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(リー君、今大丈夫?)
寝ようとしていたらフランから念喋がきた。
(大丈夫だけど、どうかしたのか?)
(用はないんだけど、…何か胸騒ぎがしたの。)
(それって大丈夫なのか?何かよくないことが起きるとか…?)
(そういうのじゃないんだけど…、私にとっての胸騒ぎ?)
(なんだよそれ。)
(んー、シェリーとお姫様と何かあった?)
なんでいきなりそんなこと聞いてくるんだ。
(いや、別にいつも通りだけど?あぁ、そういえば公爵一家と迷宮に潜ることになったな。)
(いつも通りが一番危ないんだけど…、迷宮?)
(うん、なんか腕試し?みたいなのでお祭り騒ぎしながら潜るんだってさ。)
大体合ってるから困る。
(それって大丈夫なの?)
(まぁ、そりゃ迷宮だから危険は多いだろうけど。)
(そっちじゃなくて…、リー君の立場的に?)
あっ、私の心配はしてないんすか。そうですよね。
(そっちは色々手をうってるから大丈夫だと思いたい。…失敗したら、そっちの村に逃げ帰るからよろしく。)
(ふふふ、リー君らしいね。)
(そっちの村は変わりないか?)
(うん、いつも通りだよ?…お父さんがいつも通りうるさいくらい。)
(あの人とティスカ公会わせたら凄く面白いことになりそうなんだが…、ダメだな。会わせちゃいけないわ。)
男二人が俺を間接的にだけど取り合って殴り合いしそうだわ、そんな歌あったけど登場人物全員男とか誰得だよ。
(こっちの仕事が終わったら一回そっち戻るから、またその時よろしくな。…新技も色々と披露してやるよ。)
(また皆がびっくりしちゃうよ?)
(それが面白いんだよな。)
(本当にリー君らしいね。)
なんだろ、この実家に戻ったような安心感。幼馴染強い。
しばらく他愛もない会話をして、フランとの会話を終えた。
(リード、聞こえるか?)
(おっ、久しぶりだな。エンちゃん、なんかあったのか?)
フランとの念喋が終わった瞬間にエンヴィスからもきた。久しぶりだ。
(ちょっと色々あってな、すまんがこの会話もすぐに終わるかもしれん。)
(なに?妨害されてんの?)
(我自体に影響はないのだが…、少し厄介でな。)
(んー、俺も今すぐに動ける状態じゃないからな。助けられないぞ?)
(いや、大丈夫だ。我に直接危害が加わるものではない。それよりもお前の方が心配だ。)
(え?なんで俺。)
(すま…我の…光竜…、くっ、またか!)
(どうした?大丈夫か?)
(だい…気を…勇…。)
(おーい、もしもーし。)
念喋が途切れてしまった。うーむ、なんだったんだろ。エンヴィス自体は大丈夫って言ってたけど。
むしろ俺のが危ないって言ってたけど、さっぱりだな。
こうしてエンヴィスとの会話が出来ない以上考えるだけ無駄か。
精々なにかわからんけど気を付けよう、結構慌ててたしな。
若干の心配事もあったがその日はゆっくり寝ることが出来た。
窓から入ってくる日差しが眩しい、そっとシェリーを起こさないように起きていつものように窓から外に出る。
今日は開会式があるとか言ってたな、午後からなんだろうか。とりあえず日課でもこなすか。
準備運動という名の素振りや空を跳びまわってみる。
昨日は剣を振る機会があまりなかったが素振りをしてるとその重さがよくわかる。
木剣を使ってた頃に比べて振りにくいと言うか、若干のラグがあると言うか。
まぁ使ってればそのうち慣れるだろう。
そこそこ運動してると続いて銀も起きてくる、そして二人でじゃれあいという名の運動をする。
しばらくしてシェリーが起きて窓を開けてその様子を眺める。
いつもの風景だ。
「さて、買い物にいきましょうか。マスター。」
「そうだな、髪飾り買わなきゃな。」
一晩たって忘れてるとはいかないか。
「一応、ティスカ公に開会式がいつか訊いてくるか。…気が進まないけど。」
レイが昨日来たときに教えてくれればよかったのに、あのうっかりさんめ。
「まぁ、大体午後からだと思いますよ?メイドにでも訊けばいいんじゃ?」
「その手があったか。」
部屋から出て適当なメイドを捕まえて開会式の時間を訊く、やはり午後からのようで今はその準備に追われてる感じだ。
「時間もわかったし、街にいくかー。フライングで店とか出してそうだし、朝ごはんも向こうで食うか?」
「昼ごはんも向こうになりそうですし、朝くらいはこちらで食べては?」
「街に行くと気軽に喋れなくなるので朝ごはんはこっちで食べたいです。」
「それもそうか、食堂いくか。」
シェリーと銀の意見に賛成する。確かに銀は犬のふりしなくちゃいけないし、大変だな。




