外伝6
喰らってきた。
色々なものを、魔物から人族に至るまで。
自分が生きるために。
生まれたときからわかっていた、この世は弱肉強食だと、やらなければやられると。
生きるために必死だった。
生まれてすぐ親はいなくなり、そこからは自分一人だ。
最初に喰ったのはそのあたりにいた鳥だったか。
ぴゃーぴゃー言う鳥を喰らったはずだ。
自分の力が上がった気がした、力を得るためには喰わなければ、生き抜くために強くならなければ。
どれほど喰らったのだろう、気づけば我は人の言葉がわかるようになっていた。
それからは人を見かけてもすぐには襲わなかった。喰らったのもいるが人は興味深かった。
そいつらは森に入り、魔物を狩ってるようだった。なんのためにだろうか、強くなるためだろうか。
何度かその光景をみかけた、ふと気まぐれに我は姿を見せることにした。我ならばこの奴らには負けることはない。
「バトルウルフだと・・・!」
「まずいぞ!逃げるんだ。」
「待て、様子がおかしいぞ。」
一人の男がそういう、この男がこの中では一番強いだろう。
「お前らが危害を加えなければ、我が襲うことはない。」
「・・・喋れるのか?」
男が代表してそう言う。
「お前たちはなんのために魔物を狩るのだ?強くなるためか?」
「・・・いや違う、守るためだ。村の人たちを。」
男は少し考えてはっきりとそういった。
「・・・ほう、なるほどな。」
人はもろい、特に子供は驚く程もろい。それを守るためにこの者達は魔物を狩っているのだろう。
「・・・本当にそちらからは手を出さないんだな?」
「そうだ、人族と争ってもロクなことがないからな。」
「・・・わかった、そちらの縄張りにはなるべく入らないようにする。」
そう言って男達は去っていった。
それからその男たちはこちらに敬意を示すかのようにこちらの縄張りには入ってこなかった。
こちらもそれで問題はなかったのでお互いに干渉しないように日々を過ごしていた。
後日、自分が使役されることなんて夢にも思わずに。




