異世界へ帰してくれ
神「すまんのう、異世界に転生してやったものの、チートだなんだのと、異世界からのクレームが多くてのお。
元いた現実世界へ返さねばならんという事になった。
誠に申し訳ないと思っておる。」
主人公「別に構いません....ところで、どういう条件で現実世界へ?」
「それがのお、君には死んだ時と同じく高校生からやり直して貰いたいと思っておる。」
「分かりました。その条件で結構です。」
次の瞬間、主人公こと、菜月奈緒は、高校の授業を受けていた。
どうやら死んだ時と同じく、両親も同じで、高校も同じらしい。
授業なんてたいした事はない。元々俺は頭が良かったんだ。
そのおかげで異世界でも活躍できたんだ....
HRの過ぎ去った放課後、家への帰路に、一人の老人が立っていた。
「君を待っていたんじゃよ。」
「誰です?貴方は...」
「わしは俗世界ではメフィストと呼ばれておる。しかしまあ、そんな事はどうでも良かろう。
君に知恵を授けにきたのだから。」
私は頭のおかしい老人を無視して逃げて帰ろうかとしたが、知恵という言葉が気になった。
「どんな知恵を授けに来てくれたんです?」
「お若いの、君は異世界へ旅をした事があろう。どうじゃ、図星だろう。
そこで君は神の力を借り、ありとあらゆる事を成し遂げた。
しかしじゃ、しかし、知恵を授けようとはこの事じゃ、君は確かにこの小説の中では『主人公』という名を与えられている。
君は自分が特別な存在だと思ってるんだろう?
だが、この現実世界では、君は、
フフフフフフ!現実世界じゃ君は社会の歯車、モブと変わらない凡人にしか過ぎんのじゃよ!」
確かに中高生は自分を中心に世界が回っていると思っておる。
だからこそ大人になってからその復讐としてなろう小説なんぞという所に中学生の頃思い浮かべた妄想を書き連ねるのだよ。」
私はその言葉を聞いて初めて理解した。
そうだ、異世界でチート能力が使えていたのは私自身では無い。
妄想の具現化として、誰かが書いたものだったのだと。
まるで、私は操り人形ではないか!
「しかし僕にとって異世界で活躍する事は夢なんです。我々の希望なんですよ!
メフィストよ、僕は異世界へ帰りたい。操り人形などにはなりたく無い。どうすれば宜しいのでしょうか?」
メフィストは薄笑いをしながら言った。「それには交換条件がある....
君の願いを1つだけ叶えよう。しかし、交換条件として、君の魂を頂く。どうかね?」
私は同意した。つまらない現実世界の高校生活より、魂を売ってでも、この倦怠感から逃れたい。
「僕の願いは....」