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「おいおい、そんな大金もって大丈夫かい?ぼくぅー。」
さっきまで冒険者ギルドの雑談場所みたいなとこで座って喋ってた男の一人が話しかけてくる。
テンプレかよ。
「そうだなー、俺らが預かってやろうか?」
ニヤニヤしながら残りの奴らも見ている。なるほど、確かにこいつらルールで縛ってもしょうがないな。
「いや間に合ってるんで。」
そういってギルドを出ようとする。関わらないのが一番いいな。
「おっと、まぁもうちょっとお話しようぜ?そこのお姉さんも一緒にさ。」
シェリーを見てニヤニヤしてる。おいおい、金だけじゃなくてシェリーも狙ってんのかよ。シェリーがゴミ見るみたいな目で見てんぞ。
「そうだぜ?俺らはクラン【漆黒の炎】の一員だぜ?逆らわない方がいいと思うけどな。」
「お姉さーん、クランってなんですか?」
聞いたことない単語が出たな。振り返って嫌な顔している受付の女の人に聞く。
「僕ちゃんはまだFランクだったから知らなかったのかな?クランってのは優秀な人の集まりだよ?わかるかなー?」
あぁ、ネトゲとかであるそのまんまか。ギルドとかクランとかコミュとかそんなもんだな。
つまり同じ目的をもって集まった奴らがクランってとこでそこからパーティを組むってことだな。
納得した。
「わざわざありがとうございます。ではこれで。」
「いやいや!お前状況わかってねぇだろ?」
そう言って仲間で囲んでくる。うわー、めんどくさい。
「シェリーどうする?なんか話したいんだって。」
「え?ゴミと話すとかどうやってですか?」
ストレートすぎるよシェリーさん。
「…あぁ?なんだって?」
つんと無視してるシェリー。マジで話す気ないみたいだ。
「…彼女もこう言ってるんで、それでは。」
「いやー、ちょっと頭に来ちゃったなぁ?」
そう言って腰の剣を抜こうとする。おいおい、マジでする?まぁ無魔法で剣と鞘ガッツリ固定してるから抜けないんだけど。
「あれ?抜けねぇ!」
「おいおい、何言って…、あれ?」
「くっ!なんだこれ!」
大の大人が5人程剣を抜こうと必死になってるのが笑える。
「もう用がないならいきますので。」
そういって足早に目の前の男の横を通っていく。
「てめぇ!」
殴りかかってくるがひらりと躱し、何事もなかったように歩いていく。
「それではありがとうございました。」
ポカンとしてる受付の女の人に頭を下げてお礼をすると扉をあけて外に出て行く。
流石に外までは追ってこないだろう。
「ぶっとばせばよかったのに。」
「そんなことしたら面倒になるだろ?それに相手の言ってた…、なんだっけクランの名前忘れちゃった。あれが厄介かもしれないしな。」
「主様なら大丈夫だと思いますが…。」
「正体不明の相手ほど怖いもんはないわ、油断はしちゃいかんぞ。」
「そういうものなんですかね…。」
流石に俺だって誰と戦っても勝てるとは思ってねぇよ。敵は少ないほうがいいからな。
「そんなことは置いといて、これでうまいもんでも食おうぜ!」
銀貨の入った袋をジャラジャラいわせる、その中から10枚ほど抜き取りポケットにしまう。残りは宝物庫にいれるとして財布が欲しいな。
「さっき見かけたんですけど美味しそうなシロップ付けが。」
「おう、買ったる買ったる。銀はさっきの串の肉か?」
「いいのですか?」
めっちゃさっきガン見してたやん。食いたいって言ってるようなもんだ。
「買ったる買ったる、値段見た感じ余裕だったしな。」
どれもこれも銅貨10枚くらいで済むものだ。わたしの財産の戦闘力は銀貨40枚ですよ?
さぁショッピングを楽しもうか。
かなり楽しんだ。
日常品も買い込んだし買い食いもした。銀貨10枚くらい使ったけど全然いいや。むしろ必要経費だ。
財布も買ったし石鹸みたいなのも買った。これで体をいい感じに洗えるしお金も入れれる、完璧だ。
本当は武器とかも見たかったんだけどまた今度でいいかな。自分で作るつもりだしね。
そう考えたら鍛冶屋とかみたいな。あと迷宮作りも見なきゃ、まだまだこの街でやることは多そうだな。




