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俺の幼馴染達が最強すぎて俺にはどうすることもできないのだが  作者: 嵐山 紙切
第5章 ソーリッジ王国

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第39話 巨大な石

 鉄の椅子に座っていた魔族、カマエルが立ち上がった。


「やあ、我が娘よ」


 カミラは眉間にシワを寄せ、舌打ちをした。


「違う。お前は私の父親じゃない」

「この姿を見てもなおそう言えるのかい?」

「うるさい!!!」


 カミラは紫色の閃光を放った。


「ちっ」


 カマエルはそれを避ける。


「少しは話をき」

「うるさい!!」


 閃光がカマエルの肩口を貫き、羽に穴が開く。


「ぐああ!!」

「うるさいうるさいうるさい!!!!!!」


 カミラの閃光は止まらない。その紫色の魔法は最後には真っ白な光に変わった。カマエルは驚愕して避けようとしたが、すでにその体力はない。右腕が吹っ飛び、体に炎がついた。カマエルは椅子に座り込み机に突っ伏した。


「どうしてこの魔法を」

「あなたに復讐するために決まってるでしょ。堕天使カマエル。私は調べたの。あなたは天族魔法にめっぽう弱いってね」


 カマエルは腰からポーションをかろうじて取り出し、机の上に投げて割ると、それを舐めた。傷が修復していく。


「はあ……はあ……俺は堕天使ではない。天使だ」

「ほざけ」

「やめ……」


 もう片方の腕、左腕が吹っ飛んだ。


「クソ。ユキハル! 俺を助けろ!」


 瞬間クローゼットが出現し、ユキハルが姿を表した。


「うるせえぞ。何死にそうになってんだ」

「早く特級ポーションを。とっととそいつらを殺せ」

「少しは自分でなんとかしろ」

「いいか、俺が死んだら、ナオミが死ぬんだぞ。そういう奴隷契約だ。ナオミを殺されたくないんだったらな、俺を救え!」


 ユキハルと呼ばれた男は舌打ちをすると、特級ポーションをカマエルに投げた。

 俺は転移してそれを奪う。


「治させるわけ無いだろ」


 ユキハルの頭が吹き飛んだ。カミラが白い閃光を発射したようだ。

 しかし黒衣の男の頭はもとに戻ってしまう。


「天族魔法でもだめか。ハル! 逃げるよ!」


 俺は一瞬で転移してカミラを抱くと、城の会議室へと転移した。



 会議室は騒然としていた。そこにステイシーの姿はなく、エルマの姿もなかった。側近たちが慌てふためいている中、国王は一人、椅子に座ってうつむいていた。


「何があったんです?」


 俺の問に国王はゆっくりと頭を上げて答えた。


「転移スキルを持つ伝令係からの通達がきた。オートマタが暴走し、騎士団長が死にかけている、と。どうやら意志を持つオートマタが現れたようだ」

「それはどこです?」


 尋ねると、宰相が机上に広げられた地図を指差した。そこはまだ攻めることが決まっていなかった場所で捜索隊だけが配置されていた。捜索隊は騎士団長が指揮し、騎士と中級冒険者で構成されていた。


 宰相は苦しそうな表情で続けた。


「それを聞いたエルマ様が一人で伝令係を連れて……」

「くっ」


 俺はその場所に転移した。そこはエルマの故郷のすぐ近くだった。



 カミラも連れて行ったのだが、はっきり言ってその必要はなかった。俺たちがついたとき、エルマは騎士団長に手を当ててしゃがみこんでいた。


 エルマはオートマタを一人ですべて片付けた、と騎士の一人が言っていた。まるでダンスでも踊っているかのように、的確に、オートマタの首を撥ねていったという。騎士と冒険者は全て合わせて100人程度。中級冒険者が含まれていたといっても一個中隊が苦戦した敵をいとも簡単に壊滅させた。


 エルマは俺の姿を認めると首を振った。


「だめ、傷が深すぎる」

「エルマは怪我してないのか」


 俺は近づきながら尋ねた。


「してるけど今は騎士団長が……」


 俺は横たわっている騎士団長に特級ポーションをかけた。ユキハルがカマエルに投げたのを奪ったやつだ。


「な!!」


 カミラとエルマは目を見開いた。


「そんなものどこから!」

「持ってきてたの?! ちゃっかりしてる」

「エルマが死にそうだったら使おうと思って。多分これで大丈夫」


 数滴かけただけで騎士団長の胸に深く入っていた傷は元通りになり傷跡さえなくなった。今は深く寝息をたてている。


「エルマは? どこ怪我したの?」

「え? ああ、ちょっと背中をね。でもだいじょ……」


 有無を言わさずエルマの背中にポーションを数滴かける。


「え! それいくらするかわかってるの!」


 俺はしゃがみこんでエルマにキスした。


「無事で良かった」

「うっ…………ありがと」


 エルマはそっぽを向いてそういった。「ずるいよ」とも。


「私にもキスしてよ」


 カミラが俺の肩に手を置いて言った。


「その前に怪我した人たちを治してあげないと」

「ちぇ。終わったら絶対だからね」


 カミラは怪我をした騎士や冒険者たちを運び一箇所に集めると、特級ポーションを霧状にして振りまいた。すでに死んでしまったものも多かったが、腕や足を失い絶望していた者たちは、戻ってきた手足を見て、その奇跡に涙していた。


「終わったよ。ほら、ご褒美は?」


 カミラは俺にそう言った。でも、多分それは方便だ。本当は慰めてほしいんだと思う。確かめたいんだと思う。その顔を見ればわかる。


 カマエルのことだ、カマエルが本当の父親だと知って、ユキハルにオートマタを作らせたと知った彼女は俺がどう思っているのかを知りたいのではないか。

 カミラは今にも泣き出しそうなそんな表情をしていた。


 エルマがじっと睨んできたが、背に腹は代えられない。俺はカミラにキスをした。


「ねえ、ハル。ハル? 私のことを一番に愛してくれてるんだよね?」


 エルマが俺たちに近づいてくる。カミラは俺と口づけをしたまま離れる気がない。俺は目を開けて、眼前にある美しい顔と迫りくる麗しい顔を見比べていた。

 唇を離したカミラは言った。


「いつか第二夫人でもいいと言ったけど、やっぱり第一夫人がいい。この前、ラプンツェルとシたんでしょ、ハル。私のことは愛してないの? 私も今すごく傷ついているのわかるでしょ。ねえ。私とシてよ」

「ふざけないで! ハルは私の……」

「お取り込み中すみません!!」


 伝令係が医療テントの中に飛び込んできた。


「緊急事態です!」

「なに。またオートマタ? 早く殺して一緒にこのバカ女も殺す」

「それはこっちのセリフ」


 カミラが俺を抱いて離さないから、エルマは俺の腕を引きちぎらんばかりに引っ張っている。にらみ合う。


「いえ、異常な魔力を放つ巨大な石が発見されました。魔力が邪悪で、周りの森が死に絶えています」

「だから何! そんなのほっときなさい。どっかの冒険者がなんとかしてくれる」

「お前は冒険者だろう。なんとかしてこい。その間私はハルと愛し合っているから」

「……殺す!」


 その殺気はあの黒衣の男、ユキハルに向けられたものと同じ色だった。


「いえ、魔力検査官によるとどうやら、その石はオートマタ全てと関係していると。……動力源なのかもしれません」


 伝令係は怯えながら報告した。優秀な男だ。


「それは破壊しないといけないんじゃないか、俺はそう思う」


 俺が言うと、二人は俺から離れて出口に向かった。


「先に破壊したほうがハルと愛し合う」

「ラプンツェルにしてはいい提案だ。のってやる」


 勝手に景品にされた俺は彼女たちについていった。

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