桜 ~手の届かない花~
桜の花は散っていく 月の灯も届かぬ闇で
乱世の行末を 平和と信じ求めるその場所を
映し出すように 手の触れられない高みでひらひらと
遠く遥か上空の 一番上を生きる人なのだとしても
この桜の花々に手が届いたりそっと触れられたり
なんて…… 人の世に縛られている間は無理なのだろう
いつか汚れた華の清純かつ不純な香りではなく
無邪気な花の香が漂う場所へ行きつけたなら
それは願ったとて 届かないものとわかりきっているから
桜の花は散っていく 月の灯が朧げに霞み
儚さと儚さが織り成す芸術の中 だれにも見えぬように
光りに照らされながら 闇のもとに美しく散っていく
それはまるで 人の世で繰り返される争いが
いかに愚かなことであるか 示すようにも思えた
散りゆく花びらにも気付かない 戦乱の世では
落ちた花びらを拾うこともできないし
哀しみの終わりを知ることもできないのだと
暗闇に潜みながらも 派手で上品で明るい
手の届かない花は そう示しているようにも思えた
そのことにいつか気付けたなら 乱世は終わるのだろうか
その日がやってきたなら 桜はどうなるのだろう
姿を見せてくれるのか 消えてなくなってしまうのか