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そんなある日。
何故か俺の部屋にティスカ公とクラウ夫人とレイの三人が集まった。
「あー、困ったなー。」
「本当に困りましたわー。」
「どうなってしまうんでしょー。」
「どこかに(チラッ、頼みを(チラッ、聞いてくれる(チラッ、人は(チラッ、いないかなー。(チラッ」
「茶番やめーや。こっち見んな。」
なんか厄介事持ち込んできやがったな。公爵うざすぎ笑えない。
「マスター、これって新手の漫才ですか?」
「知らん、ただ絶対面倒事だぞこれ。」
「はぁー、誰かこの悩みを聞いてくれる方はいないのかしら。(チラッ」
レイまでこっち見んな。部屋の中ウロウロしながら三人やるんじゃねぇよ。邪魔だよ邪魔。
「…よし、一応聞いてやろう。」
「おぉ!リードじゃないか!ちょうどいいところに!」
「黙れ!思いっきり俺の部屋じゃねぇか!いやそりゃ公爵の城の一部だけどさ。」
「話を聞いてくれるか?」
「聞かねぇとどうせ延々と続けるんだろ?いいから早く話してどっか行け。」
今の時間はまだ朝だ。いつも通り運動をして部屋に戻ってきて、さぁ朝飯行くかってときにこの茶番である。
滅茶苦茶いらつく。
「まぁまぁ、ここじゃなんだし。朝飯でも食うか?」
「そうね、それがいいわ。」
「メイド、朝食の準備をお願いしますわ。」
「かしこまりました。」
ほら、この一連の流れ。絶対仕組まれてるよ。
「はいはい、くっそめんどくさいことこの上ないが は な し だけ聞きますかね。」
「流石リード、話がわかるな。さぁ行くぞ!」
朝からテンションたっけぇんだよな。このおっさん。
「それでな、話ってのはな。お前迷宮潜らない?」
「却下。」
今までどおりに断る。ちょっと殺気出しながら。
「まぁまて、慌てるな。ちょっと今回のは事情があるんだ。」
「ほう、一応話聞くって言っちゃったからな。話してみろ。」
「これ立場逆じゃない?俺公爵だよ?」
「シェリーと銀、お昼まで街で遊んでこようぜー!」
「私前食べたあのふわふわして甘いやつが食べたいです。」
「そういえばそろそろ散歩しに行きたいですね。」
「リード様、お話を聞いてくださいませんか?」
シェリーと銀とのコンボが入ったな。ティスカ公が頭下げてくる。
「お、珍しいな。結構深刻なの?」
「そうですわね、正直私たちでは厳しいでしょう。」
そう言ってクラウ夫人が頭を抱える。あれこれ演技か素かわからん。
「レイ、どうなの?」
「え?そ、そうですね。わたくしもそう思いましゅわ!」
演技や!これ絶対演技や!クラウ夫人舌打ちしてるし!
「レイ…、なんでそこで…。」
「こっちに話が飛んでくるなんて思ってませんでしたので…。」
「んで?そのリード様の貴重なお時間を使って茶番してどんな話を公爵様はしてくれるのかな?」
笑顔を作りティスカ公を促す。
「いや、待って!結構割とピンチなんだって!実はな、何年かに一度やってるお祭りみたいなのがあるんだが。」
「それが迷宮となんか関係あんの?」
お祭りってことはみんなで食ったり飲んだり騒いだりするあれだろ?村でもやってたからこっちの世界で違うってわけじゃないだろうし。
「お祭りなんだが…。迷宮に潜るんだ。」
「は?誰が?」
「俺たちが。」
「詳しく。」
「知ってるのか知らんが迷宮職人は数が少なくてだな。それの宣伝って言うか腕試し?みたいな感じでその職人が作った迷宮に我々公爵の一家が潜るんだ。」
「んん?それって大丈夫なのか?」
「そりゃ危険だが、むしろ迷宮くらい軽く潜ってもらわないと自分達を守ってもらえないだろ?民衆に力を見せる為にも必要なことだ。」
「なるほどな、んで俺がそれでなんで出てくるわけ?」
「今回の助っ人を頼みたい。」




