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俺の幼馴染達が最強すぎて俺にはどうすることもできないのだが  作者: 嵐山 紙切
第6章 一斉攻撃

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第46話 KHM50

 エルマはその後10日間目を覚まさなかった。王都にある施療院で眠り続ける彼女に誰も手を施すことができなかった。


 ステイシーはこの国の宰相となり、ソーリッジの領土を含めた新しい国を作り上げた。彼女はいくつかの文献を当たり、エルマの迷宮に入る方法を見つけ出してくれた。


「それにはヒヒイロカネと、相当な魔力が必要」


 俺はすぐに転移した。


 まずはカミラのもとに。


「ああ、来たのか。ちょうどいい見ていってくれ」


 カミラは魔王の間で跪いていた。魔王の椅子に座っているのは、リリスだ。リリスは涙を流しながら言った。


「カミラ。お前を魔族の領域から追放する」


 驚愕した。


「どうして!」

「規則なんだ。天族と魔族は昔から仲が悪くてね。魔王は天族の血が少しでも入っているものを追放する義務がある。リリスが魔王になったんだよ。正当な魔王だ」


 リリスは大声を上げて泣き出した。


「お姉ちゃん、お姉ちゃん、やだあ」

「リリス。立派な魔王になるんだよ」


 そういって、俺の手を引くと、カミラは魔王の間を後にした。

 魔王の間を出るとカミラが俺に抱きついた。

 彼女は号泣した。

 俺はカミラの背を抱いて、何度もなでてやった。


 ◇


 カミラを施療院で待たせている間、今度はサヨの元へと転移した。

 サヨはいつものように謁見の間で上段に居たが、俺が来るとまた、近くまで寄ってきた。


「ハルどうしたの?」

「ヒヒイロカネを貸してほしいんだ。いつか必ず返すから」


 サヨは一瞬考える素振りを見せたが、すぐに頷いて側近に近づき何かを言った。側近は一瞬驚いた表情をしたが、ため息をついて頷き、奥へと下がった。


「ちょっとまってね」


 しばらくすると小石台のヒヒイロカネを持って側近はやってきた。


「これでいくらすると思う?」


 サヨが尋ねる。


「わかんない」

「白金貨10枚」


 俺はげっ、と声を出してしまった。ただでさえエルマに借金をしているのに、サヨにこんなに借金をしてしまったら……。


「返してくれなくていいの、ただ」


 サヨは俺に口づけをした。側近たちは声を上げた。


「ハルと結婚したい。お願い。お金で釣るみたいで嫌だけど、どうしてもハルの奥さんになりたいの」


 ぐっと俺は息をつまらせたが、最後には肯いた。


「わかった」

「ホント!?」

「考えておく」

 サヨは頬を膨らませた。


 側近たちが何やら慌ただしい。


「何をしてるんだ? 俺忙しい時に来ちゃったか?」

「用意をしてるの」

「なんの?」

「私がハルについていくための用意」


 俺は閉口した。


「サヨ、この国から出られないんじゃなかったのか?」

「この前指輪壊れたでしょ。その時にその契約は破棄されたの。『異常な敵の襲来時には竜族の者は国からでてもいい』そういう盟約だったから」


 俺は額をさすった。


「ああ、そう」

「だからついていくの!」


 サヨは俺に抱きついた。


「色んなとこ案内してね、ハル」


 子供のようにサヨは微笑んだ。


 ◇


 サヨとカミラ、ステイシーという異様な幼なじみたちとともに施療院で、俺はエルマを見下ろしている。


「今から、エルマの意識に入り込む。カミラは魔法でこの術式を」


 ステイシーはある本の1ページをカミラに見せた。


「わかった」

「見ただけで使えるのか?」

「当たり前でしょ。元魔王だよ」


 俺は感心してしまった。

 サヨはステイシーの指示通り、ヒヒイロカネをエルマの腹の上に置いた。カミラが魔法を発動する。ヒヒイロカネは徐々に変形し、糸を紡ぐ紡錘の形になった。


「それで指をさして、ハル」


 俺が手をのばすと、ステイシーはその手を取った。


「必ず返ってきて」


 俺が肯くと、ステイシーは手を離した。

 俺は紡錘に触れた。チクリと痛みが走った瞬間、

 意識が遠のいた。


 ◇


 目をさますと、そこは城だった。この国の城だ、おそらく。というのも、様相が全く異なっていた。城の周りは茨が垣を作っていて門には入れるものの、建物自体は全く見えない。茨にはたくさんの魔物が絡まって死んでいて、それを養分に美しい花が咲いていた。ミスリルゴーレムも絡まっていた。奴隷兵士やオートマタも。


 ――冒険者として倒して一番金が稼げる生物ってなんだ? あ、ドラゴンと魔族以外で。

 ――んー、それならミスリルゴーレムかな。

 ――倒したことあるの?

 ――一回ね。すんごく大変だったけど。


 あの日の会話が思い出される。


 俺が茨に触れると、ひとりでに道を作るように分かれて、俺を無傷で通させ、そのあと、門を閉じるように後ろでまた閉じた。


 茨の垣根は続いていた。元は迷宮のように入り組んでいたのだろうが、今は城まで一本の道になっている。俺はまっすぐ茨の垣根でできた道を進んでいく。


 城の中は変わらない。この国の城だ。


「エルマ!」


 俺は叫んだが反応はない。

 会議室、図書室、厨房、メイドの部屋を周り、謁見の間にたどり着いた。


 エルマはそこで眠っていた。


 彼女は謁見の間で王が座る椅子に座り、すやすやと寝息をたてていた。


「エルマ。エルマ?」


 俺は彼女の顔を見た。相変わらずきれいな顔をしている。

 俺の幼馴染。

 俺を救ってくれた、Sランク冒険者。

 俺はエルマに口づけをした。

 エルマが目を覚ます。


「ハル……ハル!」


 エルマが抱きついたので俺はよろめいてしまった。


「迎えに来たよ」

「ずっとハルの声がしてて、頑張ってたんだけど、眠っちゃった」


 エルマはニッコリと笑った。

 あたりが霧に包まれていく。すべての時間が動き出す。


「戻ろうか」


 エルマは肯いた。

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