世界の中心
あの放課後から1ヶ月。
あの日から2人の間は、急速に縮まっていった。
「ねぇ〜最近千尋と智稀くん仲よさ気ぢゃない?」
「あ〜私も思ったぁ!!
やっぱ付き合ってんじゃない?」
「ショック〜智稀くん狙ってたのにぃ。」
クラスの女達が騒いでいる。
両思いだし、もう流石に
“付き合ってる”よな。
俺は、なぜ千尋と智稀の仲を取り持つなんて言ってしまったのだろう。
あの時、
智稀に俺の気持ちを伝えていれば....
素直に千尋に愛してると言えていれば....
いまさらの後悔は無意味だというのに。
「愛してる」
小さく呟いてみる。
千尋に言えなかった想い。
「誰を?」
机に座ってぼーっと本を眺めながらブツブツ呟く俺の後ろから千尋が声をかけてきた。
「おわぁ?!
い...いや..違くて、
この本の台詞だよ!!!」
声が裏返りそうになりながらも必死でごまかした。
「ふ〜ん。
なんだぁ〜、壱に好きな人でも出来たかと思ったのに。」
千尋は、つまらないと言いながらいたずらっぽく小さなえくぼをつくって俺を見つめた。
「んなもん・・・・いねーよ。」
目を下に向けてそっけなく言った。
すると、急に俺の机に小さな雨が降ってきた。
俺は、ハッと顔を上げるとさっきまで微笑んでいた千尋の大きな目からポロポロと涙が頬をつたっていたのだ。
「おい。何だよ?!
大丈夫か?」
何も言わず泣き続ける千尋。
「なんでお前が泣いてんだよ。」
そう言い終わるか終わらないかのうちに、千尋は教室から飛び出して行ってしまった。
「おい!!!!!」
俺は、無意識のうちに千尋を必死に追いかけていた。