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「お帰りなさい。今日も、の間違いでしょ?」
扉の奥から女の人の声がする。どうやら、結構な頻度で人を呼んで食事しているらしかった。
「お父さん!今日はどこに行ってたの?」
「今日はそんなに面白い話はないぞー。…しいて言えば面白い人たちと依頼をこなしたってとこかな。」
ミストは飛び出してきた弾丸、もとい男の子を抱きかかえながらそう言った。
この子がミストの子供なんだろう、ミストと同じ橙色の髪の毛が揺れる。
「この人たち?…まだ子供じゃん!」
「お前もガキじゃん。」
「なんだとー!」
ミストの子供が食って掛かってくる、挑発したのは俺だけどな。
「こらこら、レックス。挨拶しなさい。」
「ふん!俺はレックス、将来はお父さんみたいな冒険者になるんだ!」
ほう、立派な目標で何よりだな。
「俺はリード、将来は…どうなんだろうな?」
「私はシェリー、この子は銀ちゃんですわ。」
将来なんて考えてなかったわ、シェリーも挨拶をして銀もしっぽを振って挨拶をする。
「うぉー!犬だー!」
「あらあら、今日は随分小さなお客さんね。私はアンジェ、よろしくね。」
扉の向こうから女の人が顔を出す、水色の髪の綺麗な人だ。
「こんばんわ、急にすいません。今日はお世話になります。」
「いつものことだがら大丈夫よ。」
ニコリと笑いながらアンジェはそう言った。本当にいつものことなんだろう。…尻に敷くタイプには見えないな、てことはミストの行動は優しさから来てるのか、出来る奴だわ。
「この子が前言っていた詩人候補の子?」
「あぁ、そうなんだけど見事に断られちゃってね。仕方がないことだけど。」
「あら、クランにいれてないのに呼ぶなんてよっぽど気に入ったのね。」
ミストとアンジェが帰ってきた挨拶なのかハグしながらそんな会話をする。リア充め…。
「この犬全然吠えないね。」
「ちゃんと躾ができてるんで、それに言葉もわかるんですよ。銀ちゃん、ジャンプ。」
レックスは銀を撫でて見ていたがシェリーの一言で銀がレックスを飛び越えるジャンプを披露する。やりすぎな気がするけどまぁいいか。
「うぉー!すっげー!スーパー犬だ!」
「私たちの自慢の仲間ですからね。」
シェリーが胸を張ってそう言う。うちで一番真面目で強いのは銀だからな。
「さぁ、こんなとこで話してるのもなんだから入ってくれ。…アンジェ、これで夕食を頼む。」
ミストは買ってきたものが入っている袋を渡しながらそう言った。
「リクエストはあるのかしら?」
また一連の流れを繰り返す、ここは安定してんな。
レックスが銀と遊びながら家の中に入っていく、ミストとアンジェも入っていったので俺とシェリーもそのあとに続いた。
「お邪魔しまーす。」
家に入ると外見とは違って質素な作りになっていていい感じだ。あまり物が置いてないのは人が結構出は入りするからだろうか。
リビングと思われる場所に案内されるがそこには大きなテーブルと椅子が何個も置いてあった。完全に来客を想定した作りになっていた。
「ふふ、この人ったら毎日人を呼ぶもんだから一々片付けるのもなんだからって自然とこうなっちゃったのよ。」
毎日呼んでるのか、なら納得だな。
「適当に座って寛いでくれ。」
ミストがそういったので端の方にある椅子を選んで座る。シェリーも横の椅子に座った。
少しは手伝いをしたほうがいいかと思ったが自慢じゃないが俺は料理なんて作れないからな。
「そういえばシェリーって料理出来るの?」
「出来ると思いますか?…作れって言うなら作りますけど。」
「まぁ、そうだよな。」
フランはお母さんの手伝いをしてたので狩りしてる時に毎回お弁当とか作ってくれてたな、シェリーは元々ってか今もだけど妖精だからな。自分で食べないのに作りはしないだろう。それにずっといたから分かるけど作ってるとこ見たことない。セリーの手伝いくらいはしてた時はあったけど。
銀はまだレックスに捕まってた、でも嫌そうな顔はしていなかったので良しとする。銀も面倒見がいいんだろう。
「ねー、他に特技とかないの?」
「銀のか?んー、…逃げ足が速い。」
「それだけ?」
「いや、あるっちゃあるんだけど…。」
「見たい!」
レックスが銀について聞いてくるけどうまく答えれねぇ、ほぼ戦闘に特化してるからな。…今度までに何か芸を仕込んでおくか、玉乗りとか。
「あー、また今度な。」
「えー、まぁいいや。」
少し悲しそうな顔をした銀がこっちを見てる、しょうがないだろ。戦闘系の特技抜いたら足が速いくらいしか言うことないんだから…。
よし、今は9月2日の25時だな。ぎりぎり毎日更新に間に合ったな。




