新たな戦場へ
目を開けるとオーロラのように美しい色をした巨大な筒状の空間に閉じ込められていた。どこまでも続く一本の大筒。
瞬時に悟った、ここが死後の世界か。イメージしていた天国や地獄なんかよりよっぽど幻想的で、触れたら壊れてしまいそうな儚さと何者も寄せ付けない圧倒的な畏怖が共存している。何とも形容しがたい場所だ。
痛みを伴っていた肉体から精神は解放され、ふわふわと筒の中を無重力状態のように自由に駆け回ることができた。死の間際のいうことををまるで聞かない四肢が嘘みたいに思えた。
うっすらと消えかかった半透明の手のひらを見つめながら死の直前のことを思い出していた。なぜアジトは壊滅したのか、他の仲間はどうなったのだろうか。まあいい、今更回答にたどり着いたところで何の意味もありやしない。俺はもうそこにはいないのだから。
不思議と死ぬことに関して恐怖はなかった。ただ、道半ばで置き去りにしてしまった仲間への自責の念だけがひどく心を締め付ける。
どうかもう一度だけアイツらに会うことができるなら。一言、たった一言でいい。
俺についてきてくれてありがとう、そう言いたい。
その時だった。どこからか声が聞こえたのは。
――― ……てくれ
は、何だって、聞こえない。
――― …すけてくれ
誰だ。どこから聞こえてくるんだこの声は。
―――助けてくれ
―――ダメです王様、また同じような事態を引き起こすだけです。
王様…?何の話だ。
―――我々にはもうこれしか無いのだ。最後の希望なのだ。
だから…一体何なんだよ。
―――どうか私たちの世界を救ってくれ。
どこからともなく風が吹き荒れ、ガラス細工のようにパリパリと周囲が崩れていく。
頭上からは無数の光が降り注ぎ、目を開けていられないほどの閃光と強風が体を包み込む。
いったい何が起こっているんだ。俺はどうなるんだ…。
しばらく強風に揉まれながら何とか持ちこたえていると急激に体が地面に叩きつけられた。
思わぬ衝撃に体が拒否反応を起こし軽い吐き気を催した。
「いっ…てぇ…。」
コンクリートの無慈悲な冷たさが体に染み渡る。
「一体どこだ、ここは。死んだんじゃなかったのか俺は。」
確かに痛みを感じる、冷たさを感じる、まるで生身の肉体そのものだ。
街並みは現代に近いようだが建物はどれも半壊しており、生ゴミが更に腐敗したような匂いが街中に充満している。人々の精気などまるで感じられない。
理解が追い付かずその場に座り込んでいると、錆びた鎧を身に纏った兵士のような一団がキィキィと金属を軋ませながら近付いてきた。一体どこからやって来たのだろうか。先頭にいた長髪の男は俺の前に立つと俺の顔をまじまじと見つめながら声をかける。
「間違いない。どうやら成功したようです。よくぞお越しくださいました、救世主様。」
「は? なんだって? 」
今まで状況を見誤ったことはない。死の間際でも正確な状況判断ができていた。
しかし、この時ばかりは流石の俺でも意味がわからなかった…。




