FILE36
「そして、ガイラ帝国の北にいちする所に一度入ったら二度と出て来れないという、ドラゴンの巣があるの・・・」
ソフィー先生はまだ戸惑っているようだ。
「ドラゴンの巣って俺が行くところですよね?」
俺は尋ねる。
「ええ…そうよ…。 そのドラゴンの巣には最強にして最悪で、国一つを簡単に滅ぼすと言われるドラゴン……いいえ、実際に国を滅ぼしたの………その国の人達は懸命に反撃したけど、その化け物には傷一つ付かないで一日もしないうちに滅んだの………」
俺はその話を真剣に聞いていた。
そして、笑ってしまった。
「ククク・・・ックククハハハハハハハ!」
俺が大笑いすると、みんなが心配そうに見つめていた。
「いやいや、すまん。ッククク。しかし、話を聞いて、この依頼受けてよかったって思ったよ。ッククク」
俺がそういうと、みんな驚いた顔をしていた。
そして、一斉に怒鳴りだした。
「笑いごとじゃないだろ!? 一歩間違えたら死ぬんだぞ!! わかってるのか!?」
「リュウ!! あなたは大事なお客なのよ!? そんなことさせれるわけがないわ!」
「ちょっと! リュウ君!?」
「リュウ様! 暢気に笑っていられることではありませんよ!?」
「リュウ君……なに考えているんですか?」
上から、アラン、クリス、カーラ、フローラ、アリスの順番だ。
俺はすぐに笑いつつも謝罪する。
「スマン、スマン。だが、俺の力はドコまで通用するのか知っておきたくな。それに、俺がルナに聞いて把握してる限りでは、ドラゴンの攻撃ですら通用はしないほどらしいぞ。ってことで、俺は試すんだよ。それにこの依頼はタブン、俺が異世界の住人って知っている人の仕業だろうしな」
俺はクリスの顔を見つつそう答えると、クリスは何かに気が付いたような顔をした。
「えっ!? お父様がリュウにこの依頼を持ってきたってこと?」
「「「「えっ!?」」」」
4人が一斉に声をあげるのを見て、俺は頷く。
「ああ、だと思うぞ。ドラゴンの巣のドラゴンを倒して、俺を英雄にでも仕立て上げるって所かな? 今の状態だと、家臣達に示しがつかない。だから、ドラゴンでも倒して、実績を示したら、客として堂々と迎えるって感じじゃないかな?」
俺がそういうと、クリスは俺の言葉を聞いて思い当たる節を見つけたようだった。
「確かに、『クリス様が連れて来た、どこの馬の骨かもわからないやつをこの学園に入れることはこの国に不信感を持たせることになります』って言ってた人達が居たわね。 だけど突っぱねたわ」
「だから、俺にドラゴン退治でもして実力を示せってことだろ。まぁ、ドラゴンって言うわけだから、鱗とこ、血とかドラゴンの一部が貴重品だったりするんだろ?」
「リュウ、よくわかったな。 ドラゴンの血、ドラゴンの爪、ドラゴンの羽、ドラゴンの鱗、ドラゴンの涙、ドラゴンの心臓、これらは武器、防具、薬、様々なものになるんだよ。しかもそれが、かなりの力を持っていたりして、扱えれば1ランク上の実力を持ってるやつも倒せるっていうくらいなんだよ。 しかも、ちょっとやそっとで壊れることがないっていう強度も持ち合わせてる。だが、この材料がなかなか手に入らないってのが実態でドラゴンの部位が使われた物、ドラゴンの部位は高価な物なんだよ。一番採取が簡単なドラゴンの血ですら、平民の4人家族(親2人、子2人)が一生遊んで暮らせる額になるって言われてるくらいだからな」
アランが俺に説明してくれた。
ちなみに、この国のお金は銅貨、銅板、銀貨、銀板、金貨だ。
銅貨 1枚は、日本円で100円位だ。
銅貨 10枚 で 銅板 1枚(1000円)
銅板 10枚 で 銀貨 1枚
銀貨 10枚 で 銀板 1枚
銀板 10枚 で 金貨 1枚(100万円)
金貨 100枚 で 白金貨 1枚 (1億)
という仕組みだ。
平民の一日の給料は仕事にもよるが、大体銅板4枚銅貨5枚~銅板5枚前後稼ぐ。
さらに、一日に親2人、子2人の家族なら消費する金額は大体銅板3枚~銅板4枚程度。
さて俺の補足はここまでにして、アランの説明を聞くとしようか。
「ここまでドラゴンの部位が高価なのは、採取の段階で死ぬ人が居ることや、ドラゴンは災害とし扱われるくらいの凶暴さを持っている。ドラゴンが暴れたら、国が簡単に滅ぶほどだ、それ故に誰も手を出さない」
「そうか……」
「リュウ様! わかっていただけましたか!?」
フローラが声を荒げて、俺に問いかける。
しかし、俺の答えは、フローラの納得のいくものではなかった。
「わかった……が、俺は行くぞ! ドラゴンか! 楽しみだ!」
「わかりました………ですが、防具はこちらで用意させていただきます! 今からご用意しますので、少々お待ちになってください!」
フローラがそう言って、部屋から出て行く。
「ハハハ……リュウには負けたわ」
アランが苦笑しつつ答えた。
それに続いて、クリス、カーラ、アリスがしゃべりだした。
「もうリュウに説得するの無駄ってわかった……」
「リュウ君、負けちゃダメだからね!」
「リュウ君には飽きれるたわ……」
みんな苦笑しつつ、俺に話しかける。
「まぁ、どうにかしないと、この学園からも、城からも追い出されるから、結局行くしかないんだから、しょうがない」
俺の苦笑しつつ答えた。