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「俺はこれで前衛で戦うからね。フォーメンションはこんな感じかな?」
ミストが前、後ろに俺とシェリー、そしてシェリーの横に銀。バックアタックはまぁしょうがないな。
「いいんじゃないですか?」
「じゃあ早速森の中に入ろうか。基本的に奥にいかなければそう強力な魔物はいないはずだ。」
そう言って森の中に足を踏み出すミスト。
フラグかな?と思いつつも俺が気配探ってればそうそう危険なやつに会うことはないだろう。いざとなったら本気出して逃げればいいさ。
そう考えながらミストの後に続いて森の中に入っていった。
「ふぅ、…大丈夫かい?」
「いや、大丈夫も何もほとんど何もしてないですし…。」
実際ミストは強かった。ゴブリン相手に無双するもんだから俺の出番はほぼない。
シェリーも普通の魔法を使って支援してるので俺の出る幕はないに等しい。
「ははっ、まぁゴブリン相手だとそうなるよね。…試しに詩人らしいことをしてみたらいいんじゃないかな?」
それもそうだな、ここまでボーッとついてきてるだけでゴブリン10匹くらい倒してるし。
「んじゃ、歌と楽器。どっちがいいですか?」
「どっちでもいいんだが…。」
「私はリード君の歌が聞きたいですね、このところ歌ってませんし。」
「そういやそうだな。この頃は歌ってなかったか。」
「…詩人なのにそれでいいのかい?」
「あっ、…楽器の練習で忙しくてってことですよ?」
流石ミスト鋭い、さっきから妖精を召喚してる感じもしないし。警戒されてんのかただたんに楽勝すぎて出す場面がないのか。
「まぁ、気を取り直して。…いきます!」
カラオケに言ったら一曲目にこれを入れたい。電子の歌姫が歌うカラオケ一曲目を歌う。
場違い感が半端ないけどそれなりに魔力を込めて強くなれーと念じながら歌う。
「…どこの言葉かわからないが、これはすごいな…。」
ミストが自分の体の具合を確かめながらそう言う。
やばい魔力込めすぎたか、未だに色々な加減がわかんねぇんだよな。
「…、はい。お粗末様でした。」
パチパチパチとシェリーが拍手をしてくれる、銀もしっぽをパタパタさせて拍手してるみたいだ。
「詩人として十分じゃないか、歌もうまかった。…そして何より魔力の込め方が初めてとは思えない程うまかった。」
すいません、魔法使うのにいつもこめてんすよ。なんて言えるはずもない。
「いやー、師匠が歌を歌うのは気持ちだって言ってましたからね。その気持ちの部分を魔力にしてみたんすよ。」
嘘八百とはこのこと。
「ほう、そんなコツがあったとはな。…天職なんじゃないか?」
「お、おう。」
簡単に信じられてしまったのはちょっと意外だ。まぁ他の職のことなんてよくわからんだろうからな。
「それでどうなったんです?」
自分の歌の効果がよくわからん。正直歌のチョイスはおかしかったしましてや魔力の込め方も雑だ。
「申し分ないな。…ゴブリン退治にはもったいないくらいだ。」
いい感じらしい、具体的に何が変わったのか教えてくれないのがいやらしい。
「…全体的に強化されてるらしいですよ。」
こっそりとシェリーが教えてくれる。なるほど、ステ強化ってことか。効果時間とかどんなもんなんだろ。そっちに魔力あんまり込めてないからわからんな。
「…強いて言うなら歌が長いかな?普通は詩の一節とかを歌うんだが。」
あー、そこは盲点だった。そりゃどんな素晴らしい歌でも戦闘中に歌ってる程悠長なことしてられんわな。
俺の場合はこっちの詩とか知らんからそれを歌う事は出来なさそうだ。自分たちに支援するときは効果時間に魔力を込めて、長く続くようにしよう。
そうすれば安全なとこで歌って支援、そして突入。うん、大丈夫だろう。
次は楽器でも試してみるか。効果時間を長くするとかそういう小細工はミストがいるから無理として、色々試してみよう。
結論から言うとなんのトラブルもなくゴブリン退治は終わった。
ミストが精霊を見せることもなく、俺がボロを出すこともなくだ。
途中後ろから魔物が来ることが度々あったがシェリーに念喋で教えて撃退してもらった。
その時に少しだけ前に出て剣を振るったがそれだけだ。別に思いっきり振るう事はしなかったし、ただ足止めに徹しただけだ。
詩人の方は普通の詩人らしいことが出来たと思う、楽器で敵を弱体化させたり、また味方に支援をかけたり。あとは魔力を込める度合いを調整すれば完成だ。
○ンさんのテーマを口笛で吹きながら蹴りで真上に吹っ飛ばしたい、それに○ミさんのテーマを楽器で引きながらもう何も怖くないとかいいながら魔法で敵を蹴散らしたい。
そう考えると詩人やばいな、セルフBGMで色々な再現が出来るじゃねぇか。便利…ではないが俺にしては凄くいい職業だ。
「さて、今日付き合ってみてどうだったかな?こんな風に仲間と共に依頼をこなしてく、その仲間がクランの連中ってことなんだけど。」
ミストが本題に入る。




