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「まさか…マスター…、私がいるのに…。」
「あん？別にシェリー関係なくないか？」
別にシェリーがいてもいなくても戦いの経験とかには影響ないような。
「いくら私が誘っても応じないくせに！」
「何言ってんの？別に誘われてなくない？」
「あれでもまだ誘いじゃないってことですか？もっと過激にいかなくちゃ…。」
どういうことだこれ、わからん。
「あー、そういうのは俺たちのいないとこでやってくれ、な？」
「んん？どうしてだ？別に経験なら誰でも出来るだろ。」
「まさか狙われてる！？」
「そりゃティスカ公強そうだし、少しはやってもいいと思ってるけど。」
「やばいやばい…。子供だと思ったらこいつ怖い。」
「いやいや、何回も見てんだろ。今更なんだよ。」
ティスカ公が微妙に目線をそらしてる、流石にいきなり戦いはしねぇよ。
「…わたくしも対象に入ってますの？」
何故かまだ赤面しながらレイも訊いてくる。
「いや、お前とは何回もやってるしなぁ。俺が得るものは別にもうないかな。」
「うぇ！！？何回もってどういうことですの！？」
「おいリード、そりゃちょっと話が早いぞ！」
「ちょっと気が早いのではなくて？そういうのは話をもう少し進めて…。」
「マスター！いつの間にそんなことを！」
ティスカ公とクラウ夫人とシェリーが口を挟んでくる。
「いやいや、ちゃんと許可もらってたじゃん。シェリーも見てたし、何いってんの？」
「アナタ！どういうことですの！？」
「いや俺は知らんぞ！許可なんて与えてないし！」
「…何回も…しかも見られてる…わたくしの知らない間に…。」
「そんなの見てるわけないです！見てたら止めますよ！」
「はぁ？お前も参加してただろ！」
ティスカ公とクラウ夫人が争い始め、俺はシェリーに何故か詰め寄られる。レイは下向いてブツブツ言ってるし、銀は欠伸してる。
なんだこれ、どんな状況だよ。
「許可あげるなんてアナタの仕業しかないでしょ！」
「いや本当に俺はしらんし！俺も狙われてんだぞ！もしかしたらお前も狙われてるかもしれん！」
「マスター！私も今夜やりますからね！」
「はぁ？なんで夜なんだよ。お前とも時々訓練してるだろ。」
「「「訓練？？？」」」
三人程ハモって聞こえる。レイはまだブツブツ言ってる。
「マスター？訓練って？」
「そりゃ戦闘訓練だろ、他にも魔法の訓練とかで経験してんじゃん。」
「…あぁ、なるほど。そっちか。」
「私はわかってましたけどね。」
「マスター…。もうちょっと言葉に気をつけましょう。」
何故かみんな疲れたような顔してる。なんなんだ一体。
「何と勘違いしてたんだよ…。…あぁ、なるほど。経験値って概念がねぇのかこっちは。」
最後は自分にいい聞かせるように呟く。ネトゲ基準で考えてたわ。
「とにかく、俺が欲しいのは新しい事を経験したいってことだな。…そうだな、迷宮職人にも興味があるし、闇魔法の使い手にも会ってみたい。」
今の自分に足りない職業をあげていく。とりあえず今あるスキルは使えるようにしたい。
「そのへんをどうにかしてくれるなら別に行っても構わんよ。」
「ふむ…、なるほどな。」
ティスカ公がサッと表情を真剣な顔に変えて呟く。
「闇魔法については俺は知らん、だが迷宮職人には会えるな。…他にはないのか？」
「あー、召喚士と精霊使いにもあってみたいかな。」
他には別にないな、お金があったら自分用の剣を作るために商人に材料を提供してもらいたいくらいか。
「…その二つもちょっと当てがないな、なんでそんなマイナーなのばっかり選ぶんだよ。」
「知らねーよ、迷宮職人だけじゃちょっと弱いな。…なんか珍しい鉱石あったらくれね？」
「鉱石か、何に使うか知らんが。…ならミスリルはどうだ？魔法がよく馴染むらしいからお前にぴったりなんじゃないか？」
ふむ、ミスリルか。トールのとこにはなかったな。RPGだと中盤とか終盤で出てくる武器に使われてるしいいんじゃないか？
「よし、それで手を打とうか。迷宮職人と会わせてくれるのとミスリルを…、そうだな。このくらい欲しいんだけど。」
そう言って手で量を示す。大体３０cmくらいの四角を作る。
「お前無茶いうな、それだけあったらいい土地に豪邸が建てられるぞ。…その半分でどうだ？」
相当高価だった。二刀流あるから二本くらい剣作ろうと思ったけど一本で我慢するか。
「わかった。いや、まった。先にそっちの詳しい話を聞いとかなきゃな。」
危ない、どんなことやらされるかわかったもんじゃない。
「チッ、惜しい！」
ほら、こういうとこが怖いんだよ、この公爵様は。
