歯車は回る
学校の廊下。
教室。
放課後の道。
ふたりを見るたび胸が
ギューと握り潰されたように苦しくなった。
やっぱり俺は千尋が好きなんだ、って今頃自覚させられている。
「はあ〜馬っ鹿みてぇ。」
教室の窓から見える雪景色の中を歩く千尋を見つめながら叫んだ。
「おい。なに独り言いってんだよ?」
笑いながら俺に話かけて来たのは....
あの智稀だった。
「あ....おう。智稀。別に、なんでもねーよ。」
俺は智稀から視線を外し下を向いた。
「なんだよ。秘密なんて淋しいじゃんか。」
「だから秘密なんかねーよ。」
「あーあ。壱ちゃん機嫌ナナメなわけ?」
あまりの俺のぶっきらぼうさに目が?マークになりながら智稀は話続けた。
「そーだ!壱に話したい事あったんだ。俺の恋愛相談のってくんねぇ?」
今度は俺の目が?マークになっていた。
「..は?」
「...だからさ。
俺ね、今気になってる人いんの♪」
「おい...何だよ急に。」
智稀は、
何か考えた様に眉間にシワを寄せ
真面目そうに窓を見つめ話しを続けた。
「千尋ちゃんの事いいなぁ〜って思ってんだ。」
・・・・・
俺は時間が止まってしまったかのように動けなかった。
「だからさ、協力してよ。壱、千尋ちゃんと仲良いじゃん♪」
「...壱?」
フリーズしてしまったかのように動かなくなった俺を智稀が心配したよう覗きこんでいた。
(なんだ、千尋両思いじゃん。)
「あぁ、わかった。」
とても気の入っていない返事を返したが、胸は何だかチクチクと苦しくなった。
智稀は一瞬苦い物でも食べたような切ない表情をうかべ、
「うん。ありがと。
んじゃ俺帰るわ♪」と言って教室を出て行った。
さっきの表情は、どこにいったのか智稀はいつもの笑顔で教室を出ていった。
壱は、ぼーっと智稀の背中見つめていた。
千尋の事を考えながら....
この後でこれから先自分を苦しめる事に為るとも知らずに。