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「まぁ、その大魔王が近しい人物とかか?」
冷静に考えればまぁおかしいだろう。
封印されてた状況とか知りすぎてるし、それに魔王領の心配してるしな。
大魔王を殺されたくないからシュルツェは俺みたいな正体不明の奴にすら頼ってるわけだからな。
「・・・そうよ、大魔王は・・・。ライメンはあたしの父よ。」
「ほーん。・・・なるほどねぇ。」
まさか血縁者とは、・・・まぁ妥当か。
ハイルズが何か言いたそうにしてるがもう基本的に口を出す事はしないみたいだ。全てシュルツェに任せるって感じだな。
「元々あたし達はそんなに大きな力を持った魔族ではなかったの。でも昔のいざこざでライメンが暴走して大魔王に覚醒してから魔族を治めるようになったわ。」
「・・・そんときの大魔王が強かったからか。」
「そうよ。例え暴走していたとしてもその力は強大で逆らう魔族はほとんどいなかったわ。・・・まぁ光竜の力を借りた勇者に倒されたのだけど。」
「割りと勇者トンデモないことしてますね、これ。」
「まぁ、その勇者は力の使いすぎで消滅したのだけどね。」
「うっわぁ・・・。まぁ妥当か。」
「それも含め、大魔王は人族に敬意を示し賠償や停戦協定を結んだり、その時の大魔王の力を恐れた魔族を収めていたのだけどね。」
んー、暴走してないときは有能ですねこれは。
事実歪めて伝えてる人族はほんま・・・、いつものことか。
「・・・まぁ、元に戻れば人族にも利益あるし、俺も無関係じゃないっぽいから俺にも利益があることはわかった。」
既に魔族に襲われてるしな、俺達。
そう考えたら大人しくしてもらってた方が絶対いいだろうし、暴走止める利益は十分あるな。
「そう。では・・・。」
「ちょっと待った。・・・暴走したきっかけはなんなの?そこわかんないと根本的には解決しねぇぞ。」
もう受けてもらえると思ったのかシュルツェが嬉しそうな顔をしたがそこんとこをはっきりしてもらわなきゃならない。
前回は魔王領のゴタゴタだったが、今回はそうじゃないだろう。暴走したから魔族が暴れはじめてる訳で、順序としては逆だ。・・・もし黒幕がいるならそっちから先にぶっコロコロしておかないとダメだろう。
「・・・心当たりしかないけどいいかしら?」
「あぁ、頼む。」
「大魔王が人族から請け負った仕事の一つに邪竜の封印の管理というのがあって。」
あれ、なんかきな臭くなってきましたゾ?
シェリーの方を見るとなんとも言えない顔をしてる。・・・俺もおんなじ顔だろう。
「その管理で何かあったのだと思う。・・・具体的にはわからないけど。」
「・・・例えばの話だけどさ。」
「何かしら?」
シュルツェが訝しげな顔をこちらに向ける。
「例えば、だよ?例えば・・・、邪竜の封印解こうとしてる奴がいて、・・・そいつが魔力か何かで解こうとして、・・・その魔力を大魔王が吸っちゃったりしたとかそういう可能性は、ある?」
既に察しているのかシェリーがめっちゃ足をゲシゲシと蹴ってくる。
「・・・可能性としてはなくはないわね。邪竜の封印を解くなんて考える輩がいると仮定すればの話だけど。」
「なるほどね。」
・・・これはあれだな。椅子に座ってる場合じゃないな?
椅子から立ち上がった俺を警戒した目でハイルズが見ている。シュルツェが俺を少し見上げた。
最近もこれやった気がするな。・・・綺麗に決めれるだろうな。
地面に正座し、真っ直ぐにシュルツェを見上げる。
「ごめんなさい!!それ私です!!!」
そして思いっきり頭を地面にぶつける。
・・・うん、俺なんだ多分。
そりゃ遠距離で封印解けないか試すやん。当たり前じゃん。
解けなかったから近くまで行って直接解こうとしてんだからそりゃそうだよ。
そんときに大量に魔力使って解こうとしてたよ、そりゃそんくらいしか思いつかねぇもん。
念喋で飛んでくる魔力辿って逆に流し込んで解こうとするじゃん、でも失敗したじゃん。・・・それで終わりだと思ってたじゃん。
吸収されてたなんて知らんじゃん。・・・俺のせいじゃん。
「え、な・・・?」
「あぁ、邪竜の話が出た時からそうじゃないかと思ってましたとも。もっと蹴っておけばよかった。」
キョトンとしてるだろうシュルツェと未だ蹴るのをやめないシェリーさん。
「えっと・・・、どういうことかしら?」
「はい!邪竜と知り合いなんで大量の魔力使って封印解こうとしてました!その時の魔力を吸収したんだと思います!」
「・・・あの、言ってる事がわからないのはあたしだけかしら?」
「おら、マスターのせいなんだから詳しい説明しっかりする。頭下げたまま説明しなさいな。」
シェリーの不機嫌が一気に俺に矛先を変えやがった。・・・でも文句は言えない、俺のせいなんだから。
そこから邪竜に誘われた事、話してみればいい奴だった事、んじゃ俺が封印解いてやるわ、その為に色々試した事を話した。
終始シュルツェは固まっていたが、ハイルズはもう呆れた顔してた。
「・・・なるほどね。理由や手順は意味がわからないけど、結果だけはしっかりわかってるわね。」
「そうなりますです。」
「・・・なら。責任・・・、取ってもらうわね?」
土下座したままシュルツェを見上げるととてもいい顔をしていた。
・・・シェリーが蹴ってる場所そろそろ内出血してそう。




