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狂乱

 舞台上で踊らされている役者たちですら感じられるほど、今の世は乱れに乱れきっていた。

 王朝に逆らい兵を挙げる人間が各地に現れ、絶対的権力者がいないからには、国は主を求めていくつにも分裂した。

 一時期は同じ場所を見ていたはずの人々が、昨日の今日ので全くの別方向を向いていた。

 当然そうなれば信じられるのは己のみというわけで、裏切りの風潮はますます高まった。


 廃れ、墜ちてゆく世の中で、儚さが美化され、永遠が疎まれた。

 人々にとって美の象徴であった桜は、この流行により、神聖なまでの芸術へと更なる昇格を遂げた。

 何もかもが醜く汚れていった中だから、変わらずに咲き誇っている桜の輝きが際立って見えて仕方がなかったのだろう。

 陶酔していく。心酔していく。

 何をどう言ったって、どう見たって狂っているとしか言いようのない。

 狂っていることにだれも気付いていないことが、最も狂っていた。


 信仰の対象になっていることすらも、全く気にも留めていないといった様子で、凛と桜は咲いていた。

 そして散っていた。

 儚さに酔う人々は、文化人やら賢人やらは、趣というものを血迷ったのか、満開の桜よりも散りゆく桜こそが美しいのだと唱えた。

 人の手が届くところになどある下賤な花ではないのに、勘違いをしているのか、口々に評論をし生意気にも詩などを詠んだ。

 絵などを描くような芸術家気取りまでが現れる始末だった。


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