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帝王と暗黒博士と俺とひよこ

 ついにここまで来たぜ。悪の帝王を叩き潰す。

 そのためにこの豪華で広い玉座の間まで来たんだ。


「わかるぞ。我が精鋭をことごとく打ち倒した男か」


 人型の影が玉座から立ち上がる。

 煙が晴れ、徐々にその姿が明らかになっていく。


「俺だとわかるのかい?」


「名も姿も知らぬ、王族でも騎士でもない風貌の男。この場に似つかわしくないが……それ故にわかる」


「なんという闘気。なんという威圧感。噂には聞いていたがここまでとは」


「余がドグレサ帝国最強にして頂点、帝王ダークライトぞ」


 マントを脱ぎ捨てた姿は、想像を遥かに超えるものだった。

 真っ黒いダイヤのような体のマネキンだ。

 材質が何か知らないが、それが表情を動かして人のように喋っている。


「あなたを倒して、平和な世界を取り戻す!」


「アストラエアの姫か。余の眼前に現れるとは、胆力のあるものよ」


 全員で戦闘態勢を取る。ここで怯まないのはいい根性だ。


「ひよこごときがワタシと対等だと!?」


「対等? お前が格下ピヨ」


 ピヨキチと暗黒博士の戦闘始まってるけどいいや。


「おのれ帝王! ギャンゾックの未来のため、尋常に勝負!」


「あなたに技術を提供した邪神がいるはずです。その者はどこに?」


「ギャンゾックの雑兵と女神か……知りたくば余の屍より聞き出すがよい」


「話す気はないか」


「ならば望み通り屍と変えてやる! 無限烈閃光!!」


 ヴァリスの閃光が確実にダークライトを捉えた。

 直撃し光の中へ消えたが、これで終わりではないだろう。


「サイ变化!!」


 黒く輝くサイとなって突っ込んでくる。


「危ない!」


 近くにいた俺とヴァリスは大きく横に飛んで回避。

 その先にいた暗黒博士に激突して止まった。


「ぎゃぴいいぃぃ!?」


 壁まで吹き飛んでめり込んでいる。

 恐ろしい威力だ。


「フリージングクラッシュ!」


「輪ゴム飛ばし!」


 氷塊と伸ばした輪ゴムが飛んでいく。


「アルマジロ变化!」


 アルマジロの硬い装甲の前に弾かれる。


「ちっ、厚さ20センチの鉄板をも貫通する輪ゴムが!」


「それもう輪ゴムじゃないよ!?」


「無限烈閃光!」


「獅子变化!」


 無数の閃光を、無数の爪から繰り出される斬撃で落としている。


「なんという豪胆な!」


「こいつ何にでもなれるのか!?」


「改造技術の頂点。それが余ぞ」


 まともに戦えばちょっと厳しいかもな。

 かなり厄介な敵だ。状況に合わせて変化するってのは、こっちも変化に合わせて戦いを余儀なくされるということ。


「コウモリ变化!」


 大量のコウモリが羽を刃にして襲ってくる。


「まずい! 合体技いくぞピヨキチ!」


「がってんピヨ!」


 二人の気を合わせ、瞬時に暗黒博士の後ろに移動。

 そのまま思いっきり前に出す。


「必殺! 暗黒博士バリアー!!」


「ぶっぎゃああああぁぁぁ!?」


「敵を盾にしたー!?」


 ズタボロの暗黒博士を捨て、再び人間形態に戻ったダークライトの対策を考える。


「なるほど。あれならガードしつつ敵にダメージを与えられる。やるなマサキ!」


「いやあそっちに解釈します? ヴァリスさんは真面目なままでいいと思いますよ」


「俺もそう思う」


「クックック……よいよい。愉快ぞ」


 合体して元の姿に戻ったダークライトに大ウケである。


「さらに楽しませろ。大蛇变化!!」


 両腕が大蛇となって俺たちを襲う。


「ならばこっちも变化いくぜ! 必殺異世界チート!」


「ほう……それもまた愉快」


 俺を包む光が、大蛇に合わせて姿を変えてくれる。

 やがて巨大なカエルが誕生した。


「これが……蛇に睨まれたカエルってやつだぜ!!」


「じゃあダメでしょ!?」


 そのまま巨大な蛇の大きな口へと飲み込まれていく俺。


「マサキ様あああぁぁ!!」


「これが英雄の力か……期待はずれだ」


「どうかな? 丸のみしたってことは、お前に近づいたってことだぜ」


 俺というカエルの体が膨らみ始め、やがてダークライトの内部から大爆発を起こす。


「必殺! 胃の中のかわずアタック!!」


「ぬっ……くう……やりおる」


「凄い! ダジャレなのにダメージ入ってますよ!」


「あえて死地に飛び込むか……本当に勉強になるな」


「いやあれ参考にするのはダメピヨ」


 畳み掛けるしかない。この混乱を勝機に変えるのだ。


「獅子变化!」


「暗黒博士ガード!」


「ぎゃあぁぁぁ!!」


「からのカマキリ变化!」


 獅子の爪をカマキリの両腕でガード。激しい鍔迫り合いへと突入する。


「コウモリ变化!」


「暗黒博士バリアー!」


「ぴゃあああぁぁ!?」


「ハト变化!!」


 無数のハトとなった俺は、平和の象徴らしく悪を討つ。


「ハトは平和の象徴なんじゃボケこらあああぁぁ!!」


「ぐぐぐぐぐ……貴様なぜ变化できる!」


 ダークライトの疑問に答えは出ない。

 そのもやもやした気持ちを右ストレートに込めた。


「そんなこと……俺が知るかああああぁぁぁ!!」


「ぬぼああぁぁ!!」


「やりたい放題だああぁぁ!!」


「小賢しい……ゴリラ变化!!」


 ゴリラの巨大な拳が迫る。だが当たったのは暗黒博士だ。


「これが忍法変わり身の術さ」


「暗黒博士がもうかわいそうな感じだー!?」


「しかし頑丈だな。どういうスタミナだこいつ」


 これだけやりあって息切れすらしていない。

 腐っても帝王。これは厳しい勝負になるな。


「弱者など帝国には不要。滅せよ!」


「帝王様あああぁぁぁ!!」


 暗黒博士消されたぞ。最後まで不憫なやつだったな。


「ならばもう一度ハト变化!」


「つまらん」


「なに?」


「ハトはもうやったであろう。同じではないか」


 なんかマジ返しされたぞ。どういうつもりだ帝王。


「ならばハトからの不死鳥变化! フェニックス!!」


「で? だからどうした?」


「すごい冷めた返しされたー!?」


 玉座に座り直している。興ざめって感じだな。


「それで面白いと思っているのか?」


「くっ、なんて冷めきったやつ!!」


「茶番は終わりだ間抜けめ。究極变化……これは!?」


「バカめ。茶番を見抜けない間抜けはどっちかな?」


 玉座ごと完全に凍りついている。これが俺の狙いさ。


「貴様がボケに冷めた反応しかしないと悟った瞬間、その冷え切った空気を使って場を凍らせる作戦にシフトしたのさ!」


「だがこの程度、足止めもならんぞ!」


「十分だぜ帝王様。俺には仲間がいる!!」


「なにぃ!!」


 サファイアの全力魔法が完了している。

 空中要塞そのものが完全なる氷の世界へと変貌した。


「オーロラ・ノヴァ!!」


 光が収束し、部屋に集まった膨大な魔力が弾け飛び、要塞を大きくえぐって氷の結晶を舞い散らせる。


「これが俺たちの合体技!」


「氷結地獄变化よ!!」


「ぬあああああああぁぁぁぁ!!」


 帝王だろうが魔王だろうが飲み込む、純粋で輝く光。

 冷気と魔力で構成された、必殺の合体技だ。


「なんという威力だ……これでは帝王とてひとたまりもないぞ!」


「やりましたね!!」


 魔力で消し飛んだ玉座や天井から外が見える。

 もうすぐ夜になろうとしていた。


「天井がっつり消えたな。こりゃ要塞落ちるんじゃないか?」


「地面までを氷で固定したわ」


「ナイスですサファイアさん」


「クックックック…………」


 女の笑い声だ。空に誰かいる。


「何奴! 降りてこい!」


「帝王と言ってもこの程度ね。少し拍子抜けだわ」


 ゆっくりと降りてきたそいつは、短い金髪で赤い目の女だった。

 豪華で派手な黒いドレスを身にまとい、尊大で傲慢な表情と雰囲気を崩さない。


「とうとう追い詰めましたよ、邪神クロユリ」


「ユカリか。面倒なことをしてくれたものよ。妾の実験に遅れが出た」


「神でもずいぶんと違うもんだな」


「あれが邪神……なんて凶暴な魔力なの……」


「この世界への干渉をやめなさい。もう逃げ場はありません」


「クフフフフ……無駄よ。もう女神の一匹や二匹で妾は止められない」


 余裕の笑みだ。ここにいるのはユカリのみとはいえ、女神の包囲網を突破できる保証でもあるのか。


「教えてやろう。人間では到達できない、圧倒的な神の力を」


 こいつを倒さなきゃ終わらない。

 気を引き締めていこうか。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] ニコニコの投稿動画から来ましたー。 それで19話まで読んでみた感想ですが…。特に何も出てきませんでした。 とりあえず、誰が喋ってるのかわからないのが困ります。 その結果キャラ立てが…
[一言] もうやめて!暗黒博士のライフはとっくにゼロよ!
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