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「私はこの移動方法しかないので我慢してください。」
「わかってるわよ・・・。」
シュルツェはもう話しかけないでオーラが出てる。
「私海見たの初めてですね、そういえば。」
「あぁ、そういえばそうか。・・・あんまり見てる感しねぇけどな。」
シェリーが崖から海見てるが、これだと海きた感じあんまりしないよな。
まぁ、個人的に海は嫌いだけど。
「そうですか?目の前に水が広がるのは結構いいと思いますが。」
「魔法でも同じ様なこと出来るじゃん?」
「ほんとマスターってそういうとこありますよね。」
「まぁ、どうしてもこの状態だとあんまりな。」
うむ、崖の上に立ってるとどうしてもドラマのワンシーンにしか見えないです。
「・・・普通の魔法じゃ同じ様なこと出来ないと思うけど?」
「そう?」
しゃがみこんだままシュルツェが海を眺めながらそう言う。
「サラッとそんな事が言えるなんて本当に魔力が馬鹿げてるのね。・・・さっきの妖精ので片鱗は見たけど。」
「・・・私にはシェリーって名前があるんですけど?」
「名前で呼んでもいいのかしら?」
「妖精って呼ばれるよりはマシです。」
これはギスギスしてますね・・・。
「ま、まぁ、海みたいな光景作るだけならそのへんの魔法使いでも出来るからな。」
「その辺の魔法使いって水魔法を極めた魔法使いって事でいいですか?」
「・・・あぁ、やっぱり常識が狂ってるって事でいいのね。」
「失礼な。常識なんてかなぐり捨てた方が楽しいんだよ。」
「まぁ、この通りちょっと頭おかしいんですよ。」
「ハイルズもそうだけど実力ある奴ってどこかおかしいのよね。」
「私をこれと一緒にしないでくれますか?」
完全に失礼じゃんこれ。
「敵しかいなくね、これ。」
「まさか、私は味方ですよ?」
「まぁ、あたしも今のところ味方だよ。」
「私もそうですねぇ。」
シェリーは置いとくとして、シュルツェもハイルズもなんか慣れてきてない?気のせい?
「はー、これ絶対そう思ってないやつだわー。」
「そんなことより、ここから先は貴方が送ってくれない?」
「は!?何言ってんですか?」
いやそれ俺のセリフですけどシェリーさん。
「だってそっちのが快適そうに見えたけど?ここから長いから出来ればそっちに送ってもらったほうがいいのよ。」
「ゲロ吐いてでもそっちで運ばれてください。」
「吐かないわよ!・・・それにハイルズが手ぶらになればもう少し早くなる良い事ずくめよ?」
「・・・それとこれとは話が別です。」
さりげなくハイルズがディスられてるのは気のせいでしょうか?・・・気のせいじゃなかった、ハイルズみたら苦笑いしてた。
「貴方だって早く移動出来るにこしたことないわよね?」
「まぁ、そやなぁ。・・・このままだと夕飯に間に合うかどうかやし。」
あんまり遅くなるのも考えものだろう。今まで夕飯は皆で食べてるし、心配かけたくないし。
「・・・運ぶ気ですか?」
「そっちのが手っ取り早いんじゃない?」
「・・・抱いていくんですか?」
「・・・まぁ、そうなるんかな?」
おんぶしてもいいけど。
・・・まぁ両手がふさがるのはあんまりよろしくないけど、シュルツェを人質って感じならハイルズも何かしてくることないだろう。めっちゃ見放してた感あったけどな、さっき。
「ほら、こう言ってる事だし。試しに、ほら。」
と言ってシュルツェが半分万歳みたいな格好で抱っこを迫ってくる。
「私はいいですけどね、別に。」
「肩抓るのやめてくれませんか・・・?」
「早くしてー。」
そんなこと言いながらギュウギュウ肩の肉を抓ってくるシェリー、地味痛なのでやめてほしい。
まぁ、なんかはしゃいでるシュルツェは可愛いのでこのまま見てるのもいいが、折角なので抱っこしてみよう。
そっと腕を添えるとそこに寄りかかってきたので力を込めて抱っこする。
「・・・ハイルズ以外に抱かれたの初めてだけど、視線が低いわね。」
「そりゃ俺子供やし。・・・いや、シュルツェのが背低いからな。」
別にそんな重くないっていうか、・・・あんまり比べるのもあれだけどフランより軽いな。背丈も低いし。
「んー、人族に抱かれるなんて貴重な経験ね。・・・人族よね?」
「その目ん玉で見てんだろ。」
「貴方に関してはあたしの魔眼は信用出来ないのよ。」
抱っこしたままシュルツェに目を覗かれる。
よく見るとシュルツェの目は赤く、瞳の中で何かが動いて・・・痛い!
「抓りすぎぃ!」
「・・・距離が近いんですよ。何見つめ合ってんですか。」
「きゃっ・・・。いきなり動かないでよ・・・。」
シェリーがどんどん力入れて抓ってくるので流石に声が出る。
その反動でシュルツェがびっくりしたのか俺にしがみつく。
「どさくさに紛れて更に抱きついてんじゃねーですよ。」
「落ちそうになったんだから仕方ないでしょ!」
「あのくらいでマスターが落とす訳ないでしょ。」
「いや、普通に痛いんだけど。」
「・・・うん、いいじゃない。安定してるし、魔力で飛んでるんでしょ?」
シュルツェを下ろすと同時に抓る手がパッと終わる。
「まぁ、そうだな。」
「珍しい魔法使ってたわね。・・・人族ってあの魔法使えるのね。それに複数の魔法同時に展開してたわよね?・・・魔法に関しては本当に底が見えないわね。」
「ま、多少はね?」
飛んでる時に魔眼で見られてたんだろう。
多分、無魔法の事だろうな。今んとこ俺以外使えるの見たことないし。
まぁ、多少手の内を見せてもいいかと思ってる。
こいつらは俺が魔力お化けなのはわかってるからな。魔法に関しては別に隠しておく必要がないだろう。・・・まぁ、まだ俺には歌とかあるし?
「それで、貴方が運んでくれると言う事でいいかしら?」
「そっちのが早そうだしな。そっちがいいならそれでいいぞ。」
耳元でシェリーが思いっきり舌打ちした気がするが、そっち見ると済ました顔してんのほんまなんなの。文句はあるが有効なので舌打ちだけします的な。




