最終話 俺の幼馴染達が最強すぎて俺にはどうすることもできないのだが
俺たちは目を覚ました。あたりはすっかり夜になっていたが、俺のベッドの周りではカミラとサヨ、それにステイシーが眠っていた。
隣を見るとエルマが体を起こしていた。
「おはよう」
「おはよう。夜だけどね」
俺はカミラたちを起こさないように立ち上がると、エルマに近づいてキスをした。抱きつく。
「おかえり、エルマ」
エルマは驚いたようだったが、ハグを返してくれた。
「ただいま」
その音で目が覚めたのか、サヨたちが起き出して俺を見た。
「戻ってきた!」
「ハルおかえり!」
彼女たちは思い思いのことを言って俺に抱きつき、俺はその反動でエルマの方へ倒れ、結局エルマにもだきつかれる形となった。
◇
俺たちは現国王、すなわち王子だった男に褒賞された。俺としてはほとんど何もやっていないつもりだったのだが、
「いやあ、君が居なければ、どうなっていたことやら」
そんなことを言われた。
国王殿下から頂いたのは白金貨一枚、それと王都への居住権だった。
「どこでも好きなところに住むがいい、ただ、王都の中にしてくれ。君はある意味危険すぎる」
「はあ」
俺はわかったようなわからないようなそんな声を出した。むしろカミラとかのほうが危険な気がする。
で、王都に居住することが決まると、エルマは怒った。
「なんで? ここでいいじゃん」
「国王からの指令だから」
そう言うと頬を膨らませて、ステーキにナイフを突き刺した。
俺の家が完成した。というより元あった家を改装しただけだが。2階建てで部屋は6つある。結局白金貨すべてを使うことはなく、残りをエルマに返そうとしたのだが。
「いい、今度で」
そう突っぱねられてしまった。
カミラたちがどう過ごしていたかと言うと、まあ、お察しの通り国に半分拘束されていろいろなことを根掘り葉掘り聞かれていたようだ。
「つかれたあ」
俺の家に来たサヨはそう言って隣に座り、そのまま倒れ込んで俺の膝に頭を乗せた。
「はしたない」
向かいに座るステイシーが紅茶を飲みながら言う。
「そうやっていい子ぶってると損するよ」
カミラが俺の反対側に座って肩に頭を乗せ、体に腕を回した。
と、そこにエルマが入ってきた。
「だから嫌だったの! ねえ、ハル、家にもどろう? 二人だけで過ごそうよ」
「だめ」
他3人が一度に反論した。
「じゃあこうしましょうローテーション制で」
サヨが言った。
「ああ、いつかの」
カミラが言って続けた。
「月の日がサヨで、火の日が私で、水の日がエルマで、木の日がステイシーね」
「ちょっとそれだと私少ないんですけど!」
ステイシーが言った。
「ええ、だって今回戦ってないしい」
エルマが蔑みの目で言った。
「誰のおかげでミカエルを呼べたと思ってるんですか。ミカエルに頼んであなた達全員抹消してもらってもいいんですよ」
「こわーい」
サヨは言って、俺の腹に顔を押し付ける。
「じゃあ曜日に関係なく4日ごとということで」
「賛成」
サヨが言った。
「いいでしょう」
ステイシーが言った。
「……仕方ない」
エルマが言って下唇を噛んだ。
「なに、不満があるなら受けて立つけど」
カミラはいつものように挑発する。
「不満だらけだよ、バカ」
「じゃあ戦う?」
そう言って立ち上がると魔法剣を出した。
「望むところ」
エルマは剣を抜いた。
他の二人は素知らぬ顔で、ステイシーは紅茶を飲み、サヨは相変わらず俺の腹に顔をうずめている。
「ああ、もう! 俺の家で騒ぐな!」
そんな日々がこれからも続いていく。
最強すぎる俺の幼なじみたちを俺はどうすることもできない。
そんな平和な日々だ。
(了)
ある仄暗いダンジョンの奥底、一人の赤子が産声を上げた。腹を食い破って出てきたその赤子の母親はナオミ。ユキハルの妻にして、最悪の魔王候補。
赤子はダンジョンの中をさまよい、魔物たちを食い散らかした……。
To be continued.......?
これにて『俺の幼馴染達が最強すぎて俺にはどうすることもできないのだが』は完結です。途中長い休載や改変などがあり申し訳ありませんでした。




