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銀も帰ってきてみんな寝る準備をする。
本当は銀の毛に包まって寝たかったけどそれだと銀が寝づらいだろうし、うっかり潰しちゃいましたなんてシャレにならんしな。
昼寝の時に銀のお布団を堪能させてもらうことにしよう。
水魔法で体を拭く用の水を桶の中に入れておく。俺?もちろん全裸になって頭上から水魔法でシャワーっすよ。
「これは魔法使いの特権ですわー。」
「こっち向かないでくださいね、マスター。」
「あぁん?シェリーも一緒に浴びとく?」
「別にいいです。」
つれないこというなよシェリー。俺も羞恥心はあるのでシェリーの方は向かなかったけど。
「…便利ですわねー。」
「レイのエッチ。」
こっちを見ているらしいレイにそういっておく。
「暗くて全然見えませんわ。」
まぁこっちからも全然見えないから知ってた。ここで火魔法使ったら俺の全裸が浮かびあがるのか…、ふむ…。あり、だな。
「わたくしも帰ったら思いっきり水浴びをしたいですわねー。」
「別に一緒に浴びてもいいんじゃよ?」
「嫌ですわ。」
ばっさりきられた。
「銀は一緒にシャワー浴びようぜ!」
もう気分は修学旅行の学生だわ。銀の体に水をかける。
「主様、冷たいです。」
「あとで乾かしてやるから浴びとけ浴びとけ。」
そう言いながら銀をこっちに来させ水魔法の範囲を広げシャワーを浴びさせる。
銀が体を振るって水分を飛ばしてくる、それが結構面白かった。こうなるとただの犬だな。
風魔法と火魔法を使い温風を作り出し体を乾かした、銀の体デカイから結構厄介だったわ。
「…さっき魔力使ったんじゃないですの?」
レイがそんなこと言ってたけど教えてあげない。
「それではおやすみなさいですわ。」
そう言ってレイが馬車の中に入っていく。レイは馬車、俺と銀とシェリーは外、マーカスとウォードがテントって感じだ。
毛布を出し寝ることにする。
「俺も寝ますね、おやすみなさい。」
「交代の時起こしてねー。」
返事をしてウォードもテントの中に入っていった。
「んじゃ俺らも寝ますか。」
宝物庫の中からシェリー用のカゴを出す。銀はもう寝そべってるからそのまま寝るんだろう。
「ぐっすりとはいかないけど、ちゃんと寝とけよ。疲れ残ってたらいかんしな。」
「大丈夫ですよ、主様。」
目を閉じながら銀が返事をする、まぁ気を張りながら休むなんて慣れてるだろうし大丈夫だろう。
「シェリーもな。」
「私も疲れが残るほど何もしてないですから。」
も ってなんだ。も って、俺色々してたやん?
「いつも通りで安心した。それじゃお休み。」
「おやすみなさい、マスター。」
「主様、おやすみなさい。」
目を閉じて寝ることにする。旅するのって大変だな。
「リード君、起きてください。」
「…おぅ。…見張りか。」
全然寝れてない気がする。
ネトゲ廃人時代なら寝ないでボス張り付き余裕です、とかやってたんだけどな。
体が子供だし仕方ないか。
「大丈夫ですか?」
ウォードもちょっと心配そうだ。
「…大丈夫だ。引き受けたからにはちゃんとやる。」
眠い目をこすりながら立ち上がり軽く体操をする。少し目が冴えてきた。
「…わかりました。ではテントに戻りますので。何かあったら呼んでくださいね?」
「わかってる。おやすみ。」
そう言ってウォードはテントに戻っていった。
水魔法で顔を洗う、結構すっきりしたな。
「…一人か、精神的に辛いなこれは。」
エンちゃんに念喋でも使って話をしようかなって思ってたらシェリーも起きてきた。
「寝とかなくていいのか?」
「昼間何もしてないですからね、それにマスターと一緒に昼寝すればいいですから。」
焚き火の傍で火の番をしているとシェリーもこっちに来るみたいだった。肩にちょこんと乗るシェリー。
「…それでどうするんですか?」
「何が?」
「これからのことですよ。」
珍しくシェリーが真剣みたいだ。
「んー、ここまでうまく事が運ぶとはなー。正直あんまり考えてないや。」
「…マスターらしいですね。」
ため息を吐くシェリー。
「大雑把だけど、まずはティスカ公に会ってみる。」
「どうなるんでしょうね?」
「こっちにとっていい条件ならそれに乗っかる、気に入らなければ蹴って村に帰るさ。」
「それが妥当ですね。」
「この旅の目的は自分の村以外の場所にいくってのが大きな目標だからな。ティスカ公国についた時点でその目標は達成だ。」
「転送石ですか?」
「あぁ、あれが使えるようになればお金さえ払えば別のとこに連れてってもらえるからな。」
村では顔がしられてたので無理だったが他のとこなら大丈夫だろう。
「…マスターは最終的にどうしたいんですか?」
ふとシェリーがそんなことを聞いてきた。
「んー?そうだなー。今はこの世界の事を知りたいってとこかな?それ以降のことは考えてないや。」
ネトゲでもマップ制覇は基本だろう。自分の行けるとこならば行ってそこを見てみたい。
「あとは情報を集めるってのもあるな。俺もまだまだ知らないことがあるしな、鍛冶のこととか迷宮のこととか。」
ネトゲ廃人にとって情報は一番の武器だ。これがあるとないとでは全然違う。
「…実は結構考えてます?」
「そう思う?」
「…マスターの考えてることなんてどうせ私にはわかりませんよ。」
「拗ねるなって。多分一番俺のことわかってるのはシェリーだぜ?」
「…それならいいんですが。」
そんなことをいいながら朝日が出るまで二人でボソボソと話をしていた。




