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俺の幼馴染達が最強すぎて俺にはどうすることもできないのだが  作者: 嵐山 紙切
第3章 ドラゴン族女王

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第22話 ドラゴン族女王 サヨ

投稿できなくてすみませんでした。今更ですが投稿します。

 サヨは漆黒の髪を持つ。白髪の魔王カミラとは正反対だ。

 連れている従者は5名。顔なじみばかりだ。


 サヨは前髪がまっすぐ切りそろえられているが、反面後ろ髪はとても長い。太陽の光があたり、動くたびに色を変える着物は派手ではない上品さ。


 人間の白目に当たるところが赤いのが王族の象徴であるが、その攻撃的な色合いに反して、彼女の目からは温和な印象を受ける。おそらくタレ目だからだろう。涙袋も大きい。


 サヨは俺のそばまで近づくと手をとった。


「ずっと、ずっと待ってたんだよハル」


 そう言うとサヨはポロポロと涙を流した。


「ごめん遅くなって。色々あったんだ」


 俺はそう言って頭を撫でる。

 サヨは俺に抱きついた。





 隣国の王の謁見室に入ったことがあるがそこは必要以上に豪奢だった。反面、ドラゴンの国の女王の謁見室は畳が敷かれ、ふすまが周りにあり、窓の代わりに障子がある極めて質素な作りだ。


 サヨは本来なら一段高い場所に座り、顔を隠して謁見するはずだ。

 なのに、俺のところまで座布団を持ってくると目の前に正座をした。


「サヨ、女王なんだからちゃんとしないと」

「でも近くにいたい」

「それはわかるけどさ」

「だめなのぉ」


 プルプルと震えて今にも泣き出しそうだ。こんなので女王が務まるんだろうか。

 側近たちを見ると驚愕していた。俺は首をかしげた。


「わかったよ。でも後で怒られるかもね」

「そのくらい平気」


 サヨはにっこり笑った。

 俺は過去の話をした。


 サヨは何度も涙して袖で拭っていたために、両袖が濡れすぎて違う色なってしまっていた。


「ひどい、ひどいよそんなの」


 彼女はそう言ってうつむいていたが、ばっと顔を上げた。その目を見た瞬間、ああ、この子は本当に女王なんだと思ってしまった。


 先程のタレ目は剣呑なものに変わり、王族特有のその赤い色が広がったように見え、畏怖の念を否が応でも引き出される。涙が頬を伝っているのにその力強さ、王としての威厳ははっきりと見て取れた。


 側近たちが跪き頭を垂れた。


「その教会をつぶす」

「お待ち下さい、それは……」


 側近の中で最も歳をとったものが慌てて言った。

 サヨはすぐに頭を振って訂正した。


「いえ、ごめんなさい。感情に身を任せてしまいました」


 サヨは何度か深呼吸をした。そして、笑った。


 何という気力。俺と別れてからいままで、どれだけの感情の嵐がサヨを襲ってきたのだろう。そしてどれだけ彼女はそれを押さえつけなければならなかったのだろう。女王として、国民を守る存在として。


 かつてのサヨはあんなに泣き虫だったのに。



 俺はただただ、彼女を尊敬した。



「戻ってきてくれてよかった。また逢えてよかった」






 俺はその後、応接室のような場所に通された。サヨはまだ業務が残っているからと。

 彼女が仕事を終えて応接室に入ってきたのは夜になってからだった。俺は食事を出されて食べていた。生魚を食ったのは久しぶりだ。


「生魚なんて大陸じゃ食べられないでしょ」


 サヨは俺の食べる姿を見てそう言った。


「懐かしい味がする」


 食べ終わるとサヨは俺を連れて城の中を歩いた。


「どう? ここも懐かしい?」


 連れてこられたのは俺が初めて転移してきた場所だった。枯山水というらしい。俺はその水の流れのような砂の上に着地したので盛大に足跡を残してしまった。もちろん怒られた。


 サヨの部屋は昔と変わっていない、その枯山水の目の前にあった。


「本当は警備のために部屋を変えてほしいって言われてたんだけどね、どうしても変えられなかった。また、あそこにハルが足跡を残してくれるかもっておもって」


 懐かしい風景だ。障子の裏側、寝室に光石ランプが置かれていてほのかな明るさがある。

 桐箪笥、一緒に遊んだ机、小さな漆塗りの箱。そのどれもが記憶に残っている。


 ふすまを閉めると、サヨは俺にしなだれかかってきた。


「ずっと待ってた。毎日毎日あの砂をみて、足跡が残ってない確かめてた。逢いたかった。ずっと、逢いたかった」


 サヨは顔をあげると俺に口づけをした。

 俺は驚いて後ずさってしまった。


「なにして……」

「いやだった? 私ね、泣き虫だったでしょ。すぐ泣くし、王族だから友達もいなかったの。そこにハルは現れた。天からのやってきたのかと思った。ハルは私が泣いても頭ナデナデしてくれて、絶対いなくならなかった。ずっと友達でいてくれた。だからね。すきになった。ずっとそばにいたいって思ったの」


 サヨはまたポロポロと涙を流した。まるで幼い頃に戻ったように。


「でもいなくなっちゃった。私はまた一人になっちゃった。嫌われたのかなって思ったの。泣き虫だから、嫌いになったのかなって。だから私、頑張ったよ。泣かないように頑張ったの。どれだけ悔しくても苦しくても、泣かないでいられるようになったの」


 サヨは俺の腰に手を伸ばした。


「そしたらハルが帰ってきてくれた。好き、好きだよハル」


 彼女は顔を歪めた。


「もういなくならないで」


 大声を上げてサヨは泣いた。今まで溜め込んできた涙を流すように。俺は彼女の頭をなでてギュッと抱きしめた。


 サヨは何度も口づけを要求した。俺は応えるしかなかった。


「ごめん、ごめんね」

「ずっとここにいて、ハル」


 サヨは俺から離れて寝室の扉を開けた。

 枕が2つおいてあった。


「結婚しよ、ハル。ずっとふたりでいられるように」 

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