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「…召喚しないんですの?」
「ちょっと準備がいるんだよ。ちょっと待っときんしゃい。」
あとは職業を精霊術師見習いに変更っと。
「よし、では。改めまして…。」
魔力を練る、とりあえずは呼び出す事に全力で呼び出そう。
最初が肝心だって言うし、あとは寝るだけだ。魔力の殆どを込めてしまっても大丈夫だろう。
「我の呼びかけに応え給え、サモン!!」
雰囲気が大事。出来るだけ低い声で壮大に呼びかける。魔女がツボの中の薬をかき回す時にお上品な笑い方してたらダメだろ?そういうことだ。
まずは水の精霊を呼び出そう、そう決めていたのでそのように念じて呼びかける。
水の球体が現れた、最初は小さな球体だったが時間が経つにつれて大きくなっていき、ついには大人二人程の大きさになった。
そしてその球体が破裂して、中から水の体を持った女の人が現れた。
「ふっ、私を呼び出すとは。何年ぶりだろうな?一体どれほどの人数を…。」
その精霊は目を瞑ったままそういいつつ目を開け、途中で言葉をなくしてしまった。
「え?子供だけ?…それにお前は妖精か?」
「あら、気がつくのですか。」
シェリーが妖精だって気がつくんだな。今までなかったけどこれは相当期待できるんじゃないか?
「私を呼び出したのはまさかお前か…?この人数で?」
「え?うん、そうだけど?いや正確には俺一人だけど。」
「は!?ちょっと待て、一体どれだけの魔力持っているのだ!私は水の精霊の王だぞ、それを一人で呼び出せるなんて…。」
大当たりすぎる。このシースルーお姉さんは水の精霊の最上位らしい。
愕然とした顔をしてる水のお姉さんが少し面白い。
「それほどでもない。…一応自己紹介しておこうか。俺はリード、そっちはここのお姫さんのレイ、んで妖精のシェリーと犬の銀だ。」
「ちょっと主様!」
「あぁ、すまん。さっきの癖で…。」
流石の銀もこれにはおこだったらしい、まぁ間違えた俺が悪いけど。
「あ、あぁ、私はウンディーネだ。…え?待った、何故ここにケロベロスがいるのだ!?」
「あっ、銀の事?」
「ケロベロス!?銀ちゃんバトルウルフじゃなかったんですか!?」
「え?ケロベロスって?え?あの神話に出てくる?」
あれ、なんか皆めっちゃ驚いてる。そういえば言ってなかったっけ。
「はい、別に言うような事でもなかったので。」
そしてすまし顔の銀、うちのパーティーのクール担当は伊達じゃないな。
「はっ!?もしかして使役しているのか?いやいや、おかしいだろ。」
「使役してるって言うか、使役したときになったと言うか。」
「マスター、なんで言わなかったんですか。ケロベロスって言ったら相当ですよ?狼の中じゃ最上位ですよ?」
「え?そうなの?」
「リード…、なに言ってるんですの。物語に出てくるんですのよ?実物なんて今だとどこにもいないでしょう、むしろ目にしたものが生きてるなんてことありませんわ。」
そんな存在だったのかよ。確かに元の世界でも地獄の門番だったけども。こっちじゃその常識通じないだろうと思ってスルーしてたわ。それに三首じゃないし。
「それほどの魔物使いの能力を持っていて、尚且つ私を呼び出す程の精霊術師の才能もあるだと…?いや、違うか。膨大な魔力が一番の原因か。」
流石だ。シェリーと銀の正体も見抜いたし、俺の魔力に対して理解も早い。…やりおる。
「それで、どうするのだ?」
「え?どうするって何が?」
「もしかして何も知らないのか?お前の師匠的なのはいないのか?」
「えっと、召喚の方法だけ聞きました。」
正直に言うしかあるまい、だってなんにもしらないもん。
「…こんな精霊術師のなんたるかもわかっていない子供に召喚されるなんて。他の王達になんて言えばいいのだ…。」
やっぱ他にもいるんだ。
「召喚されちまったもんは仕方ないだろ?それで、何かやることあるの?」
「契約があるのだが、…契約をしたら自由に呼び出せるのだ。」
「ほー、んでそれはすぐに出来るの?」
「それは私とお前次第だが、…正直、ケロベロスを使役する者に勝てる気がしない。それにお前自身も相当強いのだろう?」
「あぁ、勝負に勝ったら方式なのか。まぁ、流石に銀程じゃないけど強いよ?」
「またまた、主様は我よりも全然強いじゃないですか。」
「別に謙遜してねぇよ。お前たちが思ってる程俺強くないからな?」
「マスターが強くないとかどんな考えしてるんですか。マスターはもうちょっと自分が強いってことわかったほうがいいですよ。」
「確かに、リードが軍隊と戦っても負ける図が浮かびませんわ。」
そりゃ能力的に劣っててもやり方次第で勝てるんだろうけど、正直能力だと銀のが強いぜ?




