グッドバイ・ハロー・その男は、
「祭ぃいいいいいいい!」
一気に酷い出血が起きて、意識が朦朧としてしまった。
ただ迫りくる毒針を、ぼうっと眺めてしまった。
でも俺の名前を知らないはずの男の叫びに、正気に戻る。
「あ、あんたは……」
男は俺の前に立ち、クインデスパイヤの針を火花を散らしながら受け止めていた。
それはなんと、聖剣・『祝福の愛』の折れた剣先だ!?
「祝福を祈り、受けろ! 出血を止めるんだ! クシャナーディア様の血を無駄にするんじゃねぇええええ!」
「しゅく……ふく?」
「早くしろ! 馬鹿がぁ!! 俺の手がもたねーだろうがぁ!」
先程までの寡黙な男の言葉とは思えない口の悪さ。
この言葉遣い……まさか!?
そしてなんと男は折れた剣をそのまま掴んで応戦していたのだ。
しかし『祝福の愛』は男の手を切断する事はなく、ダメージを与えながら治癒しているような状態だった。
それで重たいクインデスパイヤの針を受け止めているのだ。
どれだけの苦痛に襲われているか。
男の口からは血が溢れ、苦悶の表情を浮かべる。
「き、傷よ塞がれ! 塞がってくれ!」
「なんだその適当さは無能か!」
あの時に覚えた詠唱は全部忘れてしまったし、回復術なんか知らねーよ!
しかし俺の聖剣の半分と、男の聖剣の半分が共鳴しだした。
「お!」
傷が一気に治るのを感じる!
その力は男にも作用しているようだった。
俺はすぐさま跳ね起きし、クインデスパイヤと男の拮抗状態に突っ込んだ。
「うぉおおおおおお!」
大木を斬り落とすようにして一気に、毒針部分の尾節を切断した。
即座に溢れる毒の体液から逃れるように、俺は男を担ぎ上げて跳んだ。
傷は治ったが、これは何度も使えないという事を直感する。
ものすごい疲労で身体も動かなくなってきた。
もう聖剣を使う魔力も僅かだ。
「次で決めるぞ! 祭!」
空に舞い上がって一緒に着地した俺に、男は言う。
なんだよ、なんだよ、なんだよ!
ありえねーだろうが!
ありえねーだろうがよ!!
当たり前のように、なんでいるんだよ!!
お前だったのかよ!!
馬鹿野郎ー!!
「わかった! ウィンキサンダ! お前は右から回り込め!」
「俺に命令するんじゃねぇよ!」
俺は下半分に折れた聖剣を、ウィンキサンダは上半分に折れた聖剣を、それぞれ振るう。
一刀両断! 一撃粉砕!
俺は初めて悪魔退治をしている時に、笑ってしまったんだ――。




