魔王現る
ここは現代日本。退屈な空を眺めながら思う事はただ一つ。
はやくここから消えてしまいたい。
ただそれだけだった。
がやがやと賑わう昼休みの隅っこで、俺は教室の4階の窓際に片足を乗せて立っている。
後ろから飛び降りれるものなら飛び降りてみろとはやし立てる連中に、自分がターゲットにならないようにただじっとことが済むのを待っている傍観者達。
俺が庇ったあいつすら教室の隅で今はただ震えている。
クソみたいな連中にくれてやる命はないがこのまま生きていく意味もない。
こんな救いようのない人生、罰ゲームじゃねえか。
残っていた片方の足を窓際に乗せるとうるさかった教室内が一瞬で静かになった。
「俺が死んだらいじめとかしょうもない事すんなよ。じゃあな。」
これが俺の人生最後の言葉になる。
呆気ないというか。なんというか。
しょうもないな。ほんと。
地面って痛えかな。痛えよな。
まあいいか。
下を見ずに、トンっと軽く窓から飛び出した。
物凄い重力で下に引き寄せられていく。
それについていけない内臓が体の中で暴れ回り、なんとも言えない浮遊感。
目を閉じた。
さらばだ世界。
・・・・。
・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・。
あれ・・・なんか、なかなか地面つかねえな。
4階ってそんな高いもんだったっけ。ていうか体がまだ宙に浮いている感覚がするというか。
パチリと目を開けると何故か落ちたはずの自分の体は空に浮かんでいた。
目の前に広がるのは真っ青な世界。下には俺がさっきまでいた高校が小さく見えている。
なんだこれどうなってんだ・・・。
俺の体はなんで浮いて・・・。
「危なかったね少年。私が助けに入っていなければ地面についた瞬間木っ端微塵だったぞ。
声のする方を振り向くと、妖艶な雰囲気の髪の長い女性がこちらに向かって微笑んでいた。
胸元の開いた独特の着物のような物を着ていて髪はなんとも言えない不思議な色をしていて異様に長い。
そして頭にはたくましいツノのようなものが立派に生えていた。
なんだこいつ・・・。
ていうかこれどういう状況だ。
「おや、随分間抜けな顔をしているね。
まずは自己紹介でもしておこうか。
私はここではない異世界からやってきた。2049 代目魔王、サリーだ。」
「誰だよお前・・・厨二病か?さっき俺は死んだはずだけど。
俺の頭がいかれたのか?」
「お前はまだ死んでいないよ。地面に着く前に私の魔法で助けたからね。」
「さっきから何言ってんだよ。魔法とか異世界とか意味が分からねえ。
死んでねえならもっかい死ぬまでだ。早くおろせ。」
「だめだ、お前は死ねないよ。
奴らに狙われているからね。」
何を言っているのかさっきから全く理解ができないうえに、何がしたいのかもわからない。
こいつは何者だ。俺が狙われている?
だれに・・一体なんの目的で?
「私は何者なのかという顔をしているね。悪いが魔王だという事以外にお前に説明をしてやれる肩書をもってないのだよ。
とにかく追手がそこまで来ている。詳しい説明は後だ。」
女がパチンと指を鳴らすと、黒煙と共にブラックホールのような黒い渦が目の前に現れた。
「とにかくついてこい。」
「だから・・一体何言って・・・。
って・・・うわああああああああああああ!!!!!!」
何も反論する暇もなく女と共にブラックホールに吸い込まれていった。