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銀の背中から周りを見渡す。平原になってるので見やすい。
「おー、いっぱいいるな。」
ざっと神眼で見てみるが大した敵はいない。相手は銀を見て驚いてるのか立ち止まっている。むしろシェリーの魔法の力かもしれんけど。
銀が着地する。銀の背中に立つ。
「主様、どうされますか?」
「銀に任せてもいいけど、俺の力を見せるって話だしな。ちょっくら全力出す。銀、頭下げててくれ。」
銀が伏せのような格好になったところで魔力を込める。出すのはオリジナルの魔法、【メテオシャワー】だ。土魔法と火魔法を同時に扱い、バスケットボールくらいの大きさの隕石のようなものを頭上にいくつも作っていく。
「…んじゃ、いきますか!」
声と同時に隕石を発射させる、雑魚なら十分殺せる威力は込めた。それよりも速度に魔力を込めよけられないようにする。
ヒュンヒュン音を立てて隕石が飛んでいく、飛ばしてる間にも隕石を作り、またそれを飛ばす。
相手のオーク達はパニクってるのかこちらに武器を投げたりしてるが当然届かない。魔法をしてくるのもいるが遮断する。
逃げられるはずもなく、隕石が直撃して消し飛ぶか衝撃で手足が吹っ飛ぶオーガ達。
「むちゃくちゃな…。」
「…圧倒的ではないか!我が戦力は!」
思わず高笑いしそうになるが堪えて魔力を込める。
大体3、40発くらい撃ったかな?周りのオーク共はほぼ全滅していた。
「…銀、お前が苦戦してたオークジェネラルってどこ?」
「…先ほど主様の魔法が2発あたって消え去りました。」
あら、倒しちゃったのか。銀が苦戦したっていったから覚悟してたんだけどな。
「んー、じゃぁ後は手ごわいのはいないかな?銀、あとは頼んだ。」
「承知。」
銀から飛び降りると銀が弾丸のように相手に向かっていった。
銀に体引き裂かれるのと俺の魔法くらって消し飛ぶのどっちがいいのかね。
スタスタとシェリーが作った防壁の方へ歩いて帰る。
「シェリー、もういいぞ!粗方終わった!」
「はい!」
シェリーに声をかけ、防壁を取り除いてもらう。
残った木の柵からマーディがこちらに向かってくる。
「おいリー!何をやってるんだ!!」
完全に怒ってる。あちゃー、シェリーの防壁で見えてなかったのか。これは失敗した。
「…殲滅?」
と言いながら後ろを振り向く、穴だらけになった平原を銀が縦横無尽に走り回ってオーク共を跳ね飛ばしてる。楽しそうだなおい。
「お前な!!…はぁ?」
ようやく後ろの様子に気がついたのかマーディがピタリと止まる。後ろで見ているみんなも口が空いてる。
「…バトルウルフがやったのか?」
「いや俺が。」
「…どうやってだ?」
マーディが意味がわからんといった顔で見てくる。
「こうやって。」
頭の上に【メテオシャワー】を作る。
「こう。」
【メテオシャワー】を適当なところにブチ込む。派手な音と共にクレーターが一つ出来上がる。
「………。」
まさに絶句。
フランも驚いてる。シェリーもちょっと驚いてる、なんでやねん。
「…今のは魔法か?」
たっぷり1分くらいたってマーディがそう訊いてくる。
「オリジナルなんだけど魔法だよ。」
「主様、終わりました。周囲にオークはもういないでしょう。」
スタッと銀がこちらに戻ってくる。気配を探っても生きてる気配はないのでじきに全部魔石になるだろ。
「お疲れ様、銀。」
「いえ、少しも疲れておりません。」
そこはもうちょっとありがとうございます、とか言おうよ、銀。
「…全滅だと?」
「うん、もう終わったよ?」
あれ?こんな時普通みんな飛び上がったり歓喜の叫びしたりするんじゃないの?みんなお通夜みたいなんだけど。
「あれ?もしかしてけが人が出た?治療魔法するから、どこ?」
「…いや、けが人は出ていないが。」
「じゃあなんでこんな静かなの?」
「…お前、…いや、もういい。」
マーディは後ろを向くと。
「終わったぞ!我々の勝利だ!」
ウォー!とか後ろから声が聞こえる。いやなんでこれさっきなかったの?
村に伝令が走っていく。俺たちはここで待機してるんだが、
「リー、話がある。」
色々と話していたマーディがこちらにくる、ていうか家族みんなこっちきてる。フランもだ。
「リー、さっきも言ったがあれはなんだ?」
「魔法だって。」
「あんな魔法聞いたことないわ。」
「オリジナルだって言ったよ。」
「オリジナルって…それに詠唱もなかったでしょ?」
「詠唱は…いらないんだ。」
セリーが魔法について訊いてくる。またびっくりした顔してる。
「いらないって…無詠唱で使えるってこと?それにしては魔力が桁違いだったんだけど。」
「それも含めて全部話すよ。」
一旦話を区切り言えるようなことは全部言うことにした。
フランは驚いてないし、シェリーと銀も別に驚いてないんだけどね。




