互いの気持ち
千尋を追って教室を出た時、智稀の姿が目についた。
俺が追い掛けて千尋に何て声をかけたらいいのか。
千尋には智稀がいるのだ。
そんな事を考えて足がすくみ動けなくなってしまった。
……いつの間にか千尋の姿は見えなくなっていた。
ぼーっと中庭を歩いていていると、
冷たい北風が吹きハッと現実に引き戻された。
千尋に連絡をしようと携帯を取り出した。
すると携帯から着信音が鳴り響いた。
着信音にびっくりして携帯を掴みそこね、浅く降り積もった雪の上にオレンジの着信ランプがチカチカと光っていた。
携帯のランプは、雪を綺麗なオレンジ色に染めていた。
そのオレンジ色は今まで見た事のないくらい輝き透き通っていた。
俺は、ハッとして携帯を拾い上げ通話ボタンを押した。
「……あ、千尋……大丈夫か?」
「……」
千尋は、無言のまま鼻を啜っているだけだった。
「何で泣いてんだよ」
俺は、千尋がなぜ泣いているのか全くわからずにいた。
「ねぇ、……初めて会った時の事覚えてる?」
さっきまで鼻を啜っていた千尋が小さい声で呟くように話し始めた。
「あの時から、ずーっと壱の事好きだったんだよ?」
「…え?」
俺は千尋が何を言っているのがわからなかった。
一分、二分……静まり返った中庭は時間が止まったかのように長く感じられた。
「だって千尋は……智稀が」
、と言いかけた壱の言葉を途中で突っ切って千尋は言った。
「だから、智稀くんに協力してもらってたの」
それから千尋が説明した内容はこうだった。
鈍感な俺にヤキモチを妬かせるために好きな人がいると言った。
智稀は本当は彼女がいるけど仲を取り持つために協力してもらった。
壱が自分の事を何とも思ってないんだと思って泣いてしまった。
……………
「え、えぇ〜!!!嘘だろ?」
「……こんな嘘付かないよ」
「ほんと鈍感だね」
千尋が電話先で小さく笑った。
「いや、だって智稀が好きなんだと思ってたから」
「はあ〜何だよ。今まで悩んでたのが無意味だったんじゃねーかよ」
俺は急に可笑しくなって笑い出してしまった。
「もー。何笑ってんの」
「ごめんごめん」
「なぁ、千尋大好きだよ」
いままで読んで頂いてありがとうございました。初の連載に挑戦しましたのでへぼい作品になってしまいました。すいません。