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第9話 スキルが戻って、エルマにご褒美をあげる(襲われる)

 で、翌日。



「ただいまー。ハルーただいまー。いい子にしてたー?」


 エルマは昨日と同じように、鎧に返り血一つつけずに帰ってきた。


 あれ、おかしいなぁ、戦争してきたんだよね?


 俺が首をかしげているとエルマは体を預けるがごとく抱き着いてきた。俺は絨毯の上に押し倒されて頭を打ち付ける。メイドはどう考えても彼女の様子が今までと違うのにまったく動じることなく、一礼をして立ち去った。

 助けてくれてもよくないですか? 後頭部痛いんですが。


 俺の頭の両脇に手をついて見下ろすエルマの顔に笑みが浮かぶ。


 そして、


「ちゃんと殲滅してきたよ」


 恐ろしい単語が吐き出された。


「詳しい話は食事をとりながらしようか」エルマは俺の頬にキスを――それも内出血するほど――すると体を離し立ち上がった。


「人を殺した話を食事の席でするのか」

「いいじゃないべつに」


 幼少期に監禁され、愛とかなんとかそういうものの教育が遅れたせいなのか、エルマはときどき常識的なものが欠落しているような気がする。

 昔一緒に遊んでた時も虫とか食ってたし。果物ばっかり食べてたから物珍しかったんですって。さすがにやめさせた。

 まあその非常識のせいで、今俺がここにいられると言っても過言ではないけど。





 今日の夕食メニューはまた肉だった。肉汁と血の滴るステーキ。あと高級な白いパン。

 エルフのごとく果実ばっかり食ってた女の食生活とは思えない。

 細かく切った肉を口に運びながらエルマは言った。


「教会殲滅についてはほとんど語ることはないんだけどね。ジェナが門を破壊したら、巣を壊された蟻みたいにわらわら奴隷兵士が出てきたわけ。で、閃光魔法を使って奴らの目をつぶしたの。後は農夫が作物を収穫するみたいに片っ端から首を切って」


 エルマはナイフをステーキに突き刺した


「ほとんど任務完了。建物内の残党を処理して、村の子供たちを見つけ出した。ああ、あと研究者だか、魔術師だかわかんないけど老人が何人かいて、スキルの戻し方を知ってたから尋問して」


 そこでまたステーキにナイフを突き刺す


「聞き出したわ。これ、背中にかければスキルが戻るって。奴隷兵士で実験もしてきたから間違いない」


 そういって、エルマは地面に置いていた革袋を振った。絶対尋問じゃない。あと食べ物で遊ぶのやめなさい。メイドがちらりとステーキに突き刺さったナイフを見たがすぐに目をそらして待機の姿勢をとった。





「まあ私は、別にスキルなくてもいいんじゃないかって思うけど」


 食事を終えて風呂場につくと彼女は言った。


「俺は取り戻したいんだよ」

「どうしても?」俺は肯いた。

「じゃあさあ、何かご褒美ちょうだい」

「え?」

「わざわざ取りに行ったんだよこれ。ジジイどもぶんなぐって使い方も聞いたし」


 やっぱり尋問じゃないじゃないか。


「何かご褒美があってもいいと思うんだ」


 エルマは俺に顔を近づけた。鼻と鼻が接触する。また、瞳が深い色をしている。


「わかったよ」

「やた」


 彼女は俺の服を脱がせるや、いきなり背中に革袋の中身をぶちまけた。鋭い痛みが背中を走り抜ける。


「痛!」


 入れ墨が入っている部分だろうか、線状に背中が熱い。


「入れ墨消えたよ」エルマはそんなことをぼそりという。


 俺はしばらく背中に違和感があって、腕を回したりしていた。


「スキル使ってみたら?」


 言われた通りスキルを行使する。バスタブの向こう側に転移。成功。



「使えるね。よかったね」エルマはそんなことはどうでもいいように適当にそういった。

 バスタブを回ってこちら側に来ると、俺のズボンを脱がしにかかる。


「おい! やめろ!」

「なによ。早く体洗って。ご褒美貰うんだから」

「洗うから出てってよ」


 彼女は不満そうに鼻を鳴らして、衝立の向こうに消えていった。




 夜。エルマはご褒美をもらいに部屋についてきた。ローブ姿で微笑んでいる。鎧の上からではわからなかった女性らしい曲線、大きな胸。俺は一瞬目を背けた。


「ご褒美ってなにするつもり……」


 視線をエルマに戻して、俺はぎょっとした。彼女は何のためらいもなくローブを脱ぎ始めていた。俺はあわてて背を向け叫ぶ。


「なんで脱ぐの!」

「この前の続きするために決まってるでしょ。ほら、ハルも脱いでよ。体くっつけたい。ハルにもっと触れたいよ」


 背にやわらかい感触。押し当てられる。エルマの両手が伸びて、ローブの腰ひもがほどかれる。首元に吐息。


「ねえ、はやくぅ」耳を噛まれて、体が縮む。そのままベッドにうつぶせに押し倒された。

「鎧着てないから痛くないでしょ」


 エルマは俺を仰向けにした。俺は下を見ないように目をつぶる。彼女はそんな事お構いなしで、あばらの浮いた俺の胸に、頬を押し当てた。


「心臓の音聞こえる。どくどく言ってる。ふふふ。ハルかわいい」


 目を開けるとエルマが何かを口に含んだ。小さな瓶だ。ベッドに投げ捨てると、彼女は俺に唇を重ねた。口に苦い液体が入ってくる。さらに舌が侵入してきて、俺の舌を探る、愛撫する。抵抗するが飲み込んでしまった。


「んんぅ。ぷはぁ」

「げほっ。何飲ませたの……」


 景色がぐらりと揺れる。


「ジェナが作った薬だよ。大丈夫元気になるだけだから」

 エルマの顔が揺れる。下半身が熱い。脳の芯が溶けたように何も考えられなくなる。エルマも飲み込んだのか、頬が赤く、陶酔したかのようにうっとりとした表情を浮かべている。


「はぁあ。ハル、ハルぅ、好きだよ、すき、愛してる。私の全部がハルのものだよ。全部あげる」


 次の言葉に俺は驚愕した。


()()()も」


 抵抗は虚しい。目を開いたときにはすでに……。

 痛みと悦びにうめくエルマの声。

 涙を浮かべてエルマは言った。


「ご褒美もらっちゃった。ふふふ」


 俺は……俺は……


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