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きっつい。なんだこれ。
初手からミスってそのまま選択肢を間違えまくった結果がこれだ。
弾丸のように飛んでくる魔法を相殺しながら考えを張り巡らす。
とりあえず今回はもう少し粘ってから撤退だな。それは来た時点で確定してるので問題はなし。
しかし、相手の手札があんまり見えてないってのはあれだな。
実際黒い霧に魔法が吸収されるのと魔法ぶっ放すので十分強い。…暴走してるから単調な攻撃しか出来ない可能性があるのでもうちょい挑発するか。
横切っていく魔法を相殺しながら黒い霧に近づいていく。
向こうも少しづつこっちに近づいて来てるので正面衝突かな?
まぁ、とりあえず接近戦仕掛けたらどうなんのかなって思った瞬間。
「あっぶな!」
黒い霧が棘のように変化して俺を貫いてきた。
咄嗟に神速化して空中バックステップで距離取ったが身体強化しててよかった。なかったら衝撃で血反吐はいて死んでたわ。
あの黒い霧直接も攻撃してくるんか…。いやでもあれ魔力の塊だよな。
一回見た攻撃なので次は余裕を持って避けれる。もっかいいこう。
「…対処可能だな。」
再び近づき棘攻撃を誘発させる。
下がりながら棘に魔法ぶつけると棘が削れた。相殺は可能らしいが大元と繋がってるから削れるだけで終わるな。
…あの棘当たったらどうなんだ?つうか黒い霧に包まれたらどうなんのこれ?魔力に嬲り殺されるの?さすがに試したくはないよなぁ、死に直行ムーブだし。
普通に徐々に黒塊はこっち近づいて来てるから止まってたら包み込まれるんだよな、動くけど。
まぁ、この距離でも魔法飛ばしてくるから動かないとただの的だしな。
…プランは決まったかな。
(シェリー撤退準備!)
今回ので色々見えた。一時撤退して整えてから来ますか。…この距離だと見てから相殺すんのきついから後ろに逸らしてるしな。
…今回削れたのは全体の5%程度。まぁ、いいんじゃないですかね削れるのがわかったので。
「撤退するの?どうやって?」
「…私がまずマスター以外の全員を連れて崖の転送石から村に移動。それを確認次第マスターが全力で離脱する、という流れだそうです。」
何故か接近戦に移行している大魔王とリードの戦いを眺めていたら妖精が撤退命令を出してきた。
そもそも大魔王はリードに釘付けでこちらに注意を向けていないので撤退は容易だろう。…ただ問題は。
「…私、転送石使えませんが。」
「…はい?」
ハイルズの吐いた言葉に妖精が驚くような顔をする。
そう、ハイルズは魔法全般が使えないのだ。元からそうなので仕方がない。
「なんだ、お前魔族なのに魔法ダメなのか。」
「むしろ魔族だからと言いますか、…そういう魔族なので仕方がないのです。」
「あー、なるほどな。…昔から奇妙な戦い方をしていると思ったらそういう事か。」
水の精霊王が頷きながらそんなことを言う。…私は知らないけどもハイルズは昔から色々な戦場を渡り歩いていたらしいので何度かやりあったことがあるのだろう。
「…走って帰れ、らしいです。」
「…本気ですか?」
リードと念喋をしていた妖精が無慈悲な一言を発した。
流石に冗談かと思って妖精の顔を見たが、無表情だったので本気だろう。ハイルズもわかっていたのか諦めた表情をしている。
「…えっ、てことは私一人でこの二人と移動するの?」
そこで気が付いてしまった。
転送石で移動するのは私と妖精と水の精霊王の三人だと。
今までも化け物に囲まれていたのは理解していたがハイルズという化け物がこちら側という安心感があった。
一応は休戦してるので滅多なことはないだろうが流石に心細い。
「あ、じゃあ子守の方をよろしくお願いしますね。」
「まぁ、一応共同作戦中なので危害は加えませんが別に守りもしないですよ。私は。」
「今のとこは護衛対象なので守るが、それ以降は知らんな。」
「もうちょっと守ろうとして!」
ダメだ、こいつら全く私を守ろうとしていない。
…むしろ守られるのがおかしいとは思うがもうちょっとなんとかならないのか。
「とりあえずウンディーネはそれを持ってください、移動しますよ。ハイルズはさっさと移動した方が巻き込まれずに済むと思います。」
「了解した。」
「それって私か!」
水の精霊王が私をひょいと持ち上げて脇に抱える。完全にお荷物だ。
「…全力で移動しますかね。」
そんな私を見てハイルズが笑ったかと思ったら颯爽と走り去っていった。
「薄情者…!」
「はいはい、移動しますよ。」
愚痴を残す間もなく走り去っていったハイルズに恨み言を言うが早いか妖精が走り始めた。
「…あんまり揺らさないでよ。」
「努力はしよう。」
「さっさと逃げますよ。」
抱えられてる私を妖精が一瞥すると走るスピードが上がった。…なんであんなに軽やかに走れるのか。
「…早い、早い。揺らさないで…。」
とりあえずは猛スピードで移動しているのでまた酔わないようにしなくては、…それからのことはあとで考えよう。




