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「なんにせよ、二人からは学ぶことが多いだろうからしっかり戦い方を見ておくんだよ。」
「そうっすね。」
結構前から返事が投げやりだ。まずテンションの差がすごいあるからな。
「そうかー、ティスカ公と一緒にかー。」
まだ言ってるんだけど。
「ふふふ、この人ったら前からティスカ公と一緒に迷宮に潜りたがっててね。ティスカ公の話題になると子供みたいになるの。」
アンジェがお皿を運んできてそう言った。
「仕方がないさ、俺もクランの事がなかったら公爵の誘いを受けたかったからな。…本気で悩んだからな。」
まじかよ。誘われたのかよ。今の立場で正解だよ、絶対こき使わられてただろうし。
「あっ、皿出しくらい手伝いますよ。」
「いいのよ、お客さんなんだもの。ゆっくりしていて。」
ミストから逃げようと思ったのに無理だった。
「あー、あの話をしてあげよう。…昔まだ俺が駆け出しだった頃なんだが。」
「またその話ー?聞き飽きたよー。」
「まぁ、そういうなって。」
ミストが語りだそうとしてレックスがまたかみたいな顔でそれを遮ぎろうとする。
まぁなんか普通にティスカ公の部下に助けられた話だった。…話的にマーカスっぽかったな。
ミストの話を聞いていたらアンジェから料理が出来たと声がかかった。ちょうどよかった。
5人と1匹でテーブルに座り話しながら夕食を食べる。料理の味は文句なしでおいしかった。
毎回誰かしら呼んで作ってるので自然と料理の腕がうまくなったそうだ。
他愛もない話ばかりだったが、ほぼ初対面の人たちでこうするのはレイたちの時以来か。そう考えると結構時が立つのは早いな。
食後にデザートでシェリーが食べてたものと同じものが出てきたが、シェリーはまたそれを食ってた。体形変わらないからってずるいよな。
「さて、そろそろ帰りますね。」
食事をして、ある程度ゆっくりしてからそう切り出した。そろそろいい時間だし明日もやることがあるだろう。
「…そうだな、疲れが残ってると危ないからな。」
「えー、もっと銀と遊びたい。」
「また来ますから、ね?」
「本当に?絶対だよ!」
レックスが少し駄々をこねたがシェリーがなんか勝手に決めて収まってた。まぁいいけどさ、やることなかったらだけど。
「悪いね、…いつもここに来るのは大人ばかりだからリード君みたいなのは珍しいんだよ。よかったらレックスと友達になってくれないかな?」
ミストがそう言う。
「ん?いや、それはミストさんが言うことじゃないでしょう?…レックスはどうしたい?俺と友達になってくれるかい?」
「えー、…しょうがないな!なってやるよ…。」
ちょくちょく話したが生意気なだけで基本的にいい子だ。
「…、まぁそれじゃあ俺たちは今から友達だな。もちろん、シェリーと銀もな。」
そう言ってレックスと握手をする。なんだろ、この感じ。普通の人やってるのなんていつ以来だろうな…。
「ありがたいよ、…ありがたついでにクランに入るの考え直さないかい?」
「別に俺がなりたいからなっただけで。後その話はもう終わった話なんで…。」
「まぁ、そっちは期待してなかったけどね。」
益々惜しいと思ったんだろう、多分最後になる勧誘だ。もちろん、きっぱりとお断り。
玄関で三人にお別れを言う。
「それじゃあ、お邪魔しました!」
「どういたしまして。…そうだ、もし俺に会いたいならギルドに伝言を残しておくといい。それにレックスと遊ぶ時に伝言を残してもいいぞ。」
「了解しましたー。それではー。」
手を振って城への道を帰っていく。正直こんな一日になるとは思わなかったな。
「色々喋ってましたが大丈夫なんですか?」
「まぁ大丈夫だろ、別に悪い人じゃなさそうだしな。」
「…やっと喋れます。」
「お疲れ様、銀ちゃん。」
「お疲れ、銀。」
「思った以上に疲れますね、子供の相手するのって。」
「まぁ、子供はパワフルだからな。…ていうか俺も子供だけどな?」
「そういえばふと思ったんですが、マスターって歳の割りに落ち着いてるっていうか変に大人なとこがありますよね?」
「そう?やっぱり俺って天才だからさ…。」
「うわうざ。」
「ありがとうございます!!」
「主様達とのこのやり取りも何回目なんですかね。」
帰り道はみんなでワイワイ喋りながら帰る。その途中に広場に出たがもうほぼ準備は終わってるみたいだった。
なんか壇上みたいなのがあるけどなんか演説みたいなのするのかな。我々は今から迷宮に潜る!みたいな。




