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元役立たずの異世界成り上がり譚  作者: 紅椿
1章――王都編
2/3

1,行き先

覚醒。

それは目が覚めること、または迷いからさめることを言う。

そして今まさに、二年F組の全員が、寸分の狂いもなく同時に意識を覚醒させた。


「……ここは…?」


まず最初に声を発したのは、やはりというべきか。クラスのリーダー聖川だ。

サッカー部のエースとして幾度となくゴールを決めるその冷静さは、この謎の事態においても有効なようである。


「学校じゃない…」

「昔読んだお伽噺に、こんな部屋があったわ…王の間、だったかしら」


次に声を発したのは七咲。彼女も吹奏楽部のトランペッターとて猛威を奮っている。現に、有名音楽大学から推薦がきているほどの実力だ。故に精神が強いのも自明の理であろう。

そして自分の体験談を話したのは、榊叶愛。榊流抜刀術、榊流刀剣術の二門の道場をもつ名門中の名門の長女だ。

さらにその二つを師範とは言わなくても、それに近いまで腕を磨いている。榊家史上最高の逸材とも言われる、まさに鬼才。

余談であるが、七咲凛と榊叶愛は親友である。


「ほっほ、その通りでございます、勇者様方。ここはグランツェ王国にある王城、その王の座にございます」


唐突に、この場いる誰のものでもない声が聞こえた。それは中年男性のような、または高齢のしゃがれたような、終いには若い青年のような。まさに年齢が察せないレベルのどうともとれない声質。


「グランツェ王国…?ここは日本じゃ?」

「はて、日本ですか?聞いたことがないですな」


日本ではないのか。そう問う聖川に告げられたのは非情の一言。すなわち、ここは少なくとも日本ではないとわかる。そもそも日本には王都グランツェなんてものはないし、王城などもない。

薄々勘付いていた聖川たちだったが、疑念から確信に変わったのは言うまでもない。


「さて。勇者様方にはこれから、人族を救ってもらいたいと思っております」

「人族を、救う…?それと勇者ってのは?」

「それも含めて説明致します。まず、皆様がいるここはグランツェ王国。人族の住む国の中でも最大の規模を誇る、自慢の国でございます」


そう、グランツェ王国には約五千万の人族が住んでいるのだ。その敷地内には、王都を含む数多くの街が存在する。また雄大な農業地帯、小規模工業地帯など、様々な設備も充実してある。北部に広がる賢者の森などの危険地帯などもあるが、それはまた別の機会に。


「そして我々人族は今、絶滅の危機に扮しているのです。それは魔人族の活性化にあり、魔王と呼ばれる者の誕生にあります。

まずこの世界には大きく分けて三つの種族があり、人族、魔人族、獣人族の三種族がそれに当たりますな。そして魔人族、獣人族は人族よりも高いスペックを持っているのが特徴で、人族は一応最弱の族とも呼ばれております。

前置きはこれまでにしておきましょう。

…勇者様方!どうか人族を救ってくだされ!魔王を倒し、平穏を取り戻してくれませぬか!!」


謎の爺の話に全員が聞き入り、そして驚愕を隠さずにはいられなかった。

それもそうだろう。今の今まで戦争などとは程遠い生活を送ってきた上に、謎の地に突然転移されて混乱しない方がおかしい。この状況で落ち着いている聖川、七咲、榊、その他少数、ついでに日向が異常なのだ。

ちなみに日向が落ち着けている理由として、彼の趣味は読書であり異世界転移系も好んで読んでいたからというだけである。

そのどれもが俗に言うテンプレで、現状もそれに変わりないため、ある程度平静を保てているのだ。


「…やろう、皆」


誰も一言も発しない中、聖川が声をあげた。


「俺は、知らない世界だろうと…同じ人間なら助けたいと思う。それに勇者っていうくらいだ、普通の人より強いんだろ?」

「その通りでございます。いやはや、やはり勇者様は鋭いですなぁ、感服いたします。ええ、勇者様方は、一般人より高いステータスを持ちます」

「だ、そうだぜ皆。勇気を持とうぜ!俺は聞いたことがある…勇気がある者が勇者なんだ!!皆立ち上がれ!この世界を救うんだ!!」


…中々いい演説だな、と日向は感じる。生まれ持ったカリスマ性という言葉で解決できるだろうか。これではまるで彼は、アニメ好きのオタ…と、不埒な考えを日向は持ったがすぐにその可能性を捨て去る。


「そ、そうだ…俺たちは勇者!!」

「いける!」

「やって…やってやるぞお!!」

「「「「「うおおおおおおー!!!!!」」」」」


ほぼ全てのクラスメイトがやる気に満ち溢れる中、冷静組である七咲、榊、日向は周囲を観察していた。


「…ねえ叶愛、日向くん。おかしいとは思わない?」

「思うわ。これといった確証はないけどね」

「…うん。あの司教っぽい人、わざと聖川君の方を見て話してた。聖川君がこのクラスのリーダーだってわかった上で彼の方を見ながら喋ってた。そして単純な聖川君は素直に話に乗って、クラスのみんなも賛成した……。

これを狙ってやっていたのだとすれば…」

「相当な危険人物ってわけね」

「……大丈夫かなぁ」

「まあ、なるようになってみよう。それしか道はないよ」

「そうね。それより日向くん、あなた案外鋭いのね」

「い、いや、それほどでも…」

「むぅ…そうだよ、日向くんはずううっと昔からこういう人なの!私はいっぱい知ってるんだからね日向くんのいろんなところ!幼稚園の頃だって…」

「わぁあああ!やめてやめてやめてー!」


と、ある意味談笑をしている三人。イジメを受けている日向に普通に接してくれるのは、七咲、榊、龍崎という男子くらいである。


「では勇者様方。こちらへ」


どうやら、王と対面らしい。

彼らに少なからずの緊張が走る。それもそうだ、自分たちの国でいう天皇陛下と出会うのだ、堅くなってもしょうがないだろう。

王の間と呼ばれた場所より更に進み、王の座という場所に到着する。何が違うのかと疑問に思ったが、突っ込まないのはご愛嬌。

堅牢な扉――というよりもはや門だ――を通り抜けると、煌びやかな装飾が施された内装に多くの護衛と思われる兵士が囲む部屋が、眼前に映し出される。

思わず感嘆してしまうほど美しい光景に、全員が見惚れてしまう。しかしそんな場合ではない、と気を引き締める聖川に、皆がついていく。

それを見る先ほどの爺は、なにやらご満悦のご様子だ。


「よくぞ降臨なさってくれた、神の使者よ。そこのセバスチャンから話は聞いたと思うが、我々人族は破滅の一途を辿ろうとしておる。しかし我らグランツェが信仰するシヴァ様の神託によれば、君たち神の使者――勇者が。人族を救ってくれるのだという。頼むぞ、皆共よ」


おそらく初の邂逅であろう、本物の王との対面。紛いなき本物のカリスマというものをみて、聖川ですら固まっている。日向だけはなぜか平然としていたが。


「ああ、もちろん、突然戦いに行けなぞ言わん。グランツェの誇る王都騎士団が、そなたらを育ててくれる。時間は有限だが、たっぷりある。焦らず、地道に力をつけていってほしい」


それだけ残し、王――レイラというらしい――は、書物を開き始めた。

どうやらこうなると王様は何も聞こえなくなるほど読書に集中するらしい。何を言っても無駄なのだとか。

セバスチャン、呼ばれた男についていく彼ら。王の間まで戻ってきたところで、セバスチャンは振り向いた。


「さて。これから勇者様方には、王都騎士団と力をつけていってもらいます。また知識も。それではこちらへ」






――――――――――――――


誰もいなくなった王の座。

グランツェ王国の王――レイラは思考を働かせる。それは、先ほどまで見えていた勇者御一行のことである。


(皆が皆、我のもつスキル『覇王の威圧 』で喋ることする許されない状況の中、一人だけ効果のない者がいたな…)


そう、レイラは先ほどの勇者の中のリーダー、聖川に興味を持つのではなく、一番後ろに控えていた弱々しい少年に好奇心をそそられたのだ。

それなりに抑えたとはいえ、意図的に放出した威圧だ。しかも王国最強の魔術師とも謳われているレイラだ、抑えたといっても想像を絶する圧迫感を感じるはずである。

しかし、あの少年は……。


(面白い、実に面白いぞ、異世界より来る使者たちよ。彼らに人族の運命を託しても、良さそうであるな……)


その言葉は勇者全員に向けてではなかった。

聖川にでもない。

もちろん七咲にでも、榊にでも。


名も無き少年。日本ではいじめられていた社会的弱者である日向に向けて、その期待の言葉は送られたのだった。


レイラには、一つの代名詞とでもいうべき言葉がある。


(研鑽し、その命が枯れ果てるまで死力を尽くし、闘え。勇気ある者共よ)


有名なセリフを心で唱えた王だったが、もうすぐで期待の少年に不幸が降り注ぐことなど、予言できるはずがなかった。

遅れたのには理由が、、、((

10000文字書いたのですが、保存ミスで全て消えたんですよ、許してください。笑


榊叶愛(さかき かんな)


近々、タグに不定期更新が追加されそうですね(おい

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