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封じられた姫は覇王の手を取り翼を広げる  作者: 有沢真尋@12.8「僕にとって唯一の令嬢」アンソロ
【第四部】 隊商都市の明けない夜(前編)

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痛み分けの女子会(3)

 ライアは真顔で、セリスの赤く染まった顔をまじまじと見つめた。


「ごめんなさい、それ含むところが何もなくて……。つまりそのままの話って意味?」

「何を含むんですか?」


 話しているうちに冷静になってきたのか、セリスの声は平静に戻りつつある。その様子を大変不思議な気持ちで眺めてから、ライアは話を戻した。


「どう言えば伝わるのかわからないのだけど……。男と女で寝所を共にして、『枕をしていました』だなんて。その状況、多分誰にも理解されないと思うの。セリス、それをあのラムウィンドスって人に言える?」

「ラ……に言ったら、たぶん呆れられると思います……。従者が主と寝てしまうなんてだらしないって。眠くても姫は床だ、と。いや、ラムウィンドスは僕に対しても臣下の振る舞いをするから、そこまで言わないかな。でも、僕がアルザイ様に失礼をしたら怒るような……。今はあのひとはアルザイ様の配下だし」


 根本的に。

 話がかみ合っていない。

 なぜこんな齟齬が生じるのかライアには理解できないのだが、昨晩アーネストに寝物語をされたときに、セリスの奇妙な育ちについては多少聞いていた。


 ──あのひとは、男っちゅうものを知らないで育っとるからね。年齢は大人だし、口ではわかったようなこと言うけど、ズレとる


(寝物語というか……、夜通しこんこんと説教されたんですけどねー! 私は私で枕扱いすらされずに体に直接触れられることもなく……)


 ――こういう時はな。あんまり見られてると、オレが恥ずかしいんや


 そんなことを言われて、抱いてくれるのかと期待したのに、気が変わったのか説教が始まってしまったのだ。いま思い出しても、アーネストに対して(許しがたい)という思いが沸いてしまうライアである。

 その持て余し気味の納得いかない気持ちで、セリスをいじめたくなってしまった。


「わかったわ。じゃあ、これは一度想像してみて欲しいことなのだけど。セリスはラムウィンドスという人に、同じことされたらどうする? つまり、夜通し一緒の寝台で、枕だなんだと理由をつけてその腕に抱かれたら」

「同じ……」


 きょとんと聞き返してきたセリスであるが、沈黙のうちにライアの言った通りの状況に想像を巡らせたらしい。

 顔が再び真っ赤に染まって、火を吹く。

 本人も自覚があるのか、両頬に両手をあてて、冷ますようにぱたぱたと叩きながら言った。


「無理です無理……! だってラムウィンドス、口づけしてくるし……! ひとの気持ちも聞かないで、無理やりしたこともあるんですよ……!? 一晩一緒になんて、無理です……!!」


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