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「うおぉ!!可愛いな銀!」
歓喜の舞を踊りながら銀の周りを回る。
「そうですか?大きさしか変わってないですが。」
「それがいい!触ってもいいか?」
「いいですけど。」
銀に許可をもらい触る。もっふもふですわ~。
「…。」
為すがままの銀を余すことなくなでなで。これは癖になる。
「ほら、できましたでしょ?」
窓からシェリーが顔を出す。もう元に戻ってた。
「おう、んじゃ部屋の中にいこうぜ、銀。」
「はい。」
窓から部屋にはいると銀も続いて入ってくる。能力は元々と変わらないっぽいな。
「では、ここで第一回リード家会議を始める!」
ベッドに腰掛けながらそう宣言する。銀を撫でながら肩にシェリーを乗せながら。
「ちょっと緊張感が…。」
「はい、主様!」
スルー安定。
「ここまでは首尾よく運んだわけだ。シェリーとも話してたけどここからどうするかって話だな。」
「とりあえず一回ココリ村に帰るんでしょ?」
「どこですか?」
「俺の生まれたとこだな。森の近くなんだけど銀は知らないか?」
「村があるのは知っていましたが、行ったことはないですね。」
「そうか。銀も小さくなれるようになったし、このまま一回帰って、家族にちゃんと説明しようと思う。」
「…説明?」
「うん、両親に心配かけるのもしちゃダメだしな。俺の力を見せて、旅をすることの許可をもらう。」
「見せてないんですか?」
「色々事情があってな、そこそこ才能があるって感じになってるんだ。」
「そうなんですか。」
「銀も使役したことだし、シェリーも使役したことにして一気に言っちゃおう。」
「…大丈夫ですかね?」
「いけるだろ、なんたって俺の両親だしな。父さんなんて家出したこともあるんだぜ?」
「主様の家族に挨拶ですか…。緊張しますね。」
ここで一旦話をきる。明日には村に帰ろう。そして色々やろう。
「リード、起きてます?」
しばらく銀の毛並みを堪能したり、シェリーを交えて魔法の練習をしていると、コンコンと扉をノックする音と共にレイの声が聞こえる。
「おきてるぞー。」
そう答えると扉が開く、部屋着に着替えたのか服装が違うレイが現れる。
「家庭教師のことでちょっとお話がしたいのですわ。」
「あー、明日はちょっと野暮用があって無理だけど、…そうだな、レイの魔力的に一日2時間でどうだ?」
「…それで構いませんわ。野暮用ってなんですの?」
やっぱグイグイくるなこの人。
「ほら、一回村に帰らないといけないからさ。ついでに色々両親と話してくるよ。」
「ふーん、…あの子にも会うんですの?」
「フランのことか?まぁ、そりゃ会って本格的にこっちで活動するって言わなきゃな。」
あー、またフラン説得しなきゃならんのか。結構骨が折れるぞ。
「まぁそうなりますわね…。」
「何考え込んでんの?似合わないよ?」
「五月蝿いですわ!」
考えていたレイをからかうと顔真っ赤にして怒ってくる。からかいがいのあるやつだ。
「…本格的にこっちで活動ってどうするんですの?」
「とりあえずはお金稼ぎかなぁ。いつまでもここにいるわけにもいかないし。あぁ、家庭教師の給料っていくらだろ?」
「そのへんはお父様に訊いてくださいな。」
「マジかー、あの人愉快すぎてあんまり近づきたくないんだけど。遠くから見ていたいタイプだわ。」
「身内にその話をするんですの?」
ねー、と。銀とシェリーに同意を求めると二人共頷いてる。
「はっ!その子はもしかして銀ちゃん?」
レイが銀の姿に気がつく。
「あぁ、そうだけど…。」
「うわぁ、可愛いですわぁ!」
言うのが早いか銀に飛びつきもふもふを堪能している。
「…主様。」
「我慢なさい。」
しょうがないので銀をもふもふさせる権利をやろう。雇い主様だし多少はね?
しっかりともふもふを堪能したあと。
「…まぁいいですわ。わたくしからはこれだけですわ。」
「そうか。あぁ、そうだ。色々とありがとうな。」
「…。どういたしましてですわ。」
そう言ってレイは部屋から出て行った。
「おっしゃー、久々にゆっくり寝れるぞー。」
「これでマスターと一緒に見張りしなくてすみますわ。」
「我は夜は寝ていましたけどね。」
シェリーも結構楽しんでたくせに。
「ベッドも大きいしみんなで寝れるな、銀は温かいし最高ですわ。あっ、シェリーさんはカゴでどうぞ。」
「むかつくので一番いい場所で寝ます。」
そう言って枕を占領するシェリー。
「うわ、俺どうやって寝るんだよ…。まぁ、いいや。銀はここでお願い。」
「わかりました。」
そういって銀を隣で寝かせる。大きい時から思ってたけど絶対気持ちいいわ。抱き枕にしたい。
「んじゃ、おやすみ。」
「おやすみなさい。」
と銀とシェリーも答える。
そういえばエンちゃんとこの頃話してないな、久しぶりに会話してやるか。
そう思っていたら、
(リー、助けて!!!)
フランから念喋が聞こえた。




