すれ違い
「「あ♪おはよ、壱」」
「「お...おう!!」」
俺と千尋は徐々に仲良くなっていつしか何でも話せる仲になっていったんだ。
でも、その時そう思っていたのは俺だけだったのかも知れないな。。。
「あのね、私。好きな人がいるの。」
肌寒くなってきたある日の放課後。
千尋が急にそんな事を言ったから、内心驚きながら俺は聞いた。
「え?何だよ。急にどうした?」
「へへっ♪」
「....誰?」
「ん〜智稀くん...。」
―片平智稀―
俺の友達だった。
頭が良くて、友達思いで凄くイイ奴だ。
「.....ともき。か」
「うん。」
強く見えるけど本当は弱くて、守ってやりたくなる千尋とは何だかお似合いだった。
千尋は急に顔を赤らめて俯いた。
しばらくの沈黙の後...
俺は乗っていた机から飛び降りて彼女の座る机の前にしゃがみ込んだ。
「千尋、茹でダコみたい。」
泣きそうになっている俺の思いが、
バレぬよう精一杯笑って彼女を茶化した。
ちゃかし合って、いつの間にかずいぶん時間がたっていた。
「なんか青春っぽいね。」
窓の外の夕日を観ながら千尋が呟いた。
そして、俺と千尋は顔を見合わせて笑いあった。
この時間が。
この瞬間が。
ずっと続いてくれるよう願いながら。
あの放課後の告白の日から、千尋と智稀が仲良さ気に話しているのを
何度か見掛けるようになっていった。