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「そういえば海にも魔物いるんだよなぁ。ちょっと興味ある。」
「余計なことしないでちょうだいね。」
「海の魔物刺激してその女振り落とすのもありですね。」
「あたしにもシュルツェって名前があるのだけど?」
「あら、初めて知りましたね。」
「じゃあ、覚えておいてちょうだいね。」
「・・・まぁ、頭の片隅にだけ置いておきましょう。」
「あたしは積極的に名前で呼んでもいいわよ。」
「・・・そうですか。」
ギスギスゥ!
俺の頭挟んでこの会話は俺がハラハラするのでやめていただきたい。
つっても一方的にシェリーが突っかかっててシュルツェがそれを受け流してる感じがするな。
まぁ、あからさまな挑発してるシェリーが全体的に悪いんですが。
「まぁ、あんまり喧嘩すんなよ。一応共闘になってんだし。」
「・・・はぁ、確かにイライラがかなり表に出てましたね。・・・反省します。」
シェリーがシュンとなる。
珍しく可愛いシェリーだ。保存、保存。
「・・・やっぱり貴方達は見ていて飽きないわね。」
「よく言われるわ、それ。」
「・・・なんもかんもマスターが全部悪い。」
「まぁ、これに使役されたらそうなるのかしらねぇ。」
「それ当たりです。ていうかマスターと関わった時点で終わります。」
「じゃあ、あたしも終わりなのかしら。」
「人を病原菌みたいに言うのやめてもらえませんかねぇ・・・。」
「そんなもんでしょ、マスターって。だって知り合った人皆おかしくなってますよ。」
「その言い方だと狂わせてるみたいじゃないですかー!やだー!」
「・・・どうおかしくなってるのかしら。」
「まず常識がブッ壊れますからね。マスターといると。」
「そうなの?」
大分失礼な事言ってますね、こいつら。
「俺自身が常識だ!」
「・・・本当におかしいわね。」
「でしょう?」
「いやいや、流石に冗談やし。シェリーさんツッコミ放棄しないで。」
「マスターに合わせてるといつでもどこでもボケてきますからね。節度を守ってもらいたいです。」
「えぇ・・・、今それ言う・・・?」
「・・・貴方達本当に仲良さそうね。」
若干呆れた顔でシュルツェがそんなことを言ってくる。
なんか普通に会話してのほほんとしてるが一応ここ海の上でかつ敵地の様なもんなのでこんな会話してる場合ではないのだが。
まぁ、割りと高速で動いてるし。ちょっかいかけてくる奴もいないだろう。
さっきから若干海の中で俺らの気配に気づいてるっぽいのがいるけど、気がついた時にはもう既にそこにいねぇしな。
ちょっとは根性入れてついてこんかい!って思ったけど海上付近にそんな根性入ってるやついたらちょっとやべぇよな。普通底の方にいるだろうし。
「・・・魚くいたいな。ちょっと寄り道して漁するって手もあると思いません?」
「ないですね。」
「ないわ。・・・ていうかもうちょっと緊張感を持ってもらいたいのだけど。・・・アラジー大陸見えてきているし。」
「え、向こうの大陸いたときも見えてたでしょ。」
「それはマスターだけです。」
「・・・本当に常識がわからない。」
まぁ、めっちゃ視力強化して微かに見えてるって程度だったけどな。
「・・・うん、やっぱ禍々しいな。」
なんだろ、こう大陸全体が暗い感じがする。
魔力もなんか多くて、大陸を包み込んでる。
まぁ、ラスボスいますよ的な雰囲気がやばい。
つってもそれがぽっかりない部分があるわけですが。
「・・・方向は見えてるわね?」
「まぁ、あれだけぽっかりとしてたらな。」
「・・・見事に魔力がないですね。」
あれ、シェリーも会話に乗ってきたってことはなんか魔力探知する系のスキルとってんのか。サボってると思ってたら成長していたでござる。
ハイルズがこちらを見ていたので指差して確認。ハイルズが頷きそちらに進路を変えてピョンピョンしていく。
後に続くようにピョンピョンしていく。
「・・・しっかし、こんな形でこの大陸に行くことになるとは思わんかった。」
「まぁ、好んで来ようとする人族はいないわね。・・・昔ならいざしらずこの時代では稀ね。」
「ってことはいるんですね・・・。アホでしょうか?」
「さぁ?大抵海の藻屑になってるけど。・・・まぁ、上陸してもどうにもならないと思うけど。」
「まぁ、名を上げたいんじゃねぇかな。海が荒れてるって訳でもねぇし、アラジー大陸に上陸して戻ってきたってだけでもう英雄譚が作られると思うしな。」
「じゃあマスター作ってみます?」
「はっ、誰が信じるんだよ。てゆうか本に書く程冒険してねぇし。」
「・・・貴方達の中ではもう普通に帰れる事が確定してるのね。」
何を当たり前の事を。
逃げ足は早いぞ。
「・・・あの城っぽいのか。」
「えぇ、無駄に大きいからわかりやすいでしょう?」
なんかもうお決まりの様に山の近くに城がデデンと建ってる。まぁでもなんでこんな海に近いとこに建ってんだろ、普通に攻められやすいと思うが。・・・まぁ、崖から攻めるやつなんていねぇか。
「・・・おいおい。」
「どうしたのかしら?」
「マジですか。この距離で?」
「ちょっと伏せてな。」
「え、何・・・。」
城からすごい勢いで魔法が飛んできてる。
俺に向かって。
シュルツェを落ちない様にちょっと強めに抱きしめながら、空中にとどまる。
「なんで止ま・・・、ッ!」
「うわー、正確だなこれ。つうか速度早いし、割りと厄介だぞ。」
魔法で相殺しても遮断してもいいが、無駄に消費してもあれなので避ける。
後ろで水しぶきが派手に上がるが、結構連続で飛んでくるので気にしてられない。てゆうかこっちにかかってる。




