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第二章『前代魔王の死』:-003-

 オレ達の目的地はあの有名な「伏見稲荷大社」がある山。つまりは稲荷山の奥深くに魔界への転送陣があるらしい。新幹線に乗っている間、行き先を聞いて置かなければ今頃まだあの場でオロオロしていたに違いない。

 今オレはその稲荷大社の本殿の下で犬耳娘が起きるのを膝枕してやりながら待っている。すぐに起こせば続けて進めるのだが、この待ち時間はオレの休憩もかねていた。京都への旅路を含めた勇者からの逃避に多くの体力を使いすぎてしまっていたのだ。本当はもうここで彼女と野宿してしまいたいほど疲れているのだが、そんな訳にはいかない。

 唯一の救いはオレが本殿までおぶって歩いたのだが、犬耳娘の体重はとても軽く、おぶるのに大して力は必要としなかった事と、駅からこの神社まで大して距離がなかった事だ。

「おーい、そろそろ起きろー」

 呼びかけても起きる気配はない。

 そう言えばコイツの耳は一体どうなっているのだろう、とモミアゲをかき分けるが、そこに人間の耳はなかった。代わりに、その部分から直接毛が生えていた。犬の耳がそのまま頭に付いているから謎である。耳が付いていない人間と言うのは結構不気味に感じてしまう。しかし、そんな不気味な感じとは裏腹に好奇心が湧き上がってしまい、その柔らかそうな犬耳を触った。

「おお……ふわっふわだ……」

 触ってみた犬耳は、彼女が子犬だった時の本物のそれと変わらず、高級ティッシュを何枚も重ねた様にふわふわだった。いつまでも触っていたいが、子犬だった時はしつこく触ると嫌そうに逃げていってしまっていた。今は眠っているので触りたい放題だ。

 尻尾はどうなのだろうと腰周りを見ると、ジーンズがずれていて、お尻が少し見えてしまっている。白く、柔らかそうな子供肌に胸が高鳴る。いかんいかん。尻ではなく尻尾を見なければ。

 そんな彼女の尻尾は髪の毛と同様に白くふわふわで、触り心地がとても良かった。なんというかコレを抱きまくらにして毎日寝たい。そんな感触。

 付け根ってどうなってるんだろうとブレザーを少しずらすと、なんだかイケない事をしているような気分になってしまう。見るだけ、見るだけと自分に言い聞かせる。腰より少し下の部分から普通に尻尾が生えている。出来心で生え際を触ると――

「……んっ…」

 喘ぎ声に似た甘い吐息が犬耳娘から漏れた。その声がエコーしているように耳に残る。気付かれたかと思い、背筋が凍ってしまう。しかし、目はまだ瞑っていて起きた様子はない。どうやら声が溢れてしまっただけのようで安堵する。まだ触ってみたいと言う気持ちを抑え、意識転換の為に自分の頬をビンタする。こんな事をしている場合じゃない。

「おい、起きろ!神社についたぞ!」

 と、今度は体を揺すって起こす。全く、こんな状態はかなり危険だ。間違いを起こしかねない。

「んー……」

 寝返りを打っただけで、顔をオレの腹の方に向ける。すぅすぅと言う寝息が腹に当たり、擽ったい。本当は起きていて、その無防備な姿はオレのことを誘っているのではないかとさえ思ってしまう。

「おきろー、ここから何処行けばいいかわからんぞー」

「ん……主……」

 今度はオレの腹に顔を擦り付けてきた。可愛い。悪い気はしないが少し興奮してくるので早く起こさないと。と言うかオレの服で涎を拭うな。

「起きろ!!」

 そう耳元で言って、尻尾の付け根をギュッと握る。

「ひゃうわぁあ!!」

 良くわからない叫びを上げて犬耳娘が飛び起きる。身体と同時に尻尾はピンッと立ち上がり、顔を真赤にしてオレを怒った顔でオレを睨んできた。

「し、尻尾の付け根は反則ですよ!」

 と訳のわからぬ事を言う。何が反則なのかさっぱりだ。普通に起こしても起きなかったお前が悪い。


投稿日が少しずれましたね。来週から月、水、土に戻します。

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