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封じられた姫は覇王の手を取り翼を広げる  作者: 有沢真尋
【間章】 もう一つの別れ
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滅亡のアスランディアと「幸福の姫君」

 アスランディア王国の滅亡。

 史書は語る――


 サンジール暦七九八年、春。カルバルサにおいてアスランディアとの国境線においてイクストゥーラ軍第二師団がとった奇襲作戦が功を奏し、戦いの火蓋が切って落とされる。


 イクストゥーラはオアシス諸都市連合と相対していたアスランディアの後背をつくことに成功、見事な勝利をおさめた。これはかつてイクストゥーラの王女イシスが和平のためにアスランディアの「太陽王」に嫁いだとき、不当な条約によって領土を割譲せしめられたことに対する、正当な報復である。


 アスランディアの民はこれを不服とし、全面降伏の構えをみせる。

 均衡を保ってきた三勢力の武力衝突は避けられぬこととなった。

 だがこのときすでにイクストゥーラとオアシス諸都市連合との間では盟約が成っていた。ともにアスランディアを討った後の、国内組織の再建から潤沢な資源の再分配まで。


 最大のオアシス都市マズバルの首長である「砂漠の黒鷲」ザラ率いる連合軍の苛烈な攻め。「冷徹王」の呼び名をもつイクストゥーラ王国のリズバル王の計算されつくした攻撃。

 徹底抗戦を貫いたアスランディアは、多大な犠牲を民に強いることになる。

 そして七九八年初秋。

 アスランディア王家は王宮の陥落にともない、その命脈を途絶えさせることとなった。


 なお、「幸福の姫君」ことイシス姫は、たっての願いにより太陽王とは離縁。戦火の上がる前にイクストゥーラへ帰還していた。予言の姫として鳴り物入りで嫁いだ姫が去った途端に、アスランディアは滅亡。

 その後まことしやかに、アスランディアとイクストゥーラの明暗を分けたのは生ける伝説であった姫の身の振りもあるのではないかと風聞が立った。

 イシス姫がアスランディア王を見捨てたことにより、アスランディア王国は天命を失ったのだ、と。


 帰国後のイシス姫は離宮にこもり、やがて病によってはかなくなった。

 こうしてイクストゥーラ王国は、このとき一度「幸福の姫君」を失ったのだ。


 それから数年、離宮は月の姫にして新たなる「幸福の姫君」を、主として迎える。

 アスランディア王を選び、見捨て、王国の滅亡に一役買ったイシス姫の後継にあたるかの姫は、果たしてこの動乱の時代に、誰を「王」として選ぶのか。


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