選んだものは…
扉の残骸を踏み付けながら、宝物庫へと足を踏み入れる。
中は宝物庫、と呼ぶには仰仰しいほどにシンプルで、灰色のレンガが積まれた壁に4つの武具がかけられているだけでそれ以外にはなにもなかった。
「おい、これが宝具なのか?ただの武器と変わらないようだが。」
右から順に斧、弓、棍棒、そしてガントレッドだった。それにしても4分の3が打撃系とは。
「はい、こちらが宝具になります。カイト様が力を奪われたのは弓のようですね。急速に朽ちてしまっています。」
オリヴィエが弓に触れるとポロポロと崩れ落ちてしまった。いよいよ打撃系しか選択肢がなくなってしまった。
「弓の力を奪ったんだろ。ということはこの腕は今弓の力があるのか?」
「いえ、正確に言えば弓の宝具の力が宿っているだけなのでその力を撃ち出すための宝具が必要になります。しかしカイト様は宝具を使うことができなくなった。どうしたものか…。」
オリヴィエはかなり動揺している。しかしなぜこんなことになってしまったのか。
ものすごくわかりづらいが、どうやら俺の腕は大きな矛盾を抱えて生まれてしまったようだ。
さて、どうしたものか。力を使うために宝具が必要、しかし片手でしか魔法の使えない俺は宝具を使うことができない。
右腕は相変わらず発光している。形状だけなら目の前のガントレッドに近いかもしれない。
…まてよ、宝具を使えずとも宝具の力を打ち出せる何かがあればいいということか。ならば…。
「おいオリヴィエ、この世界に銃の文化はあるか?」
「じゅう?ですか。申し訳ありませんがそのようなものは存じ上げません。」
やはり、剣と魔法が主流なファンタジー世界では銃という概念自体がないのか。片手で扱える拳銃ならばこの腕から伝わる力を直接放つことができる。無理して使えない宝具を使う必要はない。
それに慣れ親しんだ銃火器ならば扱いに困ることもないだろう。
「頼みがある。武器に詳しい兵士を数人と、出来るだけ多くの鉄と工具を用意してくれ。武器の製作に至急取り掛かる。」
「承知致しました。」
オリヴィエはすぐに部下を呼びつけた。するとすぐに数人の兵士とともに市民らしき人々が鉄を持ってかけつけた。
初めて間近で兵士以外の一般的な市民を見たかもしれない。
「カイト様、この者たちはかつては武器屋を営んでおりました。微力ながらお力になれるかと。」
市民たちがこちらに向かって会釈をする。
「よし、早速取り掛かるぞ。」
それから俺達は武器の制作に取り掛かった。銃の構造は嫌というほど見てきた。俺が指示した通りに兵士や市民が魔法で鉄を切り出していく。前の世界よりも魔法が使えるという点では制作が格段楽になった。ものの20分もかからないうちに全ての型を切り出すことに成功した。あとは、どのようにして魔法を打ち出す仕組みを作るのか、だが…。なにか使えるものは。
辺りを見渡すと、朽ちて灰のようになった弓の残骸が目に泊まる。
「おい、あの灰を核の部分に使えるか?俺の腕が弓の力を纏っているのならばあの灰となら相性がいいかも知れない。」
作業は困難を極めたが、兵士達とオリヴィエの協力により何とか核の型に再形成することが出来た。あとは組み合わせるだけだ。
そうして夜が耽ける頃には、 二丁の拳銃が出来上がった。
ほとんどの人々はいなくなり、俺が壊してしまった宝物庫を守る兵士と銃の細かい調整を行っている俺だけが取り残された。
型を作るのはそれほど苦労しなかったが組み立てと調整に時間がかかってしまった。魔法を打ち出すだけならば一丁で事足りるのだが、思っていたよりも鉄が余ってしまったことを踏まえ、実弾を放てるもう一丁の拳銃を制作することにしたのだ。これから魔法が通用しない相手が現れた時のためにも持っていて損はしないだろう。
それに…もしものための秘策も考えてある。そのためには二丁拳銃が必須だったのだ。
余った鉄で実弾もできる限り生成した。備えあれば憂いなしというやつだ。
疲弊しきっているとオリヴィエが一杯の水を持ってきてくれた。
美味い。この世界に来てからというもの、驚愕の連続で何も口にしていなかった。食事も睡眠も忘れて没頭してしまっていた。
「出発まであと2日しかございません。明日から我々が魔法や戦闘の訓練を致します。あちらに床を用意しております。今日はもう休まれた方が良いかと。」
「丁度作業も終わったところだ。そうさせてもらうよ。」
オリヴィエに案内された床に着くや否や、倒れ込むようにして眠り込んでしまった。




