、常にきっかけを探したり作ろうとしているんだ。


「怖いな…暴れたいバカが何もしていない人に対してあえて怒らせるための

火種を作るみたいなもんか」


と、まあお前のつまらないギャグのせいで話が逸れた。

もどそうじゃないか。


「えっと、課金しすぎて死んだんだっけ?俺が」


「…そうだな、死ぬほど課金したんだ」


「金を使いすぎて生きていけなくなったってこと?

親が金持ちのボンボン太郎だったからさ、さすがにそんな事態には

ならなかったはずだぜ。自分で言っててすごく切ないのだけど…」


まああせるな、順をおって話すという感じのジェスチャーをする

マサールイマイ。


「おぬしのいた日本の円…世界でどのくらいの価値を持っていた?」


「世界を牛耳ってた実質地球の運営みたいなアメ〇カさんの貨幣の100分の1くらいですけど」


「そうか…」


あれ?微妙な情報だった?と思わせぶりにサールイマイはうつむいた。


が、しかしすぐに浮上したマサールイマイの顔面に光る2つの目は死んではいなかった。


「ククッ」


そんな投げやりな笑いを見せたかと思うと、

徐々にギアを上げていき、最後に一番輝くナイアガラ花火のようなノリで

マサールイマイの発声と唾がはじけとんだ。


「この世界の貨幣”ムワーオ”はなぁ、なんと、日本円の100万分の1!!

つまり100万ムワーオで1円!!だ


ここまでOK!?


そしてなんと!!


なんとだぞ、ここからが本題なのだが!!


貴様が前世、課金した金はすべて…!!

この世界の貴様の持ち物として、この町の銀行に預けられているんだっ!!!」



「な、なんだってー!」


「ちょっとまった!!それっておかしくないか!!?」

「なんでそんな意味不明なことが起こっている??」

「そもそもなんでこんな謎のソシャゲと日本がつながっているんだよ!!」


マサールイマイは怪訝な顔をしつつも、

どこか許容範囲と言わんばかりの余裕を見せた。


「ふーむ、覚えていないのか。

まあ、そんなこともあるか。死んだばかりだものな。

いいか貴様は自分で選んだのだぞ」


「!?どういうこと?」


「貴様が生前プレイしていたソシャゲの名前は”りある☆異世界転生”」



「あ…」


なんだろう、さっきの芋づる式では到底掘り起こせなかったより深い記憶…

そんな部分にピントが合っていく感覚がし始めた。

頭の中のシナプスがものすごい勢いでつながっていくような…


そんな感覚


「そう、課金額トップのプレイヤーが、課金したお金以外の

すべてを捨てて異世界に転生できるリアル異世界転生ゲーム、


そのゲームに貴様は最大課金し、見事親の金の力でそれを手に入れたのだろうが!!!」



「そうだった!!!!!!」



「ああ、俺はなんていうことを!

親が勝手に子供に使われて切なくなるお金の使い道ランキング1位以外

とったことのないソシャゲ重課金に!!

勝手につぎ込んだばかりか!!

あまつさえ親より先に死亡し、

親不孝なことをすべてパックにして投げ売りにしたような廃(人)課金パックに手を出して!!!

異世界転生できたらいいなぁなんて思っていた5次元童貞だったんだああ!!」

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