walk on の夕暮れ 11
夕食の席で、オーリは今までで見た中で一番の食欲を見せた。やはり家族の手料理に敵うものはこの世界に存在していないのかもしれない。
箸が止まらないオーリを見てこっそり安堵し、ミユキも久々の和食を心から味わった。おいしくてやさしい味。和食は世界に誇れる文化だと思う。
食べながら聞いた、オーリやディーやアマンダの昔の話。よく森に遊びに行ったこと、誰が一番早く泳げるか毎年夏になる度競ったこと、オーリとディーの身長勝負に毎年僅差で負けるオーリが身長測定の度泣いていたこと、・・・・・・。
「・・・・・・毎回泣いてたの?」
夕食を終え、片付けは手伝わせてもらい全員が落ち着いたリビング。我ながらにやにやとしているであろう顔で問うとぷいとそっぽを向かれた。くすくすと笑う。
「でも二人とも今はすごく背が高いね」
「この国だと平均かな」
「今はどっちが背が高いの?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ダブルで沈黙を貫かれた。
企業秘密らしい。
二人並んだところを見てもよくわからないので、結局大人になっても僅差は僅差だったようだ。
「ミユキだって小さかっただろ。今も小さいし」
「こ、子供ーーー」
扱い、は。
されてなかったんだっけ。中途半端に口を噤む。
「日本の女の子は小さいくらいでカワイイ! 身長いくつなの?」
「ひゃ、百六十」
「ミユキダウト」
「・・・・・・ひゃくごじゅうご・・・・・・」
「え、嘘だろそんなにないだろ」
「あ、あるよ! これは本当!」
いつももっと小さく見られているようで具体的な数値を言うと何故だかとてもびっくりされる。数字に見合ったサイズに認識されていないようだ。この由々しき問題を愛すべきクラスメイトたちは「キャラじゃない?」であっさり済ませてくれやがったが。
「この写真はなに? 枕持ってるやつ」
先ほど下に持ってきたアルバムを指差す。
「あー、こいつなにかに苛々してる時枕に当たるんだよ。昔からの癖」
「・・・・・・」
ちらりとオーリを見た。そっぽを向かれる。
「・・・・・・オーリさん列車の中で枕掴んでたよね?」
「・・・・・・さあ」
「掴んでたよ。その上こてんぱんにしてた」
「・・・・・・こてんぱんは言い過ぎだろ」
「あれだ、確かこの写真の時は俺がこいつの一番好きなぬいぐるみを返さなかった時のだ。妬いてたんだな」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
そうなの。
「まあ身長はともかく、オーリお前だいぶ痩せたな」
アルバムをめくる。高校時代のものだった。元々痩せてはいたようだが確かに今はもっと痩せている。
「時間なくてね。ようやく帰って来れたけど」
「しばらくはこっちにいるの?」
アルバムから視線を上げてオーリを見る。視線に気付いたオーリもミユキを一度見た。アマンダにうなずいてみせる。
「いるよ」
「なら大丈夫でしょ、時期に戻るって」
何事もなかったのうにアルバムに視線を落としてーーー心の底からほっとした。前髪で表情を隠す。
「ーーーもうこんな時間か。アマンダ、帰ろう」
「え、まだ私ミユキとそんなに話せてない」
「僕もだけど。まだしばらくミユキもここにいるんだろう?」
「いる」
えっと、とミユキが言う前にオーリが答えた。
「いる。ここに」
・・・・・・そう、なんだ。心の中がふわふわと動く。
「じゃあなおさら。疲れてるだろうし今日は撤退」
「ええー」
「姉さん」
「わかったわよう。・・・・・・ミユキ、明日はたくさん喋ろうね!」
「はい」
にこりと微笑んでうなずいた。ばいばい、と手を振って姉弟が帰って行く。
「仲がいい二人だね。アマンダも街を出てるの?」
「いや。アマンダは街に残ってる。ディーだけだ」
「そっか・・・・・・じゃああの二人も久々だったんだね」
そんな風には見えなかったけれど。・・・・・・家族って、そういうものかもしれない。
「そうだ、二人とも、どっちかお風呂入ってきちゃいなさい」
「ミユキから行く?」
「わたし、まだ見てたい」
ちょい、とアルバムを持ち上げる。オーリがうなずいた。
「あんま変なのは見るなよ」
「泣き顔カウントしておく」




