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木をマーカス達が準備している場所に持っていく、途中で葉っぱとかすべて風魔法で吹き飛ばしたので今はただの丸太だ。
「おっし、じゃあ銀の魔法の訓練もしますかー。ついでにレイもしとくか?」
銀の目の前に丸太をゴンっと置く、銀もなんでこれ持てるんだって顔してる。シェリーはいつもの真顔だ。
「…わたくしはちょっと休んでおきますわ。」
あぁ、そっか。魔力使い切ってたな。つい超回復もってる俺基準にしちゃうな。
「そうだな。見るだけでも訓練になるしな。」
「我はどうすればいいのですか?」
「んじゃ銀はこの丸太をまずはこのくらいの大きさの輪切りにしてくれ。」
手でこのくらいと大きさを作る。
「わかりました。」
スっスっと風魔法で丸太を切っていく銀。【ウィンドカッター】だな、魔力の使い方もうまい。ちょうどいい力加減が出来てる、俺とは大違いだな。
「何をやってるのかさっぱりですわ。」
「まぁそうだわな。銀は魔力の使い方うまいから、魔力の流れ?みたいのを少しでも感じ取れればいいさ。」
自分でも難しいこといってんなーって思うけどそう言うしかないしな。レイは結構真剣に見てくれてるし。
「次はどうすればいいんですか?」
「出来たら次はそれを短冊切り…。こうやって薪みたいに切ってくれ。」
短冊切りがわからなそうだったので実際に俺がやって見せてみる。一つの丸太を上から大雑把に切っていく。
「わかりました。」
そう言って銀も俺にならって切っていく。ほんま出来た子やでぇ…。
「乾燥は俺しか出来ないからなー。あぁ、シェリーもいけるか。」
「えー、めんどくさいです。」
「お前は俺に使役されてるんちゃうんかと。」
シェリーも巻き込み錬金で中の水分を抜いていく、これで薪の完成だ。
「マーカス、ここで火起こしていいか?」
「そうですね、ちょうどいいでしょう。」
馬車とテントのちょうど真ん中辺りに薪を積み上げ、火魔法で火を付ける。
「それで見張りのことなんですが…。」
マーカスが申し訳なさそうにそう言ってくる。子供にそんなことさせる訳にはいかないので銀辺りに頼むつもりなんだろう。
「あぁ、そのことだったら。【フィールドサンクチュアリ】ってどうなのかなって。」
「聖魔法のですか?確かにあれは魔物を寄せ付けないようにするためのものですが…。」
聖魔法の補助魔法の一種である【フィールドサンクチュアリ】。
これ俺が全力で魔力込めれば朝までは持つんじゃないかなって思ってたけど。
「まぁ、物は試しだろ。ちょっとやってみるわ。」
久々に全力で魔力使うなーなんて思いながら魔力を練る。大きさは大体幅が15mくらいで縦が4mくらいでいいだろ、時間は朝までと、残りを魔物お断りの方に回してっと。
「…ふぅ、どうだろうか?」
「わかりませんが…。」
マーカスはピンときてないようだった。まぁ魔力の流れなんて普通見えないしな。
「…マスター、やりすぎです。」
「主様、これはちょっと…。」
シェリーと銀がそんなことを言う。二人からお墨付きもらったし大丈夫だろ、ちょっと銀も寄せつかなくしちゃうかと思ったけど大丈夫だったみたいだ。
「大丈夫みたいだな。見張りはいらないだろ。」
「魔物の方はそれでいいですが、野盗などはどうするんですか?」
「あー、そっちがあったか。どうしよう。」
しまった、そりゃそうだ。人間の事すっかり忘れてたわ。
「んー、ダメだ。いい案が浮かばない。」
「主様、我が見張りましょうか?」
「お前ずっと歩きっぱなしだっただろ?休んどけ。」
銀の提案を却下する。
「それなら私が周りの植物達に人が来たら教えてくれるように頼んでおきます。」
そういってシェリーは森の方に飛んでいった。んー、それでもちょっと危機感が足りない気がするな。
「見張りはちゃんといたほうがいいな。レイは一応お姫様だし除外するとして、俺たち三人で見張ることにしようか。」
そう提案する。
「子供に見張りを頼むのは気が引けますが…。」
「リード君は強いからなー。」
「強いのは関係ないけど俺は銀に乗ってるだけだしな、昼寝でもさせてもらうから大丈夫だ。」
そう言って俺の見張りの時間を長めにとる事を提案する、大体二人共2時間くらいで残りは俺でいいだろ。
「さっき魔力使っちゃったから先に俺を休ませてくれれば後はそっちで順番を決めてくれていいぞ。」
マーカス、ウォード、俺の順に見張りをすることにした。
「それでいいでしょう。」
マーカスからもOKを貰ったんで大丈夫だろ、大分信頼されてんな。まぁ俺相手にどうしたって勝てないってわかってるし諦めが入ってそうだけど。
「食事の時間だー!」
人生の楽しみだね。夕食は鍋に食材ぶっ込んで煮ただけのやつだけど文句はない。むしろ姫様用だしそこそこいい食材使ってるだろうし。
「あー、銀はどうする?」
「許可をいただければ森で獲物を食べてきますが…。」
「許可。腹いっぱい食ってきなさい。」
即決、スっと銀が森の中に入っていった。あいつあの図体で音もなく動けるんだもんこええよな。
「はい、リード殿。」
「ありがと、そういえば俺普通に食事とかもらっちゃってるけどそのへんのお金はいいの?」
一応訊いておく。
「命の恩人ですからね、逆にお釣りが来ますな。」
「今こうしてご飯食べれるのもリード君のおかげですから。」
「そうですわね。」
いいらしい。まぁお金よこせって言われてもないし、お言葉に甘えとこ。
「俺が稼げるようになったなんかうまいもんでも食いに行くってことで。」
「わたくし、あそこがいいですわ。」
おいおい、あんまり高いとこはダメですよ?初稼ぎは両親って決まってるからな。