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walk on の夕暮れ 10


「オーリとディーの大学の友達?」

「そう。よく部屋でかち合ってたから大学関係なく仲良くなった。卒業したあとも長期休暇取れた時はよくみんなで旅行行った」

「いいねそういうの」

「俺の大学、ディーの大学、ディー、俺、俺、ディー・・・・・・あ? 誰だこいつ」

「し、知らないひともいたのか」

「酔ってたからなあ・・・・・・誰かの後輩かな」

 卒業式のページでアルバムは最後だった。そっと胸に抱いて、笑う。

「・・・・・・オーリがたくさんいた」

「そっか。・・・・・・満足?」

「すっごく」

「・・・・・・そりゃよかった」

 くしゃくしゃと髪を掻き混ぜられる。それが心地よくてふは、と笑った。

 りんりん、と小さく音がした。玄関のベルが鳴る音。

「あ、ディーかな」

「と、賑やかなの」

「うん?」

 首を傾げた瞬間、軽やかに階段を駆け上る音がし、その足音が一気に近付いてばんっとドアを開け放った。飛び込んで来る。

「オー・・・・・・リはどうでもいいわ、わあー女の子! 日本人? 日本人なの? あーキュート! お人形みたいじゃないもう! ジャパニーズ! ジャパニーズカワイイ! 」

 電光石火の如く駆け込んで来た女性は明るい砂色の長い髪を靡かせミユキを抱きしめた。   

ぎゅうぎゅうと抱きしめられ目を白黒させてされるがまま呆然としていると、うしろからのびてきた手がミユキを引きべりっと女性を引き剥がした。

「アマンダ。潰すな」

「潰さないわよ馬鹿ねえ! ねえこの子英語通じる? お話出来る?」

「あ、はい。わかり、ます」

 早口でまくし立てられた言葉は英語だった。カワイイだけ日本語だったが。頭を英語に切り替える。

「はじめまして、わたし・・・・・・」

「あ、違うの違うの! 日本語は喋っててほしいの! わたしヒヤリングはそこそこ出来るから! でもあんまり喋れないの! つい英語に頼っちゃって!」

 なるほど。

「はじめまして、わたしミユキ・ミカゲです」

「うわあああ、日本語! カワイイ! アマンダ・スコット デス。ヨロシク オネガイ シマス」

「え、喋れるじゃないですか」

「イイエ、ディアムやオーリ、ノヨニウマクナイ。・・・・・・だからついつい英語になっちゃうの。でも日本人が来るなんてうれしい! おじいちゃん以来だわ! オーリったら日本に行ってたの? こんなにカワイイ子連れて帰ってくるなんて隅に置けないわね!」

「どうも。で、落ち着け」

「わかってるわよう」

 目も髪もディーと同じ明るい砂色と緑の目。ずいぶんと性格の違う姉弟だったがどちらも話していて気楽だった。

「ずいぶん賑やかだけれど、ご飯の準備ができましたよ、若い子たち」

「はあい!」

 下からリザの声がして二階で騒いでいた若い子たち三人はぞろぞろ並んで下に下りた。戻って来たらしいディーはアマンダを見てやれやれとため息を吐いた。

「騒がしくして悪かったね」

「大丈夫。素敵なお姉さんだね」

「うるさいの間違いじゃなくて?」

 ざくっと返された言葉にくすくす笑った。ダイニングテーブルに所狭しと並べられた料理を見て少し驚く。

 和食だった。ミユキにとっては馴染みのあるものばかり。

「私の夫はやっぱり和食が好きでね。家族もみんな和食が好きなのよ」

「よくご馳走になってた僕たちもね」

「おばあちゃんの和食はヘルシーでおいしくて大好き!」

 平然と並ぶ茶碗と箸を前にある意味のカルチャーショックを受けつつ、ふんわりと香る出汁の匂いに心が溶けた。なんだかんだで久々の和食だった。

 ふんわりとよそわれたご飯にお味噌汁、煮魚に煮物に角煮、おひたしやお漬け物まで。 

ことことと煮込まれたやわらかいものばかりでほっとした。これならばオーリも大丈夫だろう。

 席に着いて、四人でぴしりと手を合わせた。顔を見合わせてーーー

「「「「いただきます!」」」」

 若い子たちの合唱に、リザは楽しそうに笑った。




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