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封じられた姫は覇王の手を取り翼を広げる  作者: 有沢真尋
【第四部】 隊商都市の明けない夜(前編)
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痛み分けの女子会(4)

 本気で言っている。


 ライアは、無言のまま、その場に倒れて突っ伏した。

 涙目になっているセリスを見ているのが忍びなかったのもあるし、心の中でつっこみが追いつかなかったせいでもある。


(アルザイ様は一緒に寝て、そんなこともしていないの!?)

(アーネストだって、旅の間に手を出せなかったみたいで、セリスに対してあんなに苦しんでいたのに!!)


 セリスには迂闊に手を出しにくい大いなる秘密があるのかと、ライアは信じかけていたのだ。


(あの男は無理やりした!? 既遂!?)


 変な笑いがこみあげてきて、頬がひきつれて痛い。


「ライア様……?」


 恐る恐るという様子で声をかけられて、ライアは気合で起き上がり、姿勢を正した。


「よく、わかりました。あなたにとって、『男性』はラムウィンドスだけなのね?」

「そんな、僕がもう()()()()()()()()()()ような言い方はやめてください!! 顔合わせないようにしているし、近づかないようにきちんと言いましたし……!!」


 セリスは、何やら必死に言い募っているのだが。


(言ってはいたけど……でも、あの男も真に受けていたかどうか)


 力いっぱいセリスがラムウィンドスを「野蛮人」と罵って振り切ろうとしていた場面をしみじみと回想して、ライアは力なく笑った。

 

「薄々わかっていたつもりだけど。あの王者アルザイ様も傾国の美形であるアーネストも、あなたの眼中にはまったく入っていなかっただなんて……。不憫だわ、他人事ながら」

「不憫とは……?」


 ライアは、しげしげと、セリスを見る。

 掛け値なしのうつくしさだ。


(アルザイ様が女を着飾らせるとき何を考えていると思うの? セリスのこの姿を見て、どう思ったことか)


 黙ってしまったライアに対し、セリスは手を変えることにしたようだった。


「それで、ライア様は昨日、何をしてアーネストをそんなに怒らせたのですか?」

「……そういえばそんな話、私あなたにしてしまったわね」


 この動揺できれいに忘れていてくれたら、と思ったがそうはいかなかったらしい。

 実際は何もなかったのが、「抱いて」と言って怒らせました、という事情。さてどこまでセリスに話すべきかとライアが思案したそのとき、ドアをコツコツと叩く音がした。

 二人で話をやめて、そちらに視線を向ける。


「姫君たち。少しお邪魔するよ」


 気安い口調で二人の素性をすらりと言いながら、その人物はドアを軽やかに開けてきた。


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