45
「私たちの訓練を手伝って欲しいのです。」
「…理由を聞いてもよろしいですか?」
まぁ聞くだけ聞いておこう。
「実は私たちの国には魔法使いがあまりいなくてですね、魔法の訓練があまり出来ないのです。」
国も脳筋かよ。
「居てもあまり練度が高くなく、実戦向きですので訓練に使えるほど魔法をコントロール出来てる者が少ないのです。」
「ふーん。んでさっきの俺たちの模擬戦を見てって感じか。」
「そういうことになりますね。素晴らしい魔法でした、見たところ詠唱してなかったようですが…?」
やっぱバレテーラ。
「まぁそこはどうとでも解釈してもらってもいいや、流石にタダでって訳には…。」
まぁお金もらえるなら手伝ってもいいかな。俺も訓練になりそうだし?
「もちろん、謝礼は出るように公爵様に掛け合ってみます。」
「ならいいかなー。」
「ちょっとリード、よろしいのですか?」
レイが驚いた顔して聞いてくる。
「お金くれるってならいいんじゃない?まぁ訓練の内容によるけど、それはこっちで適当に決めていいのか?」
「はい、こちらとしては魔法になれるだけでいいので。」
ふむ、魔法教えるって感じではないのか、なら楽かな。
「うん、じゃぁやりますか。今からでいいの?」
「今からでいいんですか!?あれだけ激しい模擬戦をして大丈夫なのですか?」
「ん、そっちがいいならいいよ、別にあれレベルの事はするつもりはないから。」
「助かります。おーい、お前たち!こっちに来るんだ!」
後ろで見ている新米兵士達をこちらに呼ぶ、みんな若いな、俺が言えたことじゃねぇけど、十代後半じゃないか?
駆け足でこちらに近づいてきてザッと整列する、なかなか様になってるな。兵士マジ優秀だな。
「予定を変更して今日は先ほど素晴らしい模擬戦を見せてくれた、えぇと…。」
「あっ、リードって者です。」
「リード先生に魔法をよく見せてもらうことになった。みんな、挨拶を。」
「「「リード先生!よろしくお願いします!」」」
やだ、先生とか照れちゃう。
「…先生?マスターが先生って…。」
「おう、お前も手伝い決定な。」
「あー、今紹介されたリードです。年下ですがよろしく。」
適当に挨拶をする、みんなこっち見ててちょっと恥ずかしい。数は10人くらいか。
「これよりリード先生の言うことを聞くように!」
教官が言葉を挟む。
「はい、じゃあ。まず、どのくらい魔法のことがわかるか、そこの君、魔法について知ってることを言ってください。」
「はっ、魔法とは魔力を使い水を出したり、火を出したりするものです。」
適当に兵士の一人を指差して答えさす。
「まぁ間違いではないな。実際には、魔力を火や水と言った形に変え、そしてそれをまた魔力でコントロールするんだ。」
実際にやってみる。【ファイアーボール】を手のひらの上に作り出す。
「本当は詠唱がいるんだけど、見られてるしなしでいいや。」
驚きの声があがるけど無視。
「今これは魔力で火の玉を作り出し、他の魔力は通してない状態だ。」
「そして、これに魔力を通してコントロールするわけだな。」
火の玉を地面に向けて飛ばす。威力は抑えてあるのでちょっと地面が削れるだけだ。
「今のはただ飛ばすだけに魔力を使ったわけだな。実際はもっと複雑にすることが出来る。」
次は【ストーンボール】を作り、回転を加え速度を早め威力を高めて地面に打つ。
ズガンと音を立てて石の塊が地面にめり込む、悲鳴が聞こえた気がする。
「こんな感じだな。他の魔法使いをよくしらないんだが多分こうやって攻撃魔法を使ってるんだと思う。」
「ここまでデタラメじゃないですけどね。」
「シェリー、お前もちょっと妖精魔法使え。」
「はいはい。」
そのへんに生えてる草を使い蔦を形成するシェリー。それをこっちに伸ばしてくる。
「うぉい!」
「あっ、間違えました。」
飛んで躱す、こいつ一回どうにかせないかん。
「…このように色んな魔法がある。まずは一通り一般的な魔法を見てもらおうかな。おう、シェリー的になれ。」
「嫌ですー。」
言葉を遮るようにまずはボール系の魔法を順番にシェリーに飛ばす、流石に速度はおさえてあるので全部避けられる。
「危ないじゃないですか!」
「さっき自分でやっといてそれ言う?今のがボール系の魔法。」
「まさか全属性の魔法が使えるなんて…。」
教官がポカンとした顔でそう呟く、他の兵士達もみんなちゃんと見てるのか見てないのかわからんな。
次はビーム系の魔法をシェリーに放つ、サッとシェリーが避けていく。
「はい、これがビーム系の魔法だな。基本的な魔法はこれくらいだろう。あとはそいつ個人個人で臨機応変に使ってくるからな。」
そう言って【ウォータービーム】を蛇のように操りシェリーを追尾する。
「ちょっと!それ反則です!」
「そーれ、逃げなきゃ水浸しだぞー。」
ぐねぐねとビームを操りシェリーを追っかける。必死に逃げてるシェリー可愛いな。まぁここまでにしとくか。
「こんな風に使ってくるやつもいるだろう。ここまではわかったかな?」
兵士達を見渡して聞く、みんなポカンとした顔だ。わかったのかな…。




