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「…僕の父親はそういうことは教えてくれない人だったからね、仕事は見て覚えるしかなかったんだ。」
「職人気質ですね、まぁ親父さんのやつ見てたらあぁなっちゃうよなぁ。」
良くも悪くも腕が良すぎたんだな、意識せずに色んなとこに魔力回してたらしい。
「まぁそんなこんなでどんどんいきましょうか。やって覚えろってことです。」
「よろしくおねがいします。」
そういって頭を下げるトール。まぁ俺としても教えて損はないだろうしな。色んな経験をするべきだ。
「…ここまでにしておきますか。」
「…そうだね。」
少し顔色が悪くなったトールが頷く。傍らには剣が10本くらい立てかけてある。どれもまだまだな代物だが前よりはマシだ。
「今日はありがとうね。君のおかげで大分いいものが作れたよ。…前に比べてですが。」
トールはうまくなってはいるものの自分の力量がわかっているようだ。よしよし天狗にならないのはいいことだ。
「今日で終わりってことはないんでちょくちょく見に来ますよ。…そういえばその出来上がった剣はどう整えていくんです?」
大事なとこ聞いてなかった。
「また教えてくれるのかい?正直助かるよ。形を整えていくのは錬金の魔法を使うんだけど…、使えるかい?」
「錬金なら既にマスターは使えますよ。わ た し が 教えましたから。」
「そーですねー。」
「はぁん?マスター、恩は感じてないんですか?」
「むっちゃ感じてる感じてる。」
このままじゃまた漫才にはいっちまうな。
「なるほど、出来上がったものに錬金で部分部分を付け足していくって感じですか?」
「そうだね、そうやってやっとひと振りの剣が完成するわけだけど。」
「方法がわかればあとは自力でやってみるか、そろそろお昼だし帰らないといけないしな。」
「帰るのかい?」
「うん、昼ごはんは街でまた買い食いしてすますとして。」
「やったー、また色々買ってもらおっと。」
「お肉が食べられますね。」
一気に賑やかになる、まぁかなり暇してたからな。トールに教えてる間のこいつらは。
「あ、このナイフもらってもいいかな?ちょっと自分で仕上げてみたいんだ。」
「もちろんさ、今日のお礼ってわけじゃないけどそれはリード君が作ったものだしね。」
そういってナイフをもらい宝物庫にしまっておく。材料集めて完成させよう、何かしら使えるだろうしね。
店の中に戻る。
「今日はありがとうございました。」
「こちらこそありがとうね、リード君のおかげで色々と助かったよ。」
「これで終わりってわけじゃないですからね、親父さんくらいの腕になってもらわないと。」
「ははは、リード君に言われると不可能じゃないって思えるよ。」
いやいや、俺が教えるんだからなってもらわないと、むしろ超えようか。
「それじゃあ、また来ますので。」
「ごきげんようです。」
「それでは。」
「うん、またお願いするよ。」
みんなで挨拶をして扉をあけて外に出る。店の中と違って外は人がいっぱいだ。いつかは店の中がこのくらいになってるのを見てみたいな。
「いい人でしたねー。」
「せやろ?わいの目には狂いはなかったんや。」
「なんでちょっと訛ってるんですか?」
みんなで買い食いしながら城に戻る。
「マスターが何かに首を突っ込むのはどうにかなりませんかね?」
「いやー、なんか面白そうなことには心ぴょんぴょんしちゃうからさ。」
「なんですかぴょんぴょんって。」
「主様はトラブルメーカーですね。」
「んー、トラブルに首突っ込みメーカーだな。」
「どっちのがマシなんでしょうね…。」
しょうがない、これは性分だからな。いくらチートな能力だってこれは変えられんさ。むしろ加速してる。
「それでもお前たちはついてきてくれるんだろ?」
「まぁそうですけど。」
「我は主様以外には使役されるつもりないですからね。」
ちょっと臭い言葉だったけどちゃんと答えてくれて嬉しいわ。
「流石俺の仲間だな。」
「まぁ使役されちゃったんで…。」
「シェリーは一言多いんだよな。」
「それが私の性分ですからね。」
そう言ってニコリと笑うシェリー、その姿でその笑顔は卑怯だわ。直視出来んわ。




