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Iris -LoR-  作者: 秋山春水
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初投稿です。よろしくお願いします。

 今日は特別な日だ。この日の為だけに俺は考えられる全ての事をやった。VRMMOゲーム|[Last Iris Online]アイリスの発売日。たまたま応募したβテスターに当たり俺はこのゲームの虜となった。


 今までやってきたゲームの中でも異色中の異色。剣と魔法のオンラインゲーム…と思いきや、銃だってある。それも火縄銃なんかじゃなくてエネルギーを消費して打つレーザーとか。選択出来る種族も多数あり人、獣耳、エルフ、羽が生えた天使は勿論のことメカメカしいロボット、ローブを纏った骸骨なんてものも。種族毎の発展度もバラバラで人族が主体となる中世ヨーロッパの様なお城の建った国もあれば某有名小説の様にホウキに乗った住人が居る魔法都市。近未来的でネオンに囲まれた全自動機械で動く都市もある。殆ど何でもありのゲームなのだ。


 最初は当たったから冷やかしてみるか程度にしか思っていなかった。キャラクタークリエイトもデフォルトのままでやったし、正直右から左へだった。

 今でも思い出せる。あの草原に立った時に髪をなでる風の温度。

 お使いクエで行った火山地帯のマグマの熱気。

 即席PTで挑んだ海洋ダンジョンボス戦での手に汗握る戦闘。

 天空の島で罠に落とされ、地上に落下している途中に感じた玉キュン。


 俺はこれと出会うために生まれてきた。そう思った。


 β期間である1週間は寝る間も惜しみゲームに明け暮れた。βが終わった途端に何か大事なものを無くしたかのように俺の中にぽっかりと穴が空いたようにも感じた。


 ゲームの情報を只管集め、発売されるまでに全ての障害を取り除く。すぐさま行動に移した。今まで遊んできたゲームの続編が出ようが、夏の祭典があろうが、合コンに誘われようが全てを断った。授業を入れられるだけ入れ、鬼のように勉強し判定は全てA以上。バイトだって3つも4つもかけもちし、家に帰ってもPCを点けずに寝るだけの生活が続いた。


 そんなある日、待ちに待った情報が俺にもたらされた。バイト先へと向かう電車の中でスマホ片手にガッツポーズを決めた。女子高生に笑われたがそんな事など気にもならなかった。


 バイトで溜めた金を使い高性能PCを組んだ。ネットの回線だって契約を吟味して改めて選びなおした。食事の事も調べ上げ、栄養が偏らないかつ長期保存がきくものをネットで買いあさった。家はダンボールに入ったまま積み上げられた保存食で狭くなった。


 既にPCには事前DL(ダウンロード)したアイリスが入っている。あと5分。5分だけ待てば俺は再びあの世界へと戻る事が出来る。はやる気持ちに逆らえず既にベットに横になりVRアプリ専用ガジェットを頭に装着。高鳴る鼓動。


 ドクン、ドクン……


 心臓の音がいつもより大きく聞こえる。

 心なしか息使いも荒くなってきた。あと3分。


 ドクン、ドクン……


 胸が痛い。少女マンガなどである恋の病気の症状にかかったみたいだ。いや、事実かかっているのだろう。なんてアホな事を考える。


 ドクン!!


 猛烈な胸の痛みが俺を襲う。息が出来ない。

 視界には体の異常を知らせるアラートがガジェットを通して表示されている。


 「VRアプリケーションを終了し、病院へと連絡します。速やかにガジェットを取り外して下さい」


 ポップアップの後ろにはアイリスのオープニングムービーが流れている。

 

 これの為に俺は全てを捨ててきた。なのに何故……今なんだよ。

 そして唐突に俺の意識は途切れた。

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